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【25万PV感謝!】最強スキル【一撃必死】を授かったけど、一日五発撃たないと俺が死にます ~爆死回避のため、今日も現代ダンジョンに潜ります~  作者: 難波一@『真祖竜転生』発売中!
第四章 練馬区の先輩達

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第42話 模擬戦:牧島丑雄①

「さァて……楽しもうぜェ!!」


「…………」



楽しめる要素が、俺には一つも見つからない。

なんでこんな事になってるんだ。


目の前では、牧島先輩が拳と拳をゴツンと打ち合わせながら、いかにも楽しそうに笑っている。


対する俺はというと──


今日の【一撃必死(マストダイ)】は、一発たりとも消費していない。

つまり、五発フル装填。


この状態で生きている人間を殴る、蹴る、石をぶつける──何でもいい。

俺の攻撃が相手へ成立し、その一撃で即死しなかった場合──その後、相手は爆発四散する。



(模擬戦で先輩を爆殺したら、さすがに洒落にならない……!)



いや、洒落にならないどころか普通に殺人事件だ。


教師の使用許可あり。

救護担当への連絡済み。

目撃者三人。

言い逃れする余地が一ミリもない。



「おい、モンタ!!」


「門田(かどた)です」


「構えろォ!!」


「いや、ちょっと待って──」


「行くぜェッ!!」


「いきなり!?」



ドンッ!!


床を蹴る轟音。

牧島先輩の巨体が、一瞬で間合いを詰めてきた。


──速い。

さっきまで数メートル離れていたはずなのに、気づけば目の前。


右腕が大きく引かれている。

次の瞬間には、俺の顔面へ拳が飛んでくる──



(集中……集中しろ……!)



意識を、牧島先輩へ向ける。


瞬間──世界が、変わった。


空気中を舞っていた埃が、ほとんど止まって見える。

吹き抜けから差し込む陽光さえ、妙に輪郭を持って感じられる。


牧島先輩の動きも同じだった。


速い。確かに速い。

けれど、今の俺にはそれがゆっくりと見える。


顔面めがけて迫ってくる拳を、首を僅かに傾けて避ける。


ブォンッ!


通常の時間感覚に戻った瞬間、耳元を拳が通過した。

風圧が髪を揺らす。



「……っ!」



牧島先輩の目が、僅かに見開かれた。

だが、驚いたのも一瞬。

すぐにギザギザした歯を、ニィッと剥き出しにする。



「へェ……やるじゃねェか!」



そのまま身体を沈めた。



(来る……!)



低い姿勢。腰の捻り。

右脚が床すれすれを薙ぐ。



「オラァッ!!」



回転足払いだ。

俺は咄嗟に右脚を持ち上げた。

牧島先輩の脚が、その下を通過する。



(危なっ……!)



危ないのは、攻撃そのものではない。

別の意味で危なかった。



(絶対に踏まないようにしないと……!)



避けた勢いで足を下ろして、牧島先輩の脚でも踏もうものなら……

それが俺の“攻撃”として判定される可能性がある。


もし発動したら。


ドカンと一発。

模擬戦終了。牧島先輩の人生が終了。

ついでに俺の人生もある意味終了。



(相手の攻撃より、自分の足元の方が怖いんだけど!?)



そんな俺の事情など知るはずもなく、牧島先輩は、足払いを空振りした勢いのまま床へ両手をついた。



「オラァァァッ!!」



次の瞬間、巨体が縦に回る。

逆立ちに近い姿勢から、踵が円弧を描いて俺の頭部へ落ちてきた。



(あの体勢から、胴回し回転蹴り……!?)



俺は上半身を半身にずらす。

牧島先輩の踵が、鼻先数センチのところを通過した。


ズドンッ!!


蹴りが空振りしたまま床へ着地。


だが、牧島先輩はほとんど体勢を崩さない。

そのまま両脚を使って勢いよく立ち上がった。



(……この人、凄いな)



少し驚いた。

見た目も言動も完全に野獣。

だけど、使っているのは、ちゃんとした格闘技だ。


パンチ。足払い。胴回し回転蹴り。

動きは荒々しいが、それぞれの技にはきちんと繋がりがある。

単純に力任せで暴れているわけではない。



(やっぱり、ちゃんと強い人なんだ……)



俺はバックステップで距離を取る。

床を蹴った身体が、自分でも驚くくらい軽く後方へ飛んだ。



(ただ……)



スケルトン・ジェネラルほどではない。

あの骸骨将軍は、攻撃の一つ一つに明確な殺意と威圧感があった。


それに比べれば、牧島先輩の動きはまだ対応しやすい。


江戸川会長の方が自分より強い、と本人も言っていた。

少なくとも、あのA級上位クラスの怪物ほどではないのだろう。



「う、嘘だろ……!?」



体育館の端から、声が上がった。



「あの野郎、牧島さんの攻撃、全部かわしてやがる……!」


「マジかよ!?」


「これが二年の先行覚醒者……門田露澪……!」



三人組が、揃って目を丸くしている。

ノッポ。チビ。そしてアキオ君。

全員が、信じられないものを見るような顔で俺を見ていた。



(げっ……)



まただ。また目立っている。

とても不本意だ。



(どうしよう……)



最初のパンチ──あれをわざと食らって、そのまま気絶でもしておけば良かったのではないだろうか。

そうすれば、

『やっぱり覚醒したての二年坊だな!』

で終わったかもしれない。


いや、まって。

今の俺って、牧島先輩に殴られて、ちゃんと気絶できるのか?

ステータスに防御力とかHP的なパラメータが無いから、そこら辺がよく分からない。


下手をすると、

『あれ? 全然効いてない?』

となって、もっと目立つ可能性がある。



(これ、だいぶ詰んでない?)



避けても目立つ。

食らっても目立つ。

どうしろというのだ。



「……テメェ」



低い声。

牧島先輩が、こちらを見ていた。



「それでマジで……スキルに目覚めて数日のペーペーかよ……!?」


「え、ええ……まあ……」



正確には、スキルに目覚めて数日ではあるけど、レベルは五十六です。

──とは言えない。


牧島先輩は、信じられないものを見るように目を見開いていた。


だが、次第に──

その口元が吊り上がっていく。



「ククッ……」



嫌な予感。



「クハハハッ!!」



もっと嫌な予感。



「最高じゃねェかァ!!」


「…………」



しまった。

これ、『いいぞ!俺にもっとスリルを味わわせてくれ!』的な感じで、バトルマニアに気に入られたパターンだ。

漫画とかで見たことある。


最悪だ。

逃げたい。ものすごく逃げたい。



「モンタァ!!」


「門田(かどた)です」


「さてはテメェ……」



牧島先輩が、拳を握り締める。



「江戸川朱里と同じ、スピードタイプのスキルホルダーかァ!?」



いや、違います。爆発系です。


でも、『じゃあその動きは何なんだ!?』みたいな話になるので、正直に言うわけにもいかない。



「いいねェ……!! いい演習になりそうじゃねェか!!」


「僕は何の練習にもならないんですけど……」



心の底からそう思う。

俺を巻き込まないでほしい。


それにしても──



(牧島先輩、ずっと格闘技ばっかりだな……)



探索者なのに、武器は使わないタイプなのだろうか。

対人ならともかく、ダンジョンのモンスター相手に素手の格闘技が通用するものなのか。


江戸川会長は剣を使っていた。

俺も今は双剣を持っている。

探索者なら、ダンジョン産の武器や装備を使うのが普通だと思っていたのだが。



「クハハ……」



牧島先輩が、両手の指を組んだ。


ゴキッ。ゴキゴキッ。



「え?」



嫌な音だ。

骨を鳴らしながら、牧島先輩は首を傾ける。



「まさか……スキルに目覚めたての二年坊相手に──」



両腕を、ゆっくり左右へ広げる。



「これ(・・)を使うことになるとはなァ……!」


「…………」



ノースリーブの学ランから剥き出しになった、牧島先輩の両腕。

そこへ──赤い光が灯った。



「……魔力?」



赤い光が、肩口から手首へ向かって走っていく。

皮膚の上に、複雑な紋様が走る。

魔法陣のような赤い魔紋が、左右の掌へ浮かび上がった。



(スキル……!?)



まさか……今からスキルを使うつもりなのか?

俺が覚醒して数日ってこと知ってるんだよね!?


後輩。新人。模擬戦。

それでそこまで本気を出す?


いや……逆に言えば、それだけ俺を強いと認めたということなのかもしれない。



(全然嬉しくない……)



やっぱり最初のパンチを受けておけば良かった。

後悔先に立たずってやつだ。

昔の人は上手いことを言う。今すごく実感している。



「行くぜェ……!」



牧島先輩が、両掌を──


パンッ!


勢いよく打ち合わせる。

そして、スキルの名を叫んだ。



「【赤腕百面相《ハンドレッド・レッドハンド》】!!」



次の瞬間──


ゴキッ。ゴキゴキゴキッ!!



「えっ……」



牧島先輩の腕が変形し始めた。


肩口から先、二の腕、肘、前腕。

そして掌。


筋肉質だった両腕の輪郭が崩れ、赤黒い光をまといながら、まるで機械のような形へ組み替わっていく。



「う、腕が……!?」



数秒後──そこにあったのは、巨大な二つの砲身だった。

幾つもの細い銃身が束ねられ、中央の軸を囲むように配置されている。



(……ガトリング砲?)



いや──腕だ。

牧島先輩の両腕そのものが、ガトリングガンみたいな形へ変わっている。



「な、なるほど……!」



俺は思わず声を漏らした。


初めてノースリーブの学ランを見た時、何てイカれた制服改造だと思った。


だけど違う。

スキルの効果で肩から先が変形するから、普通の袖だと邪魔だったのか。



(そういう理由だったのか……)



納得。とても納得した。

……いや、ちがう。そうじゃない。

ちょっと待って。


俺の視線が、牧島先輩の両腕へ戻る。


ガトリング砲……赤い光を帯びた砲身だ。

その全てが、こちらを向いている。



(……ひょっとして俺)



嫌な汗が出る。



(今から、アレで撃たれるの?)



牧島先輩が、楽しそうにギザ歯を剥き出しにした。



「安心しなァ!!」


「え?」


「模擬戦用に出力は絞ってあるからよォ!!」


「その見た目で安心できるわけなくないですか!?」



それでも、どうやら本物の金属弾を撃ち込まれるわけではないらしい。


少し安心──


ギュイイイイィィィィン!!



「…………」



砲身が回り始めた。

やはり少しも安心できない。



「俺様の超絶スキルの威力!!」



赤い魔力が、回転する砲身へ集束していく。



「その身で確かめてみやがれェ!!」



牧島先輩が叫ぶ。



「モンタァァァァッ!!」


「門田ですぅぅぅぅ!!」



次の瞬間。


ドドドドドドドドドドドドッ!!


無数の赤い魔力弾が、雨あられのごとく──

俺へ向かって一斉に放たれた。



「嘘でしょおおおおおおっ!?」



俺の悲鳴が──銃撃音と共に、第二体育館へ響き渡った。

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