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【25万PV感謝!】最強スキル【一撃必死】を授かったけど、一日五発撃たないと俺が死にます ~爆死回避のため、今日も現代ダンジョンに潜ります~  作者: 難波一@『真祖竜転生』発売中!
第三章 豊島区の配信者

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第33話 桜色の双剣

ミニマップに浮かぶ青い点が、次々とこちらへ近づいてくる。

さっきの爆発音を聞きつけた探索者たちだ。


俺はフランを脇に抱えたまま、沈没船の狭い通路を全力で駆け抜けていた。



『ニャーの人払いの結界までブチ破るにゃんて、同時爆破は規模がデカすぎにゃ! そのクソスキル、威力の加減とかできねぇのかにゃ!?』


「できるなら、とっくにやってるよ!」



濡れた木の床を蹴り、崩れかけた船室を飛び越える。

背後からは、複数の探索者の声が聞こえていた。



「こっちから聞こえたぞ!」


「急げ! 誰か戦ってるかもしれない!」


「さっきの爆発、ダイナマイト練馬じゃない!?」


「動画回して! 何か映るかも!」



最後の一言だけ、妙に俗っぽい。

人命救助と野次馬根性が、ほぼ同じ速度でこちらへ迫ってきている。

俺は走りながら、抱えていたフランを見下ろした。



「でも……この短時間で四発消化できたのは、本当に助かった! ありがとう、フラン!」


『にゃ?』



フランが目を丸くした。


誕生日当日は、自宅のゴキブリを爆破。

昨日は、日付が変わる寸前まで最後の一発を消化できず、本当に死にかけた。

あの時は、あと十秒遅ければ俺自身が爆発四散していたのである。


それに比べれば、今日はダンジョンへ入って早々、四発も消化できた。

まだ辺りは明るい。

日付変更まで、時間には十分な余裕がある。

フランの『探査(サーチ)』と人払いの結界がなければ、こんなにスムーズにはいかなかっただろう。



『きゅ、急に素直に礼を言うんじゃねーにゃ。気持ち悪いにゃ』



フランは、照れたようにぷいと顔を背けた。

とはいえ、安心するにはまだ早い。


今日のノルマは、あと一発。

四発消化できたことで気が緩み、このまま放置すれば、昨日と同じ目に遭いかねない。


夜になってから慌てて、路地裏や飲食店のゴミ置き場を巡り、爆破しても誰にも怒られなさそうなゴキブリを探す。

そして爆発の後、警察が来る前にその場から逃走する。


そんな人生は嫌だ。


ただでさえ住所不定なのに、深夜の街でゴキブリを探し回る高校生にまでなったら、もう社会復帰できる気がしない。



「今のうちに、残り一発も消化しておかないと」


『だったら、もっと人がいねー場所まで行くにゃ』


「ミニマップを見る限り、この先の階段から地下五階へ降りられる。そっち行ってみよう」


『五階かにゃ』


「上から探索者が集まってきてるなら、下へ逃げた方が鉢合わせしにくい……と思う」



地下四階へ降りてきた探索者の大半は、爆発現場へ向かっている。

ならば、逆方向の地下五階へ逃げれば、人目を避けられるはずだ。



『また奥へ行くのかにゃ。さっさと帰りてーにゃ』


「まあ、帰る家、無いんだけどね。ハハハ」


『笑えねーにゃ……』



ミニマップを頼りに、俺たちは地下五階へ続く階段を見つけた。

周囲に青い点がないことを確認し、そのまま階段を駆け下りる。



「よし。ここまで来れば──」



地下五階へ足を踏み入れた瞬間、俺は顔をしかめた。


四階よりも水位が高い。

足元には、脛の辺りまで濁った海水が溜まっていた。

岩壁の隙間には黒い海藻がびっしりと生え、天井から太い鎖や腐った漁網が垂れ下がっている。

半分水没した船の残骸が、洞窟のあちこちへ折り重なるように沈んでいた。


そして、臭いもさらに強烈だった。

腐った魚。湿った木材。生温い海水。

全部を壺へ入れ、三日ほど放置したような臭いである。



『くせぇにゃ! このフロアもくっせぇにゃ!』


「四階よりひどいな……」


『さっさとあと一匹ぶっころして帰るにゃ。ニャーのプリチーな毛に臭いが染みつくにゃ』


「そうしよう。このフロアも人は少ないみたいだし、何でもいいから一匹爆殺して──」



俺は言葉を止めた。

遠くから、何かが激しく暴れる音が聞こえてきたのだ。


バシャアアアンッ!


大量の水が打ち上げられる。

続いて、女性の悲鳴。



「ナツミ! しっかりして!」


「誰か! 誰かいませんか!?」


「ぐ、ぐふっ……!」



俺とフランは、思わず顔を見合わせた。



『何か騒がしいにゃ』


「……人が襲われてる」



ミニマップを見る。

少し離れた場所に、青い点が三つ。

そのすぐ近くを、見たこともないほど大きな赤い点が動き回っている。

通常のモンスターを示す赤い点の、五倍以上はある。



「……なんだこれ。赤い点、デカくない?」


『おそらく、実際にデカいモンスターがいるにゃ』


「行ってみよう」


『おみゃー、目立ちたくねーんじゃなかったのかにゃ?』


「だからって、襲われてる人を放っておくわけにいかないだろ」



俺たちは音のする方へ向かい、岩陰から慎重に様子を窺った。


そこには、広い空洞があった。

中央には巨大な水溜まり。

いや、水溜まりというよりも、底の見えない穴が海水で満たされているように見える。


そして、その穴から。

ぬうっ、と巨大な何かが顔を出していた。



「ウツボ……?」



細長い胴体。

茶色と黄色のまだら模様。

大きく裂けた口の中には、内側へ向かって生えた無数の牙。


見た目は巨大なウツボだ。


ただし、頭部だけでも乗用車ほどある。

水中へ沈んでいる胴体がどこまで続いているのかは分からない。


その巨大ウツボの身体には、一人の女性がぐるぐると巻きつかれていた。



「ぐえっ……」



見覚えのある明るい茶髪。

入口で俺へ声をかけてきた、女子大生探索者三人組の一人だ。

確か、配信中は中心になって話していた女性だった。


その女性は巨大ウツボに締め上げられ、顔を真っ赤にしながらも、片手に自撮り棒を握っている。



「は、はーい……それではねー……今から、巨大ウツボに食べられてみたいと思いまーす……」



震える手で、カメラへ向かってピースサイン。

何をしてんの、あの人。


残る二人が、巨大ウツボの胴体へ必死に攻撃を加えている。

一人は短槍を何度も突き立て、もう一人は青い光の弾を連続で放っていた。

しかし、ウツボの硬い鱗に弾かれ、ほとんど傷を与えられていない。



「違う! 違うよ、ナツミ!! プロ意識って、そういうことじゃないよ!!」


「あたし達が目指してるのは、明るく楽しい女子大生三人組探索配信者グループでしょ!」


「赤(※血)は御法度だよ!! 広告制限かかるから!!」


「ぐえー……」



締めつけられているナツミという女性の手から、少しずつ力が抜けていく。

それでも自撮り棒だけは離さない。

恐るべき執念だ。



『なんにゃ、あのウツボ』



フランが小声で呟く。



『まだ五階層にゃのに、あんにゃデケぇモンスターが出るのかにゃ?』


「たぶん、ユニークモンスターだ」



ユニークモンスター。


通常は出現しない階層へ、突発的に現れる強力な個体。

外見や能力も通常種とは大きく異なり、詳しい発生条件は分かっていない。

低階層であっても、上級探索者を苦戦させるほどの個体が出現することもあるらしい。


原則として、発見した探索者はダンジョン管理局へ連絡し、すぐにその場を離れることになっている。



「普通なら、見つけた時点で逃げるべき相手なんだけど……」


『あいつらは何で逃げなかったのにゃ?』


「逃げ遅れたんだと思う」



もしかすると、さっきの爆発音を追いかけて地下へ降りてきたのかもしれない。

入口で別れ際、あの三人は俺のことを後から検索すると話していた。

四階で起きた大爆発。

その直後に消えた、謎の若い探索者。

配信のネタとして追ってきた可能性は十分ある。


だとしたら、俺の責任がまったくないとも言い切れない。



「それにしても……」



俺は巨大ウツボよりも、巻きつかれている女性の方を見た。

今にも意識を失いそうなのに、まだカメラを自分へ向けている。



「生存本能を上回る承認欲求……現代のSNS社会が生み出した闇だな」


『ウツボより、あの女の方が怖ぇにゃ』



巨大ウツボが、さらに身体へ力を込める。


ミシミシミシッ!



「ぐ、ぐえぇ……!」



ナツミと呼ばれた女子大生の口から、完全に配信向きではない声が漏れた。



「ナツミ!」


「このままじゃ、本当に潰されるよ!」



仲間の二人が叫ぶ。

フランが俺を見上げた。



『どうすんにゃ? あのウツボを爆破して、最後のノルマを終わらせるかにゃ?』


「いや、駄目だろ」


『何でにゃ』


「あのお姉さんが巻きつかれてる。ウツボを爆発させたら、一緒に死ぬ」


『あー……そりゃそうにゃ』



フランが納得したように頷く。

ずいぶん軽い反応だ。


だが、爆破できないからといって、見捨てる選択肢もない。



「……助ける」


『どうやってにゃ?』


「さっきと同じだよ」



俺は巨大ウツボを睨んだ。



「攻撃そのもので即死させれば、【一撃必死(マストダイ)】は発動しない……! 難しいけど」



サハギンは、軽く殴っただけで上半身が吹き飛んだ。

俺の今の力なら、巨大ウツボであっても倒せる可能性はある。


ただし。



「素手であれを殴り殺したら、さすがに目立つよな……」


『今さら何言ってんにゃ』


「もっと自然な方法で倒さないと」


『自然にあんにゃ化け物を一撃で倒す方法なんかねーにゃ』



その時、腰に下げていたホルスターの重みを思い出した。


春日井武具店で、咲良さんのお母さん……晴子さんからもらった武器。

まだ一度も使っていない。



「そうだ。これがあった」



俺は腰の左右へ手を伸ばし、二つのグリップを引き抜いた。


黒い金属製の柄。

見た目だけなら、刃のない短い棒にしか見えない。


渡された時、晴子さんは確かこう言っていた。

使用する時は、柄を身体の外側へ向けて、横にあるボタンを押す。



「ここのボタンだったよな……」



俺は二つの柄を左右へ向け、親指で同時にボタンを押した。


カチッ。


次の瞬間。


シャキンッ!

シャキシャキンッ!



「うおっ!?」



柄の先端から、細い金属の刃が勢いよく伸びた。

三段に分かれた刃が、折り畳まれた警棒のように連続して展開する。

瞬く間に、左右のグリップは二本の細身の剣へと変わっていた。



「す、すごい! 双剣だったのか!」


『ちょっと見せるにゃ』



フランが刃へ顔を近づけ、目を細めた。

鼻先をひくひくさせながら、金属の表面を観察している。



『おみゃー、それ……ネオライト鋼製じゃにゃーか?』


「ネオライト鋼?」


『人間界には存在しにゃい、ダンジョンでしか採掘できにゃい金属にゃ』



フランは刃へ前脚を近づけ、流れる魔力を確かめるように肉球をかざした。



『軽くて丈夫。そんでもって、魔導素(エーテル)の伝導率がすげぇ高い、希少金属にゃ』


「希少金属……」


『この細さで、あのウツボに噛まれても簡単には折れねーはずにゃ』


「ええっ!? そんな高級そうな素材を使った武器を、ただでもらったの!?」



もしかして、初回サービスという言葉で誤魔化されただけで、相当な値段の品だったのではないだろうか。


晴子さんは宣伝になると言っていた。

だが、娘のクラスメイトとはいえ、知り合ったばかりの高校生へ、希少金属製の武器を無料で渡すものなのか。



「絶対、後で代金を払わないと……」


『まず家賃を払える生活を目指すにゃ』


「分かってるよ!」



そんなことを話している間にも。


ギュウウウウッ!



「グエー……! し、死ぬ……視聴者のみなさん……"ナツミン、死なないで!"……って思った方は……高評価ボタン、お願い……しまーす……」



お姉さんが、巨大ウツボにさらに強く締め上げられた。

この状況で高評価ボタンをねだる根性はすごい。

しかし、自撮り棒を持つ腕が、ついに下がり始める。



「まずい! さすがにそろそろ助けないと、あの人マジで死ぬ!」


『待つにゃ』



飛び出そうとした俺を、フランが呼び止めた。



「なんだよ!」


『その武器に、おみゃーの魔導素(エーテル)を流してみるにゃ』


「魔導素(エーテル)を?」


『ネオライト鋼製の武器は、持ち主の魔導素(エーテル)を流して使う武器にゃ。普通の剣としても使えるけど、たぶん本領はそっちにゃ』


「流すって、どうやって?」


『知らねーにゃ。気合いで何とかするにゃ』


「雑だな!」



魔導素(エーテル)。

ステータスでは、MAGという数値で表される力。

一般的には魔力とも呼ばれている。


自分の身体の中に、そんなものが流れている感覚はまったくない。

ただ、レベルが五十六まで上がった現在、俺のMAGの数値は成人平均の二十五倍近くにまで達している。

数字だけ見るなら、相当な量の魔導素を持っていることになる。



「と、とりあえず……流れろ!」



両手の剣へ力を込める。

身体の内側にある何かを、腕から手のひらへ押し出すように意識する。


すると──


キィンッ!


二本の剣が、高い音を立てた。

次の瞬間、銀色だった刃が、淡い桜色の光に包まれる。



「おおおっ!?」



桜色の光が、刃の輪郭から溢れ出す。

刀身が一回り大きくなったように、光の刃が外側へ伸びていく。

さらに、細かな光の粒が花びらの形となり、二本の剣の周囲をくるくると舞い始めた。


まるで、桜吹雪をまとった光の剣だ。



「なにこれ!? めちゃくちゃ光ってるんだけど!」


『おみゃーの馬鹿げた量の魔導素(エーテル)を受け止めて、そのまま刃の出力に変えてるにゃ』



フランが驚いたように、桜色に輝く双剣を見つめる。



『すげぇ武器だにゃ。おみゃーが全力で魔力を流しても、刃が壊れる気配がねーにゃ』


「晴子さん、本当に何者なんだ……」


『あのおばはん、どーもただの武器屋じゃねーにゃ』


「おばはん言うな。お世話になった人だぞ」



俺は二本の剣を構え、再び巨大ウツボへ視線を向けた。

桜色の光が、薄暗い洞窟を照らしている。

これだけ強力そうな武器なら、あの巨体も一撃で仕留められるかもしれない。


しかも、素手ではない。



「これなら、ウツボを一撃で倒しても、武器がすごかったってことで誤魔化せる……!」


『いや、おみゃー、それは……』



フランが何かを言いかける。



「何?」


『……まあ、いいにゃ。さっさと行くにゃ。あの女、そろそろ中身が出るにゃ』


「怖い言い方するな!」



巨大ウツボが口を大きく開いた。

鋭い牙が並ぶ顎が、巻きついているナツミの頭へ近づいていく。



「ナツミ!」


「嫌あああっ!!」


「ぐふっ……チャンネル登録、よろしくお願いしまーす……」


「最後の挨拶みたいに言うなあああっ!!」



もう迷っている時間はない。

俺は桜色に輝く双剣を握り締め、腰を低く落とした。

狙うのは、女性へ巻きついていない首の付け根。


一撃だ。

スキルが発動するより前に仕留める。



「よし……!」



俺は岩陰から飛び出した。



「今、助けます!!」



床を蹴る。

濁った海水が大きく弾けた。


桜の花びらのような光を引きながら、俺は巨大ウツボへ向かって走り出した。

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プロすぎるw
エフェクト出る武器良いよね
ナツミいい根性してる笑 ここまで来ると憎めない…
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