↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【25万PV感謝!】最強スキル【一撃必死】を授かったけど、一日五発撃たないと俺が死にます ~爆死回避のため、今日も現代ダンジョンに潜ります~  作者: 難波一@『真祖竜転生』発売中!
第三章 豊島区の配信者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/66

第31話 頼れる従魔

豊島区第二ダンジョンへ足を踏み入れた俺たちは、まず受付で探索者証を提示した。


今日の俺は、レベルだけなら五十六。

しかし、探索者ランクは依然として最低のEランクである。

そのため、立ち入りを許可されているのは地下五階までだった。



「まあ、今日はノルマを消化するだけだし、五階まで入れれば十分か」


『地下四階まで行けば、人も少なくなるんにゃろ?』


「ああ。事前に攻略動画で調べた限りではな」



豊島区第二ダンジョンは、地下三階までは観光地のような雰囲気だった。

青白い光を放つサンゴ礁。

真珠のような光を内側から漏らす巨大な二枚貝。

透明な水の中を泳ぐ、色鮮やかな小魚。

天井から射し込む謎の光が水面へ反射し、洞窟全体に揺れる光の模様を描いている。


ここが地下に存在する異世界の洞窟だということを忘れそうになるほど、美しい景色だった。



「きゃー! こっち向いて!」


「もっと貝の近くに寄って!」


「待って、後ろにモンスターいる!」


「小型のシーラットだから大丈夫! それも一緒に撮ろう!」



あちこちから、楽しげな声が聞こえてくる。

若い探索者たちは、モンスターとの戦闘よりも写真撮影に夢中だった。

中には、大きな二枚貝の前に並び、全員で同じポーズを取っている集団までいる。

完全にテーマパークのノリである。



『本当に遊びに来てる奴ばっかりにゃ』


「入口付近は、出現するモンスターも弱いからな」


『あのデカい貝、食えるのかにゃ?』


「無理じゃない? なんか内側から光ってるし」



フランが巨大な二枚貝を見つめながら舌なめずりをする。

見た目は海鮮料理の食材にしか見えないが、あれも一応モンスターらしい。

もっとも、こちらから攻撃しなければ、ほとんど動かない。

攻略動画では、あの貝を背景に写真を撮る際、間違って挟まれないよう注意してください、と説明されていた。



「道はこっちだ」



俺は端末に保存しておいた簡易マップを確認しながら、地下へ続く通路を進む。

このダンジョンへ来ると決めた後、電車の中で低階層の攻略動画を一通り見ておいた。

分かれ道の位置や、階段までの最短ルートも頭へ入っている。


なるべく人目につかず【一撃必死(マストダイ)】のノルマを消化するためには、撮影目的の探索者で溢れている一階から三階を、さっさと通り抜ける必要があった。



『こういうところだけは妙に準備がいいにゃ』


「そりゃ、いかに目立たずスキルを消化しきるかが重要だから」


『もう開き直って、めちゃつよ探索者としてバズればいいのにゃ。そしたらニャーも毎日マグロにありつけるのににゃー』


「うん、絶対にイヤ」



俺たちは、ほとんど立ち止まることなく地下三階を通過した。

地下四階へ続く階段を降りると、周囲の雰囲気は一変した。



「うわ……」



階段の先に広がっていたのは、海底洞窟と沈没船が混ざり合ったような光景だった。


暗い青色の岩壁。

足元を覆う、濁った海水。

天井から垂れ下がる、腐りかけたロープや海藻。

巨大な木造船が岩壁へ突き刺さるように座礁し、船体の半分を洞窟の中へ埋めている。

甲板は大きく傾き、折れた帆柱が洞窟の天井へ斜めに伸びていた。

周囲には大小さまざまな船の残骸が転がり、破れた帆や、錆びついた碇が濁った水へ沈んでいる。



『上の階とは、ずいぶん雰囲気が違うにゃ』


「ああ。ここから出てくるモンスターも、スケルトン・パイレーツやサハギンが中心らしい」



階段の近くには、頭蓋骨の絵に大きな赤い斜線が引かれた注意看板が立っていた。


スケルトン・パイレーツは、錆びた剣や短銃を持つ骸骨型モンスター。

サハギンは、槍や銛を扱う半魚人型モンスター。

どちらも地下三階までの敵より、かなり手強いらしい。


だが、その割に得られる経験値や素材は特別おいしいわけではない。

足場も悪く、船内の通路は狭い。

湿気が強いため、配信用の機材にも良くない。

何より、腐った海藻や生魚を混ぜたような臭いが、洞窟全体に漂っている。



『くせぇにゃ。生ゴミみてぇな臭いがするにゃ』


「ホント……板橋区第一ダンジョンよりはマシだけど……」



臭いのせいもあってか、地下四階へ降りてから、他の探索者の姿はほとんど見かけなくなった。

遠くから剣戟の音やモンスターの鳴き声が聞こえるものの、上の階のような賑わいはない。


どうやら事前情報どおり、ここは難易度と報酬が釣り合わない、不人気な空白地帯らしい。



『……ここら辺なら、よさそうだにゃ』



フランが周囲を見回し、満足そうに頷いた。



「よさそうって、何が?」


『おみゃーのクソスキルを、誰にも見られずに使う場所に決まってるにゃ』


「でも、人が少ないとはいっても、完全に誰もいないわけじゃないぞ」


『心配すんにゃ』



フランは得意げに胸を張った。



『ニャー達、妖精猫(ケット・シー)は、ただプリチーでおりこうなだけの猫じゃねーのにゃ』


「自分で言う?」


『色々と便利な魔法が使えるのにゃ』


「魔法?」



フランは俺の前へ進み出ると、右前脚をすっと持ち上げた。

肉球の周囲へ、淡い金色の光が集まっていく。



『『探査(サーチ)』にゃ!』



フランが前脚を地面へ叩きつける。

足元から金色の光が円形に広がり、一瞬で洞窟の奥へ消えていった。


同時に。



「おおっ!?」



俺の視界の右上へ、半透明の図が浮かび上がった。


細長い通路。

大小さまざまな部屋。

沈没船の船内らしき複雑な区画。

今いる地下四階の地形が、ゲームのミニマップのように表示されている。



「なにこれ!? すごっ!」


『探査(サーチ)の魔法にゃ』



フランは鼻を高くするように顔を上げた。



『フロアの地形だけじゃなく、どこに生き物がいるかも分かるにゃ。従魔契約を通して、ニャーが見つけた情報を、おみゃーの視界にも共有してやってるのにゃ』


「生き物……」



よく見ると、ミニマップの上には、小さな光点がいくつも浮かんでいた。

赤い点が、あちこちの部屋や通路を移動している。

数は少ないが、青い点もあった。



「この赤と青は?」


『赤がモンスター、青が人間の探索者にゃ』


「そこまで分かるのか!?」


『当たり前にゃ。ニャーを誰だと思ってるにゃ』


「フランチェスカ板橋」


『その名前で呼ぶんじゃねーにゃ!!』



フランが毛を逆立てる。


しかし、これは本当にすごい。

攻略動画や簡易マップでは分からない通路まで、はっきり表示されている。

何より、探索者とモンスターの位置をリアルタイムで把握できるのは大きい。



『これで、モンスターがいて、近くに探索者がいねぇ部屋を探せるにゃ』


「なるほど……!」


『そこで例のスキルを使って、モンスターを五匹ぶっころせばいいにゃ。誰にも見られにゃーし、今日のノルマも終わるにゃ』


「フラン……」


『にゃ?』



俺は感動しながら、フランを見下ろした。



「……初めて、お前を従魔にしてよかったと思った」


『今まで一度も思ってなかったのかにゃ!? おみゃー、マジで失礼だにゃ!!』



怒るフランを無視し、俺はミニマップへ目を凝らした。


現在地から少し離れた場所に、赤い点が五つ集まっている部屋がある。

周囲に青い点はない。

今日のノルマを消化するには、理想的な場所だった。



「フラン、ここへ行こう」



俺たちはミニマップを頼りに、沈没船の残骸が連なる通路を進んだ。


途中、赤い点の位置を確認しながら、人のいる場所を避けて移動する。


通常なら見通しの悪い船内で、何度も道に迷っていたはずだ。

しかし『探査(サーチ)』があれば、進行方向も敵の位置も一目で分かる。



「本当に便利だな、これ」


『もっと褒めていいにゃ! ついでに、感謝の印としてマグロを献上してもいいのにゃ!』


「一家に一匹欲しい」


『その前に家を欲しがった方がいいにゃ』



余計な一言で、感謝の気持ちが少し薄れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。