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【25万PV感謝!】最強スキル【一撃必死】を授かったけど、一日五発撃たないと俺が死にます ~爆死回避のため、今日も現代ダンジョンに潜ります~  作者: 難波一@『真祖竜転生』発売中!
第二章 板橋区の猫

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第19話 ボス戦:スケルトン・ジェネラル①

「俺は……謎の英雄……ダイナマイト練馬だ」



決まった。

いや、何も決まってはいない。

むしろ自分から名乗ってしまったことにより、昨日の黒歴史を自ら上塗りしただけのような気もする。


だが、今は細かいことを気にしている場合ではない。


今の俺はダイナマイト練馬。

謎の実力派探索者、ダイナマイト練馬。

昨日、変異種のミノタウロスを一撃で倒し、女子高生探索者・江戸川朱里を救った正体不明の英雄だ。


俺ではない。

俺なのだが、俺ではない。

そう思い込めば、目の前の骸骨将軍に立ち向かう勇気も、多少は湧いてくるかもしれない。



『ダイナマイト練馬!? おみゃー何言ってんにゃ!? プロレスラーかにゃ!?』



背後の猫が、素っ頓狂な声を上げた。



『恐怖でイカれたのにゃ!? そんなダセぇ名前を叫んでる暇があったら、さっさと逃げろにゃ!』



うるさいな。

俺だって好きで名乗ってるわけじゃないのに。

助けに入ったはずなのに、ものすごい勢いで罵倒されている。


しかし、この猫の言うことも正しい。

自分でも、なぜこの名前を名乗ってしまったのか分からない。

それでも、一度名乗ってしまった以上、今さら格好悪く逃げ出すわけにはいかなかった。


俺は猫を庇うように前へ立ち、小石を構える。

正面では、骸骨将軍が巨大な盾の陰からこちらを見ていた。

兜の奥、紫色の炎が揺れる眼窩が、僅かに細くなったような気がする。

もちろん、骸骨に表情などない。

それでも──


ニィ……。


確かに、笑ったように見えた。

覚醒したての人間が、たった一人で自分の前に立った。

しかも、武器は小石。

完全に馬鹿にされている。


骸骨将軍は盾を引き、漆黒の長剣を両手で握り直した。

刃に紫色の光がまとわりつく。


来る。

分かっているのに、足が動かない。


次の瞬間。

骸骨将軍の巨体が、視界から消えた。



「えっ……?」


 

床が砕ける。

黒い影が一気に距離を詰め、俺の眼前へ現れた。


──速い。

さっき猫へ攻撃した時とは比べ物にならない。

骸骨将軍は、猫との戦いでは全力を出していなかったのだ。


頭上高く持ち上げられた漆黒の長剣が、俺目掛けて振り下ろされる。



『避けるにゃぁぁぁぁっ!!』



猫の悲鳴が響いた。

俺は、右手に持った小石へ目を落とす。

スキルを使えば、この骸骨将軍を倒せる。


当たりさえすれば。


だが、敵はもう目の前にいる。



(しまった……!)



この距離で爆発四散させたら、背後の猫まで巻き込んでしまう。

というか、俺も巻き込まれる。


昨日のミノタウロスが爆発した時は、それなりに離れていた。

至近距離で発動したら、自分がどうなるのかは分からない。


レベルが上がったから耐えられるのか。

それとも、仲良く爆発四散するのか。

試して確かめたいとは思わない。



(どうしようもない……!)



完全に考えなしだった。

猫を助けたいという気持ちだけで飛び出し、敵との距離も、爆発の範囲も考えていなかった。


やはり、俺は英雄でも何でもない。

ダイナマイト練馬でもない。

ただの馬鹿だ。



(終わった……!)



剣が迫る。

漆黒の刃が、俺の頭を真っ二つにしようと振り下ろされる。


──死ぬ。


そう思った瞬間。

不思議なことが起きた。


骸骨将軍の動きが、急に遅くなったのだ。


振り下ろされる剣が、まるで水の中を進んでいるかのように、ゆっくりと落ちてくる。

刃を取り巻く紫色の光。

空気を押し退けながら進む剣先。

骸骨将軍の鎧から零れ落ちる、小さな砂埃。

その一つ一つが、はっきりと目に映る。



(あ……これが、死ぬ直前の集中力ってやつか)



聞いたことがある。

人間は命の危機に瀕すると、脳が急激に活性化し、周囲の景色がスローモーションのように見えることがあるらしい。


漫画でも見た。


交通事故に遭う直前、走馬灯と共に時間がゆっくり流れる、あれだ。



(漫画で読んだ時は格好よかったけど……実際に体験すると、全然嬉しくないな)



ゆっくりと、剣が俺の額へ近づいてくる。

この後、俺は真っ二つになる。

その瞬間を、こんなに鮮明に見せられるとは。

人間の脳も、なかなか趣味が悪い。


そう思いながら、ふと気づいた。



(……ん?)



剣は遅い。

骸骨将軍も遅い。

猫の口も、何か叫びながら、ゆっくりと動いている。


だが──

俺の身体は、なぜか普通に動く。


右手の指を動かしてみる。

動いた。

首を傾げてみる。

動いた。



(こういうのって、景色がゆっくり見えるだけで、自分の身体は動かないんじゃないの?)



目の前まで迫ってきた剣を見ながら、俺は一歩だけ横へ移動した。


ヒョイ、と。


それだけで、漆黒の長剣は俺の身体を外れた。

刃が、先ほどまで俺の立っていた場所を通過する。


ズガァァァンッ!!


剣が石床へ叩きつけられ、凄まじい衝撃音が響いた。

床が大きく陥没し、砕けた石が周囲へ飛び散る。



「…………」


『…………』



骸骨将軍が、剣を振り下ろした姿勢のまま動きを止めた。

紫色の眼光が、ゆっくりと俺へ向けられる。

骸骨なので表情はない。

それでも、驚いているように見えた。

俺も驚いている。



「避けられた……」


『ラ、ラッキーにゃ!』



背後から猫の声が飛んできた。



『攻撃が運よく外れたにゃ! 今のうちに逃げろにゃ!』


「う、うん……」



やはり、運がよかっただけらしい。

恐怖で足が震えた際、偶然身体が横へ動いたのだろう。

そうでなければ、説明がつかない。


骸骨将軍が、石床へ食い込んだ長剣を引き抜く。

今度は、先ほどまでとは明らかに様子が違っていた。

盾を背後へ回し、両手で剣を構える。


どうやら、警戒しているようだ。

覚醒したての人間が、偶然とはいえ自分の一撃を回避したことが気に入らないらしい。


骸骨将軍が、再び踏み込む。

次は、横薙ぎ。

首の高さへ向けて、漆黒の刃が振るわれた。



『危ないにゃ! 今度こそ死んだにゃーーッ!!』



猫が悲鳴に近い声を上げる。

死んだとか、そんなハッキリ言わないでほしい。


しかし──


まただ。

骸骨将軍の動きが、急に遅くなる。

横薙ぎに振るわれた剣が、ゆっくり、ゆっくりと俺へ迫ってくる。

一度目よりも、さらに余裕があった。

剣の軌道が見える。

刃が通過する高さも分かる。


俺は軽く膝を曲げた。

漆黒の長剣が、頭上をゆっくりと通過する。

確認した後、立ち上がる。

それだけで、二撃目も回避できた。

剣圧によって髪が揺れる。

だが、身体には触れていない。



(あれ……?)



俺は首を傾げた。


骸骨将軍が、勢い余って数歩前へ踏み出す。

すぐさま振り返り、信じられないものを見るように俺を見た。



(なんかコイツ……攻撃の瞬間、めっちゃ動き遅くない?)



最初の一撃を避けたのは、偶然かもしれない。

だが、二回続けば話は別だ。

よく見ると、踏み込みもそれほど速くない。

剣の軌道も大きく、読みやすい。


見た目は恐ろしい。

攻撃を受ければ、一撃で死ぬだろう。

しかし、当たらなければどうということはない。



(ひょっとして……あんまり強くないボスなのか?)



変異種のような姿をしているが、所詮は初級ダンジョンのボス。

外見が派手なだけで、実力はそこまででもない可能性がある。


骸骨将軍は、俺と猫を交互に見た。

やがて、ゆっくりと距離を取る。

俺の回避を警戒したらしい。

数十メートルほど離れたところで立ち止まり、漆黒の長剣を逆手に持ち替える。


そして──


剣を石床へ深々と突き立てた。


ズドンッ!


床へ刻まれた円形の紋様が、紫色に輝き始める。

骸骨将軍の顎が、カタカタと動いた。



『死者の行進(デッドマンズパレード)……!』



初めて、骸骨将軍の声を聞いた。

声帯もないのに、声はどこから出ているのだろう。

地の底から響くような、低く濁った声。


次の瞬間。


石床から、無数の白い腕が突き出した。



「うわっ……」



骨の腕が床を掴み、這い上がってくる。


一体。二体。

十体。二十体。


次々に姿を現す、鎧をまとった骸骨の騎士。

錆びた剣。丸い盾。

空洞の眼窩に灯る、紫色の炎。

通常のスケルトン・ナイトだ。


しかし、その数が普通ではない。

広大なボス部屋を埋め尽くすように、百体近いスケルトン・ナイトが現れた。


骸骨たちは一糸乱れぬ動きで整列する。

盾を構えた前列。

剣を掲げた後列。

ただの魔物の群れではない。

一つの軍隊だった。


その中心で、骸骨将軍が剣を引き抜く。

先ほどとは違い、どこか余裕を取り戻したように見えた。



『お、終わったにゃ……』



猫が、絶望したような声を漏らした。

振り返ると、灰色の尻尾がだらりと床へ垂れている。

金色の瞳は、骸骨の軍勢を見つめたまま動かない。



『アイツは、スケルトン・ジェネラルにゃ……!』


「スケルトン・ジェネラル?」


『スケルトン・ナイトどもを召喚して、軍隊みてぇに使役する上位種にゃ。見た目通り、雑魚骸骨どもの将軍ってわけにゃ……!』



なるほど。

だから、スケルトン・ナイトよりも立派な鎧を着ていたのか。

そのままで、非常に分かりやすい名前だ。



『スケルトン・ジェネラルは、おみゃーら人間が言うところのA級上位モンスターにゃ! A級探索者がパーティを組んで、やっと勝負になる相手にゃ!』


「A級上位……」


『そうにゃ! ソロで討伐しようと思ったら、最低でもレベル四十は必要にゃ!』



猫は振り返り、俺へ牙を剥いた。



『昨日スキルに目覚めたばっかのおみゃーなんかじゃ、勝負になるわけ──』


「……え?」


『にゃ?』


「今、何て言った?」


『だから、ソロで討伐しようと思ったら、最低でもレベル四十は必要にゃ、って……!』



猫は苛立ったように尻尾を振った。



『レベル四十なんて、おみゃーら人間の基準じゃS級に片足突っ込んでる化け物にゃ! そんな奴、そこらにゴロゴロいるわけねぇにゃ!』


「…………」



俺は瞬きをした。

レベル四十。

S級に片足を突っ込んでいるらしい。


昨日見た、自分のステータスを思い出す。

俺の現在レベルは、五十三。


世界最高レベルが七十四だと聞いていたので、五十三ならA級の上の方くらいだと思っていた。

レベル七十四が百点なら、レベル五十三は七十点ちょっと。

学校のテストでいえば、それなりに頑張ったが、上位層には入れない程度の点数だ。

だから、俺の強さもそのくらいだと勝手に考えていた。


しかし──



(レベル四十で、S級に片足……? 俺、五十三なんだけど……)



妙な汗が、額を流れた。



(あれ? ひょっとして、俺のレベルって……思ってたよりずっとヤバい数値なのでは?)



いや。

まだ決めつけるのは早い。


俺は昨日スキルに目覚めたばかり。

戦闘経験もなければ、剣術や格闘技の訓練を受けたこともない。

装備だって制服である。

レベルだけ高くても、中身が伴っていない可能性は十分ある。

数字だけ大きい、見せかけの強者。

身長だけ伸びた、ひょろひょろのモヤシのような存在かもしれない。


ただ。

目の前には、百体近いスケルトン・ナイトがいる。

しかも、全員骨だ。

肉がない。

腐っていない。

つまりこれは……



(臭くない)



これほどノルマ消化に適した相手が、他にいるだろうか。

骸骨将軍も、ありがたいことに距離を取ってくれた。

先ほどのように、爆発へ自分や猫を巻き込む心配もない。


俺は制服のポケットへ手を入れた。

先ほど拾っておいた小石が、いくつか入っている。

その中から、二つを取り出す。



「……とりあえず、二、三回くらい消化しとくか」

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