第93話「予備電源」
ゴウン……。
搬送路防衛機体が、ゆっくりと立ち上がる。
外部からの電力供給は止まっている。
それでも、赤いセンサーだけは消えていなかった。
ミリアが端末を確認する。
「予備電源の出力が上がってる……」
ジェイクが武器を構える。
「あとどれくらい動ける?」
「分からない。でも、このままじゃ搬送台を追えない」
ルーカスが機体を見る。
「先にこいつを止める」
機体の腕が振り上がる。
ドンッ!
ルーカスが横へ飛ぶ。
床が大きくへこんだ。
「重い……!」
ジェイクが背後へ回り込む。
「なら、動きを止める!」
脚部へ武器を叩き込む。
ガキィン!
硬い装甲に火花が散る。
しかし、機体は振り返ることなく腕を伸ばした。
「うわっ!」
ジェイクが飛び退く。
その瞬間、ルーカスが正面から飛び込む。
「こっちだ!」
ブレイカーを叩き込む。
ドンッ!
機体の胸部装甲がへこむ。
だが、内部から別の機械音が響いた。
ウィィン……。
「まだ!」
ルーカスが二撃目を繰り出す。
ガンッ!
胸部の装甲がさらに割れる。
その隙にミリアが叫んだ。
「ルーカス、胸の中!」
「何がある?」
「予備電源!」
ミリアは端末の映像を拡大する。
「胸部中央に小型の動力装置がある。そこから全身に電力を送ってる!」
ジェイクが構える。
「そこを壊せばいいんだな!」
「でも、装甲が厚い!」
ルーカスが拳を見る。
「だったら、開ける」
機体が両腕を振り下ろす。
ドォン!
ルーカスが後ろへ跳ぶ。
ジェイクも回避する。
「ルーカス!」
「分かってる!」
ルーカスが再び突っ込む。
一撃。
二撃。
三撃。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
胸部装甲に亀裂が広がっていく。
だが、機体も反撃する。
右腕が横薙ぎに振られる。
ルーカスが腕で受け止めた。
「ぐっ……!」
身体が大きく押し飛ばされる。
「ルーカス!」
ジェイクが駆け寄る。
「大丈夫か?」
「ああ……まだやれる」
ルーカスが立ち上がる。
ミリアは端末を見ながら考えていた。
「……待って」
「どうした?」
「予備電源の冷却装置が胸部の裏側にある」
ジェイクが振り向く。
「裏?」
「正面から攻撃するより、冷却装置を止めた方がいい。予備電源が熱を持てば出力が落ちる」
ルーカスが機体を見る。
「背中か」
「そう」
ジェイクが武器を握り直す。
「俺が背後に回る」
「危険だぞ」
「分かってる」
ジェイクが走り出す。
機体がジェイクを追おうとする。
その瞬間、ルーカスが正面から拳を叩き込んだ。
ドンッ!
「こっちは俺が引きつける!」
機体のセンサーがルーカスへ向く。
ジェイクはそのまま背後へ回り込んだ。
「見つけた!」
背中の装甲の隙間。
そこから冷却用のパイプが伸びている。
ジェイクが武器を振り上げる。
「これだ!」
ガンッ!
パイプが破損する。
シュウウウッ!
白い蒸気が噴き出した。
機体が大きく揺れる。
「効いてる!」
ミリアが端末を見る。
「予備電源の温度が上がってる!」
「あとどれくらい?」
「もう少し!」
機体が突然、背中のアームを展開する。
ジェイクの目が見開かれた。
「しまった!」
アームがジェイクへ迫る。
ガンッ!
ジェイクが武器で受け止める。
「くっ……!」
押し込まれる。
ルーカスが走る。
「ジェイク!」
「来るな!」
ジェイクは必死に踏ん張る。
「俺が止める!」
ミリアが端末を操作する。
「冷却装置の温度、限界まで上がった!」
機体の動きが鈍る。
ジェイクがアームを弾き返す。
「今だ!」
ルーカスが機体の正面へ踏み込む。
ブレイカーを構える。
「これで終わらせる!」
拳が胸部へ突き刺さる。
ドンッ!
亀裂が一気に広がった。
そして――
胸部装甲が砕ける。
内部に、小さな動力装置が露出した。
ミリアが叫ぶ。
「そこ!」
ルーカスが拳を引く。
機体が最後の力で腕を振り上げる。
「ルーカス!」
ジェイクが叫ぶ。
ルーカスは退かなかった。
「終わりだ!」
全身の力を込めて、拳を叩き込む。
ドォンッ!
動力装置が大きくひしゃげる。
赤いセンサーが点滅する。
一度。
二度。
そして――
消えた。
ゴウン……。
巨大な機体が膝から崩れ落ちる。
ドォン……。
地下区画が静まり返った。
ジェイクが息を吐く。
「……今度こそ止まったな」
ミリアが端末を確認する。
「完全停止。予備電源も切れてる」
ルーカスが搬送路を見る。
「じゃあ、追えるか?」
ミリアは制御盤へ戻る。
「待って。搬送台の位置を確認する」
数秒後。
ミリアの表情が変わった。
「……まずい」
「またか?」
「搬送台が、もうすぐ第2施設との接続区画に入る」
ジェイクが目を見開く。
「急がないと!」
ミリアが別の表示を開く。
「それだけじゃない」
「何?」
画面には新しい表示。
『第2施設接続ゲート 開放準備』
ルーカスが拳を握る。
「行こう」
三人は搬送路の奥へ走り出した。
第93話 完




