第92話「搬送路の守護者」
地下搬送制御区画。
警告音が鳴り続けている。
ビーッ、ビーッ。
ミリアは端末を操作しながら、奥の暗闇を見つめた。
「近づいてくる」
ジェイクが武器を構える。
「数は?」
「一体……でも、かなり大きい」
ゴゴゴゴゴ……。
床が震える。
ルーカスが拳を構えた。
「来る」
次の瞬間。
壁の奥から巨大な機械が姿を現した。
全高は三メートル近い。
四本の脚。
両腕には大型の作業アーム。
背中には搬送路と接続するための太いケーブルが何本も伸びている。
頭部には赤いセンサー。
ミリアが端末を見る。
「搬送路防衛機体……」
ジェイクが苦笑する。
「また大型かよ」
機体の腕が持ち上がる。
ガシャン!
巨大なアームが床へ叩きつけられた。
ドォン!
「散開!」
三人が左右へ飛ぶ。
ルーカスのいた場所に亀裂が走った。
「こいつ、力が強い!」
ジェイクが横から接近する。
「脚を狙う!」
武器を振り抜く。
ガキィン!
硬い装甲に弾かれる。
「硬っ!」
機体がジェイクへ腕を振る。
「ジェイク!」
ルーカスが割り込む。
ガンッ!
拳でアームを受け止める。
だが、そのまま押し込まれる。
「ぐっ……!」
足が床を滑る。
「ルーカス!」
ミリアが電磁装置を構える。
「今、止める!」
バチッ!
電磁波が機体へ走る。
一瞬、動きが止まった。
「今!」
ルーカスが力を込める。
「うおおっ!」
アームを横へ弾き飛ばす。
ジェイクがすぐに脚部へ向かう。
「ここだ!」
ガンッ!
二度、三度と武器を叩き込む。
しかし装甲には傷がついただけだった。
「まだ倒れない!」
ミリアが端末を確認する。
「脚部は装甲が厚い。関節部分なら……」
「どこだ?」
「右脚の内側!」
ジェイクが走る。
機体のアームが迫る。
ジェイクはしゃがみ込んで回避した。
「ここ!」
ガンッ!
関節へ直撃。
バキッ!
右脚が一瞬沈む。
ルーカスが反対側へ回り込む。
「左脚は俺が!」
拳を叩き込む。
ドンッ!
二発。
三発。
装甲がへこむ。
しかし機体は倒れない。
背中のケーブルが赤く発光した。
ミリアが目を見開く。
「待って!」
「どうした?」
「この機体、搬送路から電力を直接受け取ってる!」
「つまり?」
「制御区画にいる限り、何度でも電力を補充できる!」
ジェイクが機体を見る。
「なら、電源を切ればいい」
「その制御盤が……」
ミリアが奥を指差す。
「機体の後ろ」
巨大な機体が立ち塞がっている。
その先に制御盤がある。
ルーカスが拳を握る。
「じゃあ、俺たちがこいつを引きつける」
ジェイクが頷いた。
「ミリアは制御盤へ」
「分かった」
三人が同時に動く。
ルーカスが正面から突っ込む。
「こっちだ!」
拳を叩き込む。
ドンッ!
機体がルーカスへ腕を振る。
その隙にジェイクが反対側から攻撃する。
ガキィン!
「こっちも見ろ!」
機体の意識が二人へ向く。
ミリアがその隙に走る。
「あと少し……!」
だが、機体の背中から一本のアームが伸びた。
ミリアへ向かう。
「ミリア!」
ルーカスが叫ぶ。
ミリアは振り返る。
迫る巨大なアーム。
「……っ!」
その瞬間、ジェイクが飛び込んだ。
ガンッ!
武器でアームの軌道を逸らす。
「行け!」
「ジェイク!」
「早く!」
ミリアは走り続ける。
制御盤へ到着。
端末を接続する。
「電力供給ライン……見つけた!」
画面に複数の系統が表示される。
「どれ……?」
背後から轟音。
ルーカスが吹き飛ばされた。
ドンッ!
床を転がる。
「ルーカス!」
「大丈夫……!」
ルーカスが立ち上がる。
「早く!」
ミリアが一つの項目を選択する。
『搬送路電力供給』
その下に、
『緊急遮断』
と表示されていた。
ミリアが息を整える。
「これで……!」
スイッチを押す。
カチッ。
次の瞬間。
地下区画の照明が一斉に消えた。
ゴウン……。
機体の背中から伸びていたケーブルの光も消える。
赤いセンサーだけが残った。
ジェイクが息を呑む。
「止まった……?」
機体は動かない。
しかし――
赤いセンサーが、ゆっくりとミリアへ向いた。
そして機体の内部から、再び低い機械音が響いた。
ゴォン……。
ミリアの端末に新しい表示が出る。
『内部予備電源へ切替』
ミリアの顔が青ざめる。
「……まだ動ける」
ルーカスが拳を握り直す。
「なら、完全に止めるだけだ」
機体が再び動き出した。
第92話 完




