第9話「覚悟の装着」
『対象を確認。』
『人間を排除します。』
四体の暴走ロボットが第零開発室へ侵入する。
赤いセンサーがルーカスたちを捉えた。
「来るぞ!」
ジェイクが叫ぶ。
四人……いや、三人は武器らしい武器を持っていない。
ジェイクが鉄パイプを構える。
ミリアは工具箱からレンチを取り出した。
ルーカスだけが、その場に立ち尽くしていた。
「ルーカス!」
ジェイクの叫びで我に返る。
一体のロボットが拳を振り上げる。
ドォン!!
ジェイクは間一髪でかわすが、衝撃で吹き飛ばされる。
「ぐっ!」
壁に背中を打ちつけ、苦しそうにうずくまる。
「ジェイク!」
ルーカスが駆け寄ろうとした瞬間、別のロボットが進路を塞ぐ。
『抵抗を確認。』
『排除します。』
ミリアがレンチを振り下ろす。
ガキィン!!
しかし、ロボットの腕に弾かれ、レンチは床へ転がった。
「硬すぎる……!」
三人は追い詰められる。
後ろは壁。
逃げ道はない。
ルーカスは震える手でガラスケースを見る。
中には《ブレイカー》。
父が残した最後の装備。
「まだ使うな……」
父の言葉が頭をよぎる。
『今のお前には、まだ使ってほしくない。』
「でも……!」
目の前ではジェイクが立ち上がれない。
ミリアも逃げ場を失っている。
このままなら二人は殺される。
ルーカスは拳を握り締めた。
「俺は……」
恐怖で足が震える。
それでも一歩踏み出した。
「もう……逃げたくない。」
ガラスケースの前へ立つ。
認証装置が光る。
【装備使用申請】
【使用者:ルーカス・レイン】
【最終確認】
【本当に装着しますか?】
ルーカスは迷わなかった。
「装着する。」
ガシャン──。
ガラスケースがゆっくり開く。
黒いグローブが姿を現した。
ルーカスは右手、そして左手にはめる。
カチッ。
次の瞬間。
青い光がグローブ全体を駆け巡る。
ブゥゥゥン……
【適合率測定】
【15%】
【適合を確認】
【システム起動】
「うっ……!」
全身に強い衝撃が走る。
まるで電流が身体中を駆け巡るようだった。
膝をつくルーカス。
「ルーカス!」
ミリアが叫ぶ。
しかし、グローブは止まらない。
【神経接続開始】
【筋力補助システム起動】
【装着完了】
ルーカスはゆっくり立ち上がる。
拳を握る。
ギュッ……
不思議な感覚だった。
重くない。
まるで最初から自分の腕だったかのように馴染んでいる。
ロボットが近づく。
『新たな脅威を確認。』
『優先的に排除します。』
ルーカスは一歩前へ出る。
まだ戦い方は分からない。
強さも分からない。
それでも、もう逃げるつもりはなかった。
「ジェイク。」
「ミリア。」
「二人は下がって。」
ジェイクは驚いた表情でルーカスを見る。
「お前、一人で……?」
ルーカスは小さく頷く。
「やってみる。」
四体の暴走ロボットが同時に動き出す。
第零開発室に緊張が走る。
ルーカスは拳を構えた。
これが――
人生初めての戦いだった。
第9話 完




