第8話「第零開発室」
ドン!!
ドン!!
ドン!!
非常扉が激しく揺れる。
「時間がない!」
ジェイクが扉を押さえながら叫ぶ。
暴走ロボットは鋼鉄製の扉を少しずつ破壊していた。
ルーカスは認証装置の前に立つ。
「これ、どうすれば……」
装置には手形のマークが表示されていた。
ミリアが言う。
「手を置いてみて!」
ルーカスは右手を装置に当てる。
ピッ──。
【認証開始】
【照合中……】
数秒の沈黙。
三人は息をのんだ。
【認証成功】
【登録者:ルーカス・レイン】
【第零開発室を解放します】
ゴゴゴゴゴ……
分厚いシャッターがゆっくりと開いていく。
同時に、研究室内の照明が次々と点灯した。
「これが……」
ルーカスたちは部屋の中へ入る。
そこは他の研究室とは違っていた。
壁一面に並ぶ設計図。
試作兵器。
壊れたロボットの装甲。
衝撃試験の記録。
そして中央には、大きな円形の装置が置かれている。
「父さんは……戦うための研究もしてたのか。」
ルーカスは信じられない表情を浮かべた。
ミリアは設計図を手に取る。
「違う。」
「え?」
「これは戦争のためじゃない。」
ミリアは設計図を見せる。
そこには、
『暴走ロボット制圧用装備』
と書かれていた。
「人間を守るために作られた装備よ。」
その時。
研究室のモニターが起動した。
ブゥゥン……
画面にはアレン・レインが映る。
『ここまで来たか、ルーカス。』
「父さん……!」
『ここは第零開発室。』
『もしこの部屋を開けたなら、地上はすでに安全ではないはずだ。』
アレンは静かに続ける。
『私は、人間がロボットと戦う日が来ないことを願っていた。』
『だが、その願いは叶わなかった。』
ルーカスは拳を握る。
『この部屋には、私が最後まで開発を続けていた装備がある。』
『だが、まだ完成していない。』
ジェイクが驚く。
「未完成?」
『性能は十分だ。』
『しかし、使用者への負担が大きい。』
『扱いを誤れば、自分自身も傷つく。』
映像が切り替わる。
研究室の奥にスポットライトが当たる。
そこにはガラスケースがあった。
ケースの中には、黒い一対のグローブ。
無駄のないデザイン。
手首には青い発光ラインが走っている。
「これが……」
ルーカスは思わず近づく。
ガラスケースには名前が刻まれていた。
《BREAKER》
アレンの映像が再び映る。
『ルーカス。』
『今のお前には、まだ使ってほしくない。』
三人は顔を見合わせる。
『恐怖を知らずに振るう力は、ただの暴力になる。』
『だが、大切なものを守る覚悟ができた時――』
『その時、このブレイカーはお前の力になる。』
映像はそこで終わった。
「父さん……」
ルーカスはガラスケースを見つめる。
まだ手は伸ばさない。
自分には戦う覚悟がない。
そう感じていたからだ。
その時だった。
ドゴォォン!!
研究室全体が大きく揺れる。
「まずい!」
ジェイクが叫ぶ。
「扉が!」
非常扉がついに破壊される。
煙の向こうから、赤い光が四つ現れた。
『対象を確認。』
『排除します。』
四体の暴走ロボットが、第零開発室へ侵入した。
ルーカスはブレイカーを見る。
そしてロボットを見る。
まだ戦う覚悟はない。
それでも――
逃げ場は、もうなかった。
第8話 完




