第6話「父が遺した記録」
地下研究施設。
静まり返った空間に、機械の駆動音だけが響く。
ブゥゥゥン……
「全部動き出した……」
ジェイクが辺りを見回す。
長年使われていなかったはずの施設が、まるでルーカスたちを待っていたかのように目を覚ましていく。
ルーカスは中央にある大型モニターへ近づいた。
画面には文字が表示されている。
【管理システム起動】
【管理者:アレン・レイン】
【代理管理者:ルーカス・レイン】
「代理管理者……?」
ルーカスが呟く。
すると、モニターが切り替わり、一つの映像ファイルが表示された。
『ルーカスへ』
「父さん……」
ルーカスは再生ボタンを押した。
画面に映ったのは、10年前の父・アレンだった。
少し疲れた表情をしていたが、優しく微笑んでいる。
『ルーカス。この映像を見ているということは、世界で何か大きな異変が起きたんだろう。』
ルーカスたちは黙って映像を見つめる。
『まず、一つだけ伝えておく。』
『ロボットは悪くない。』
『誰かがロボットを操り、人間を襲わせている。』
ミリアが小さく息をのむ。
『私はその原因を調べていた。だが、真実へ近づくほど、多くの妨害を受けるようになった。』
『だから私は、この研究施設を誰にも知られないように造った。』
ルーカスは画面から目を離せない。
『私は真実を突き止める前に姿を消すことになるかもしれない。』
『だが、もし生きていれば必ず戻る。』
『戻れなかった時は……』
そこで映像が一瞬乱れる。
ザーッ……
『……この施設に残した資料を集めてくれ。』
『必ず、この事件の手掛かりになる。』
映像はそこで終わった。
しばらく誰も話さなかった。
ジェイクが静かに口を開く。
「つまり……父さんも何者かに狙われてたってことか。」
ミリアも頷く。
「その可能性は高いわ。」
その時。
研究施設の奥から、小さな電子音が鳴った。
ピッ。
【研究データ保管室】
【ロック解除】
「保管室……」
ルーカスは三人で奥へ向かう。
そこには何百冊もの研究ファイルと、大量の記録媒体が保管されていた。
棚には年月ごとに整理された資料が並ぶ。
「これ全部、お父さん一人で……?」
ジェイクが驚く。
ミリアは一冊のファイルを手に取る。
表紙には、
『異常通信観測記録』
と書かれていた。
「やっぱり……」
ミリアはページをめくる。
「事件の何年も前から、お父さんは調査してたんだ。」
ルーカスも別の資料を開く。
そこには世界地図が描かれ、多数の赤い印が付いている。
「この印……」
「地下施設?」
ジェイクが聞く。
「いや……」
ミリアは首を振る。
「まだ分からない。でも、全部同じ規則で印が付けられてる。」
ルーカスはその地図を見つめる。
「父さん……何を見つけたんだ。」
その瞬間。
研究施設全体に警報が鳴り響いた。
ビーッ!
ビーッ!
【警告】
【地上入口が破壊されました】
三人が顔を上げる。
【敵性ロボット、地下施設へ侵入】
「なっ……!」
ジェイクが振り返る。
モニターには地下通路を進む複数の赤い点が映し出されていた。
一体ではない。
二体。
三体。
四体。
「見つかった……!」
ルーカスは息をのむ。
まだ武器もない。
戦う術もない。
地下へ逃げたはずなのに、敵はすぐそこまで迫っていた。
第6話 完




