第36話「増殖する赤い光」
ミリアの端末に表示された地図。
赤い点がいくつも灯っている。
ジェイクが画面を覗き込む。
「……これ、全部?」
「確認できているだけでも七体」
ルーカスが倒れた大型ロボットを見る。
「同じタイプなのか?」
「完全に同じじゃない。でも、構造はよく似てる」
ジェイクが周囲を見る。
「じゃあ、こいつ一体だけじゃなかったってことか」
「そう」
ミリアが地図を拡大する。
「しかも、さっきまで停止していた機体が一斉に動き始めてる」
ルーカスの表情が変わる。
「通信を妨害したのに?」
「この大型機には、別の制御システムがあるのかもしれない」
その時。
遠くから轟音が響いた。
ドォン!
三人が振り返る。
さらに別の場所から――
ドォン!
ジェイクが息を呑む。
「始まったな」
ミリアが端末を確認する。
「北側で一体が移動開始。西側でも一体。さらに南側……」
赤い点が次々と動き始める。
ルーカスが拳を握る。
「このままじゃ街中が危ない」
「警察や自衛隊に連絡できないか?」
ジェイクが聞く。
ミリアが端末を操作する。
「通信網が不安定で、通常の回線が使えない」
「じゃあ、地下の設備を使うしかない?」
「そう」
ルーカスは工場を見る。
「戻るぞ」
ジェイクが頷く。
三人は工場へ向かって走り出した。
その途中。
倒れている大型ロボットの横を通り過ぎる。
ルーカスがふと足を止めた。
「待って」
「どうした?」
ルーカスはロボットの胸部を見る。
先ほど破壊した動力制御装置。
その内部から、小さな機械音が聞こえる。
カチッ。
ミリアがしゃがみ込む。
「まだ何か動いてる」
「壊れてないのか?」
「違う」
ミリアが装置を確認する。
「これは通信装置」
ジェイクが驚く。
「じゃあ、こいつは停止してるのに通信してるのか?」
「そうみたい」
ルーカスが眉をひそめる。
「どこへ?」
ミリアが端末を接続する。
画面に一つの通信先が表示された。
しかし、その情報はすぐに消える。
「消された」
「誰かが?」
「分からない」
ミリアが装置を取り外す。
「でも、これを持って帰れば調べられる」
ルーカスが頷く。
「持っていこう」
ジェイクが装置を受け取る。
「重っ……!」
「落とすなよ」
「分かってる!」
三人は再び走り出した。
工場へ戻る道。
その途中で、遠くの建物が大きく揺れた。
ガシャァン!
窓ガラスが砕ける。
ジェイクが振り返る。
「またロボットか!」
ミリアが端末を確認する。
「違う……」
「何?」
「大型機じゃない」
ミリアの画面に、新しい反応が表示された。
小型。
中型。
大型。
様々な機体が、街のあちこちで動き始めている。
「全部……動き始めてる」
ルーカスは立ち止まる。
「どうして今なんだ?」
ミリアが答える。
「分からない」
その瞬間。
三人の頭上を、何かが高速で通過した。
ヒュンッ!
ジェイクが空を見上げる。
「今の何だ?」
ミリアが端末を確認する。
「飛行型……?」
空の彼方へ飛んでいく影。
ロボットだった。
ルーカスが空を見上げる。
「地上だけじゃないのか……」
三人は再び工場へ向かう。
だが――。
工場の方角から、複数の赤い光が見え始めていた。
ジェイクが足を止める。
「……あれ」
工場の周囲。
これまで停止していたロボットたちが、一斉に動き始めていた。
ミリアが端末を見る。
「工場内部の機体も起動してる」
ルーカスは拳を握る。
「急ぐぞ」
三人は工場へ向かって走り出した。
その背後で、倒れていた大型ロボットの胸部から――
小さな赤いランプが、再び点灯した。
第36話 完




