第33話「追跡」
地下の保守管理区画。
モニターには、避難場所へ向かって走る一体のロボットが映っている。
ミリアは端末を操作し続けていた。
「この映像、工場の監視システムと繋がってる」
ジェイクがモニターを見る。
「じゃあ、あのロボットの位置も分かるのか?」
「追跡できる」
ミリアの指が止まる。
「でも……」
「何?」
「このロボット、工場から直接命令を受けてない」
ルーカスが眉をひそめる。
「じゃあ、どうやって動いてる?」
「別の通信源がある」
ジェイクが振り返る。
「別の場所から?」
「そう。工場から送られている信号とは違う」
ルーカスはモニターを見る。
「その通信源を探せる?」
「やってみる」
ミリアが信号を追跡する。
画面に街の地図が表示された。
通信源を示すマークが一つ点灯する。
「ここ」
ルーカスが地図を見る。
「工場じゃない」
「ええ」
ジェイクが身を乗り出す。
「どこだ?」
ミリアが拡大する。
「工場からかなり離れてる」
「それでも、そこからロボットを動かしてるのか?」
「可能性が高い」
ルーカスは拳を握る。
「だったら、そこを止めれば……」
「待って」
ミリアが画面を確認する。
「通信源が移動してる」
「移動?」
「車両かもしれない」
通信源を示すマークが、少しずつ道路上を移動していく。
ジェイクが呟く。
「誰かがロボットを操りながら移動してる?」
「そう考えるのが自然」
ルーカスは地図を見る。
通信源は、避難場所へ向かっているロボットとは別の方向へ進んでいる。
「じゃあ、ロボットはどうやって命令を受けてる?」
ミリアが答える。
「途中の中継装置を使ってる可能性がある」
「中継装置?」
「一定の範囲に信号を飛ばして、そこからロボットへ送る」
ジェイクが拳を握る。
「つまり、そいつを壊せばいい」
「そう簡単じゃない」
ミリアが画面を指差す。
「中継地点が複数ある」
地図上に次々とマークが現れる。
工場。
道路。
別の建物。
そして、街の中心部。
ジェイクが唖然とする。
「こんなに?」
「誰かが事前に設置していたみたい」
ルーカスは黙って地図を見つめる。
その時、モニターに警告が表示された。
【対象機体、避難区域まで残り500m】
ジェイクが叫ぶ。
「時間がない!」
ルーカスがミリアを見る。
「何か止める方法は?」
「直接止めるのは無理。でも、この地下設備にロボットの通信を妨害する機能がある」
「使える?」
「分からない」
「やってみよう」
ミリアは端末を操作する。
地下設備の一覧が表示される。
その中に、一つだけ見慣れない項目があった。
【広域通信妨害システム】
ミリアが目を見開く。
「これだ」
ジェイクが画面を見る。
「使えるのか?」
「まだ分からない。でも、これならロボットへの通信を一時的に遮断できるかもしれない」
ルーカスが即答する。
「やろう」
ミリアがシステムを起動する。
ウィーン……。
地下の機械が動き始める。
モニターの表示が変わる。
【妨害範囲設定】
ミリアが地図を確認する。
「範囲を広げると、工場のロボットも止まる可能性がある」
ジェイクがルーカスを見る。
「それでもやるか?」
ルーカスは迷わなかった。
「人がいる場所を優先する」
ミリアが操作する。
妨害範囲が広がっていく。
【実行しますか?】
「……いくよ」
ミリアが実行ボタンを押す。
その瞬間。
地下の機械が大きく唸った。
そしてモニターに映っていたロボットが――
突然、足を止めた。
ジェイクが息を吐く。
「止まった……」
しかし、ミリアの表情は険しい。
「違う」
「え?」
「通信を切っただけ」
ミリアが画面を見つめる。
「ロボットはまだ動ける」
その直後。
停止していたロボットの赤い目が、再び点灯した。
第33話 完




