第29話「保守管理区域」
工場の外周。
ルーカスたちは、先ほど見つけた扉の前に戻ってきた。
扉には、
【保守管理区域】
と書かれた古いプレートが取り付けられている。
ジェイクが扉を調べる。
「やっぱり鍵がかかってる」
ミリアが周囲を見る。
「電子ロックじゃない。かなり古いタイプね」
「鍵穴は?」
「ある」
ルーカスが扉の周辺を確認する。
「近くに管理室みたいな場所はないか?」
ミリアが端末を操作する。
「少し離れたところに小さな建物がある」
ジェイクが指を差す。
「あれか?」
工場の外周に、プレハブのような小さな建物が建っている。
三人はそちらへ向かった。
入口には鍵がかかっていた。
ジェイクが取っ手を引く。
「ここもか」
ミリアが扉を確認する。
「でも、こっちは普通の鍵じゃない」
「じゃあ?」
「カードキーみたい」
ルーカスが周囲を見る。
「さっきの車に何か残ってないか?」
三人は再び車へ戻る。
車内を調べていく。
助手席。
後部座席。
ダッシュボード。
そして、運転席の下。
ジェイクが手を伸ばす。
「……あった」
小さなカードが落ちていた。
ミリアが受け取る。
「これ、社員証じゃない」
「使えるか?」
「試してみる」
三人は管理用の建物へ戻る。
ミリアがカードを読み取り機にかざした。
ピッ。
ロックが解除される。
「開いた」
ジェイクが扉を開ける。
中は狭い。
古い机と棚。
壁には工場の簡単な見取り図が貼られている。
ミリアが地図を確認する。
「これ……」
「何?」
「保守管理区域の位置が書かれてる」
ルーカスが近づく。
「さっきの扉か?」
「ええ。でも、その先に地下設備へ続く通路がある」
ジェイクが驚く。
「地下?」
「そう」
ミリアはさらに地図を見る。
「ただ、この通路は普段使われていないみたい」
ルーカスが尋ねる。
「どうして分かる?」
「最後に点検された記録がかなり古い」
ジェイクが腕を組む。
「じゃあ、今は使われてない?」
「そう思う」
その時。
棚の奥から一枚の紙が落ちた。
ルーカスが拾う。
そこには、ロボットの整備記録が書かれていた。
ミリアが目を通す。
「……この工場で作られていたロボットの記録ね」
ジェイクが覗き込む。
「普通のロボットじゃないのもいるのか?」
ミリアが記録を読む。
「人間の介護用、医療用、災害救助用……」
「全部、人を助けるためのロボットだな」
ルーカスが呟く。
「そう」
ミリアは次のページをめくる。
そこには、通常の整備記録とは違う項目があった。
【通信機能変更】
【遠隔制御システム接続】
【安全制御設定変更】
三人の表情が変わる。
ジェイクが言う。
「……これって」
「ロボットの制御システムを変更した記録」
ミリアが答える。
ルーカスは紙を見つめる。
「誰が変更した?」
しかし、担当者の欄は空白だった。
ミリアがさらに下を見る。
「日付は……暴走事件が起きる少し前」
ジェイクが黙り込む。
工場で作られたロボット。
変更された通信機能。
そして、その後に起きた暴走。
少しずつ繋がってきている。
ルーカスは立ち上がる。
「これを持っていこう」
ミリアが頷く。
「分かった」
ジェイクが見取り図を見る。
「じゃあ、あの保守管理区域から地下へ行けるんだな」
「たぶん」
「なら、そこを調べよう」
ルーカスは扉の外を見る。
工場の中から、また機械音が聞こえてきた。
ウィーン……。
第29話 完




