第27話「消えた監視網」
通用口の前。
閉ざされた扉を、ルーカスが確認する。
「……完全にロックされてるな」
ジェイクが取っ手を引く。
「びくともしない」
ミリアは端末を操作し続けていた。
「さっきまで繋がっていた監視カメラが、全部切られてる」
「全部?」
「少なくとも、私が確認できる外周のカメラは全部」
ルーカスは周囲を見る。
さっきまで動いていた監視カメラが、今は完全に沈黙している。
「向こうが消したなら、何のためだ?」
ジェイクが呟く。
「俺たちを見失ったから?」
「それなら、わざわざ扉を閉める必要がない」
ミリアが答える。
ルーカスはしばらく黙って考える。
「……監視をやめたんじゃない」
「え?」
「別の方法で俺たちを追ってる可能性がある」
ミリアが顔を上げる。
「可能性はある」
その時。
工場の奥から、かすかな機械音が響いた。
ウィーン……。
三人が同時に振り返る。
音は、通用口の向こう側から聞こえている。
ジェイクが金属棒を構える。
「今度は何だ?」
ミリアが端末を見る。
「待って」
「どうした?」
「さっきまで停止していたロボットの一部が……動き始めてる」
「どこ?」
ミリアが画面を表示する。
そこには、監視カメラが最後に捉えていた映像が残っていた。
停止していたロボットの一体。
その頭部が、ゆっくりと動いている。
ジェイクが息を呑む。
「……起きたのか?」
「まだ分からない」
映像の中で、ロボットが立ち上がる。
一体。
そして、もう一体。
さらにその奥でも。
次々とロボットが動き始めていた。
ルーカスが拳を握る。
「まずいな」
しかし、ロボットたちは三人のいる方向へは向かっていない。
ミリアが画面を確認する。
「こっちには来てない」
「じゃあ、何をしてる?」
「分からない」
ロボットたちは一定の方向へ進んでいく。
その先には、工場の別区画がある。
ジェイクが呟く。
「何か命令を受けてるのか?」
ミリアが端末を確認する。
「……その可能性は高い」
突然、端末からノイズが走った。
ザーッ。
「!」
ミリアが画面を見る。
一瞬だけ、未知の通信信号が表示された。
【接続要求】
しかし、すぐに消える。
「今の何だ?」
「分からない。でも、工場内部から信号が送られてきた」
「誰かが送った?」
「そこまでは分からない」
ルーカスは通用口を見る。
「もう一度、確認できるか?」
「やってみる」
ミリアが操作する。
しかし、今度は何も反応しない。
「駄目。完全に消えてる」
その時。
カチャ。
通用口のロックが解除された。
三人が一斉に扉を見る。
「……勝手に開いた?」
ジェイクが一歩近づく。
「さっきまで閉まってたのに」
扉が少し開く。
中には、薄暗い通路が続いている。
ジェイクが中を覗く。
「誰もいない」
ルーカスは入らずに周囲を見る。
「罠かもしれない」
ミリアも頷く。
「私もそう思う」
三人は扉の前で立ち止まる。
工場内部へ続く通路。
その先から、何かの機械音が聞こえてくる。
ウィーン……。
そして、遠くで金属が擦れる音。
ギィィ……。
ジェイクが金属棒を構える。
「中で何か動いてる」
ルーカスは通路の奥を見つめた。
「今は入らない」
「じゃあ、どうする?」
「もう少し周りを調べる」
ミリアが頷く。
三人は通用口から離れ、再び工場の外周へ向かった。
開いた扉だけが、暗い通路を静かに覗かせていた。
第27話 完




