第26話「通用口」
通用口の取っ手が、ゆっくりと下がる。
ルーカスは拳を構えた。
ジェイクも金属棒を握る。
ミリアは一歩後ろへ下がった。
カチャ。
扉が少し開く。
「……」
三人は息を殺した。
だが、誰も出てこない。
ルーカスが目だけでジェイクに合図する。
ジェイクが頷く。
そして――
ルーカスが扉を一気に開いた。
「!」
中には誰もいなかった。
小さな通路が続いているだけだった。
ジェイクが中を覗く。
「……誰もいない」
ミリアが端末を確認する。
「さっきの音は電子ロックが解除された音みたい」
「じゃあ、誰かが開けたわけじゃない?」
「そう」
ルーカスが通用口を見る。
「勝手に開いた?」
ミリアが首を傾げる。
「正確には……遠隔操作された可能性がある」
ジェイクが眉をひそめる。
「遠隔操作?」
「この扉のロックが、外部から解除された記録が残ってる」
ルーカスは暗い通路を見る。
「俺たちを中へ誘ってる?」
「可能性はある」
ジェイクが一歩下がる。
「それなら入らない方がいいな」
ルーカスも頷く。
「そうだな」
三人は通用口の中へは入らず、周囲を確認する。
ミリアが端末を操作する。
「ちょっと待って」
「何か分かった?」
「この通用口、普段は使われていないみたい」
「じゃあ、なんで今開いた?」
「それが分からない」
ミリアが扉の横にある機器を調べる。
「でも、このロック……かなり古い」
ジェイクが周囲を見る。
「古いのに、遠隔操作できるのか?」
「後からシステムを繋いだのかもしれない」
ルーカスは考える。
この工場には、古い設備と新しいシステムが混在している。
そして、暴走したロボット。
研究施設から繋がっている情報。
まだ分からないことが多い。
「ミリア」
「何?」
「この工場の監視システムに侵入できる?」
「完全に掌握するのは無理。でも、外周のカメラを一部確認するくらいならできる」
「やってくれ」
「分かった」
ミリアが端末を操作する。
数秒後。
工場周辺の映像がいくつも表示された。
正面入口。
搬送ゲート。
裏手。
駐車場。
そして――
「これ……」
ミリアが一つの映像を拡大する。
工場の反対側。
そこには、何台ものロボットが並んでいた。
しかし、正面入口にいた機体とは違う。
全てが停止している。
ジェイクが画面を見る。
「こいつらも動いてないな」
「ええ」
ミリアは映像を切り替える。
別の場所。
またロボット。
さらに別の場所。
どこを見ても、ロボットが配置されている。
「……多すぎる」
ジェイクが呟く。
ルーカスは画面を見つめる。
「でも、全部止まってる」
「何かの命令を待っているのかもしれない」
その瞬間。
画面の一つが乱れた。
ザーッ。
「!」
ミリアが操作する。
しかし、映像は戻らない。
「どうした?」
「通信が切られた」
「誰かに?」
「分からない」
別のカメラ映像も消える。
一つ。
また一つ。
外周の監視カメラが次々と停止していく。
ジェイクが周囲を見る。
「……これ、俺たちがやったわけじゃないよな?」
ミリアは首を横に振る。
「違う」
ルーカスが工場を見る。
「じゃあ、向こうが消した」
その瞬間。
通用口の扉が――
ガチャン!
突然閉まった。
ジェイクが振り返る。
「!」
ミリアが端末を見る。
「ロックされた!」
ルーカスは扉を確認する。
「開けられる?」
「さっきと同じシステム。でも、今度は外部から完全に遮断されてる」
ジェイクが苦笑する。
「歓迎されてるのか、閉じ込められてるのか分からないな」
ルーカスは工場を見る。
「どっちにしても……」
拳を握る。
「俺たちがここにいることは、もう確実に知られてる」
第26話 完




