第24話「残された車」
工場の裏手。
ルーカスたちは、放置された一台の車を調べていた。
運転席のドアは開いたまま。
車内には誰もいない。
ジェイクが周囲を確認する。
「誰もいないな」
「ええ」
ミリアは車内を調べる。
「でも、完全に放置されたわけじゃなさそう」
「どうして?」
ミリアは助手席に置かれていた資料を手に取る。
「これ」
ルーカスが覗き込む。
「搬送記録?」
「そう」
資料には、第七自動化工場から運び出されたロボットの記録が並んでいる。
ミリアがページをめくる。
「かなりの数がここから出荷されてる」
ジェイクが記録を見る。
「工場で作ったロボットを、各地へ運んでたってことか」
「そのみたい」
ルーカスが一枚の記録を指差す。
「これ、他と違わないか?」
そこには、通常とは違う記載があった。
【特別管理】
【機体情報:非公開】
【搬送先:記録制限】
ジェイクが眉をひそめる。
「なんだこれ」
ミリアも詳しく調べる。
「通常のロボットとは別に管理されていたみたい」
「暴走ロボットと関係してるのか?」
「まだ分からない」
ミリアは資料を見つめる。
「でも、調べる価値はある」
ルーカスは車内をさらに確認する。
すると、ダッシュボードの下から小さな端末が落ちているのを見つけた。
「これも関係あるかもしれない」
ミリアが受け取る。
電源を入れる。
画面には、工場の搬送ルートが表示された。
「……まだデータが残ってる」
「何が分かる?」
「少し待って」
ミリアが操作する。
画面上に複数のルートが表示される。
そのうち一つだけ、赤く表示されていた。
「このルート……」
「どこへ続いてる?」
「工場の裏側にある搬送ゲート」
ジェイクが工場を見る。
「じゃあ、あそこからロボットを運び出してたのか」
「そうみたい」
ルーカスは工場の裏側を見る。
そこには大きな搬送ゲートがある。
だが、今は閉じている。
「正面から入るより、そっちを調べた方がいいかもしれない」
ジェイクが頷く。
「ロボットが大量にいる正面を避けられるしな」
三人は搬送ゲートへ向かう。
近づいてみると、地面にはいくつものタイヤ跡が残っていた。
ミリアがしゃがみ込む。
「新しい跡もある」
「最近まで使われてる?」
「ええ」
ルーカスがゲートを見る。
「じゃあ、工場は今も動いてる」
その時。
工場の中から、微かな機械音が聞こえた。
ウィーン……。
三人が顔を上げる。
音はすぐに止まった。
ジェイクが小声で言う。
「中で何か動いたな」
「たぶん」
ミリアは端末を確認する。
「電力の消費量も少し上がった」
ルーカスは拳を握る。
「誰かが工場を動かしてるのか、それとも……」
「自動で動いてる可能性もある」
ミリアが答える。
ルーカスはすぐには答えなかった。
工場の中には、暴走ロボットがいる。
そして、今も何らかの設備が動いている。
けれど、今の段階で中へ入るのは危険すぎる。
「もう少し外から調べよう」
ジェイクが頷く。
「分かった」
三人は搬送ゲートから離れる。
その背後。
工場の壁に取り付けられた監視カメラが、ゆっくりと動いた。
三人の姿を捉える。
赤いランプが点灯した。
ルーカスたちは、それに気づいていなかった。
第24話 完




