第23話「赤い光」
工場の入口が、ゆっくりと開き始める。
その暗闇の奥に、無数の光が浮かんだ。
赤い光。
ロボットの目だった。
ルーカスは拳を構えた。
「……来るぞ」
ジェイクも金属棒を握り直す。
しかし――。
何も起きない。
赤い光だけが、暗闇の中に並んでいる。
「……?」
ジェイクが目を細める。
「動かないな」
ルーカスも警戒を解かない。
「まだ油断するな」
ミリアは端末を確認していた。
「待って。何か変」
「何が?」
「このロボットたち、全部電源が入ってるわけじゃない」
「どういうこと?」
ミリアが画面を見せる。
「赤い光は目じゃない」
ルーカスとジェイクが画面を見る。
「じゃあ何だ?」
「待機状態を示すランプみたい」
ジェイクが入口を見る。
「じゃあ、まだ動いてないのか」
「そう」
ミリアが続ける。
「しかも、今のところ攻撃命令を受けている機体はないみたい」
ルーカスは少しだけ拳を下げた。
「……なら、ここで戦う必要はない」
ジェイクが頷く。
「俺もそう思う」
ルーカスは入口を見る。
「中に入るのは危険だ」
ミリアも同意する。
「この数を相手にするのは無理」
三人は入口から少し距離を取った。
その時。
カチッ。
工場の壁に設置された監視カメラが動いた。
「……!」
ルーカスが気づく。
カメラが三人の方を向いている。
ジェイクが小声で言う。
「見られてるな」
ミリアが端末を確認する。
「この工場、外周にも監視設備がある」
「じゃあ、俺たちがここにいることも……」
「もう知られている可能性が高い」
ルーカスは工場を見上げた。
正面から入れば、あのロボットたちと戦うことになる。
それなら――。
「別の入口を探そう」
ジェイクが頷く。
「賛成」
三人は工場本館の正面から離れ、建物の外周を歩き始めた。
ミリアが端末で工場の図面を確認する。
「外周を回れば、いくつか搬入口がある」
「そこから入れる?」
「分からない。でも、正面よりはいい」
三人は慎重に進む。
すると、工場の側面に大きな搬入口が見えてきた。
シャッターは閉じている。
その横には、小さな操作パネルがある。
ジェイクが近づく。
「これ、開けられるか?」
ミリアが確認する。
「電源は入ってる」
「じゃあ――」
「待って」
ミリアが画面を見る。
「ここも監視されてる」
ルーカスが周囲を見る。
「なら、今は触らない」
「え?」
「正面のロボットが動かなかった理由も分からない。ここで無理に入ったら、全部動き出すかもしれない」
ジェイクが腕を組む。
「確かに」
ルーカスは搬入口を見つめる。
「今日は情報を集めよう」
ミリアが頷く。
「私もその方がいいと思う」
三人は搬入口から離れる。
そして、工場の外周をさらに調べる。
すると――。
地面に、何かの跡が残っていた。
ミリアがしゃがみ込む。
「これ……」
「何?」
「タイヤの跡」
ジェイクが見る。
「最近のものか?」
「そうみたい」
ルーカスは跡が続いている方向を見る。
それは工場の裏側へ続いていた。
「車が出入りしてる?」
「可能性がある」
三人はその跡を追う。
やがて、工場の裏手に小さな駐車スペースを見つけた。
そこには一台の車が止まっていた。
エンジンは切れている。
だが――。
運転席のドアが開いている。
ジェイクが警戒する。
「誰かいたのか?」
ルーカスは周囲を見る。
「分からない」
ミリアが車を確認する。
「中に人はいない」
助手席には、何かの資料が置かれていた。
ミリアが手に取る。
「工場の搬送記録……」
ルーカスが覗き込む。
そこには、最近まで大量のロボットが工場から運び出されていた記録が残されていた。
ジェイクが眉をひそめる。
「暴走が始まった後も?」
ミリアが頷く。
「……そうみたい」
ルーカスの表情が険しくなる。
「じゃあ、この工場は今もロボットを動かしてる」
三人は顔を見合わせる。
工場の中では、一体何が起きているのか。
まだ何も分からない。
だが、少なくとも一つだけ確かなことがあった。
ここには、今も誰かが関わっている。
第23話 完




