第21話「少年の証言」
第七自動化工場へ向かう道。
ルーカスたちは、先ほど助けた少年と一緒に歩いていた。
少年は何度も後ろを振り返っている。
「大丈夫か?」
ルーカスが声をかける。
「……うん」
少年は小さく頷いた。
ジェイクが隣を歩く。
「名前は?」
「……ノア」
「ノアか。俺はジェイク。こっちはルーカスとミリア」
ノアは二人を見る。
「さっき……助けてくれてありがとう」
「礼はいらないって」
ジェイクが笑う。
ルーカスは前方を見る。
「それより、工場から来たって言ってたよな」
ノアの表情が曇った。
「……うん」
「中にいたのか?」
「少しだけ」
ミリアが尋ねる。
「どうして工場に?」
「父さんと一緒に逃げてたんだ」
「お父さんは?」
ノアは黙り込んだ。
しばらくして、俯いたまま答える。
「……工場の中にいる」
ルーカスたちは足を止めた。
「まだ生きてるのか?」
「分からない」
ノアは唇を噛む。
「ロボットが急に襲ってきて……父さんが俺を逃がした」
ジェイクの表情が変わる。
「それで一人で逃げてきたのか」
「うん」
ノアは工場の方を見る。
「父さんは、工場の中に人がいるって言ってた」
ミリアが反応する。
「人が?」
「うん。でも……普通の人じゃないって」
ルーカスが聞き返す。
「どういう意味?」
「分からない」
ノアは首を振る。
「父さんが言ってたんだ。『あそこには、まだ人間を守ろうとしている奴らがいる』って」
三人は顔を見合わせる。
暴走ロボットがいる。
しかし、工場の中には人間も残っている。
しかも、ロボットに味方する人間だけとは限らない。
「その人たちは、ロボットと戦ってたのか?」
「……たぶん」
「たぶん?」
「遠くから見ただけだから」
ノアは続ける。
「一人だけ、ロボットを止めてる人がいた」
「人間が?」
ジェイクが驚く。
「うん」
「どんな奴だった?」
「分からない。でも……」
ノアは少し考える。
「腕が、普通じゃなかった」
ルーカスが眉をひそめる。
「腕?」
「機械みたいだった」
ミリアの表情が変わる。
「サイボーグ……?」
ノアはその言葉を知らないのか、首を傾げる。
「分からない」
ルーカスは工場の方を見る。
この事件には、暴走ロボットだけではない。
ロボットに協力する人間。
そして、ロボットから人間を守る人間。
さらに、身体の一部を機械化した存在。
知らないものが増えていく。
ジェイクが口を開く。
「だったら、工場に行けば分かることが増えそうだな」
ミリアが頷く。
「ええ」
ノアが不安そうにルーカスを見る。
「……工場に行くの?」
「行く」
ルーカスは答えた。
「でも、無理に一緒に来なくていい」
ノアは少し迷う。
「父さんを……助けたい」
「なら、まず安全な場所を探そう」
ルーカスが言う。
「俺たちは工場を調べる」
ジェイクも頷く。
「その間、ノアは安全な場所にいてもらおう」
ミリアが周囲を確認する。
「近くに使われていない建物がある。そこなら一時的に隠れられる」
四人は建物へ向かう。
だが、その途中。
ルーカスが足を止めた。
「……待って」
「どうした?」
ジェイクも止まる。
ルーカスは工場の方を見る。
遠くに見える巨大な建物。
その上空で、何かが点滅している。
赤い光。
一度。
二度。
三度。
ミリアが端末を確認する。
「通信信号が強くなってる」
「工場から?」
「そう」
ルーカスは拳を握る。
工場の中で、何かが動いている。
「……急いだ方がいい」
三人はノアを安全な建物へ送り届ける。
ノアが振り返る。
「気をつけて」
ジェイクが笑う。
「任せろ」
ルーカスも頷く。
「お父さんを探してくる」
そして三人は再び工場へ向かって歩き始めた。
まだ工場の内部には入らない。
その前に、周囲の状況を確認する必要がある。
ルーカスたちは慎重に歩を進める。
やがて――
巨大なフェンスが見えてきた。
その向こうに、第七自動化工場が姿を現した。
第21話 完




