第2話「生き残るための選択」
街は、地獄と化していた。
昨日まで人々を助けていたロボット。
その存在が、今は人間を追い詰めている。
「走れ!!」
ジェイクの叫び声。
ルーカスは必死に足を動かしていた。
後ろから聞こえる機械音。
ガシャン。
ガシャン。
暴走した警備ロボットが、二人を追ってくる。
「なんで……」
ルーカスは息を切らしながら呟く。
「なんで急にこんなことになったんだよ……」
ジェイクは答えられない。
誰にも分からない。
原因も。
目的も。
ただ分かることは一つ。
今まで味方だった機械が、敵になった。
二人は路地へ入り、建物の陰に隠れる。
「……行ったか?」
ジェイクが息を整える。
ルーカスは壁にもたれかかる。
足が震えていた。
怖い。
本当に怖い。
「俺……何もできなかった」
学校でロボットが暴れた時、逃げることしかできなかった。
「当たり前だろ」
ジェイクが言う。
「相手は機械だぞ?俺達は高校生だ…戦えるわけない」
その言葉に、ルーカスは黙る。
確かにそうだった。
映画や物語の主人公みたいに、突然強くなるわけじゃない。
目の前で命の危険が迫れば、逃げたくなる。
それが普通だった。
「でも……」
ルーカスは街を見る。
遠くで、ロボットから逃げる人々。
助けを求める声。
「このまま逃げ続けるしかないのか?」
ジェイクは答えられなかった。
その時。
近くの建物から音が聞こえた。
ガタン。
二人は身構える。
「ロボットか……?」
ゆっくり扉が開く。
そこから出てきたのは――
一人の女性だった。
「君達……学生?」
20代前半くらい。
手には工具。
「生きてる人間がいた……」
女性は安堵した表情を見せる。
「私はミリア!!機械整備の仕事をしている」
ルーカスは女性の持つ工具を見る。
「整備士……?」
ミリアは頷く。
「そう、だから分かる」
彼女は街を見る。
「これは故障じゃない、ロボット自身が、何かに書き換えられている」
ルーカスの表情が変わる。
「書き換え……?」
「何者かが、ロボットだけに届く信号を送った可能性がある」
ジェイクが驚く。
「じゃあ……誰かがロボットを操ってるってことか?」
ミリアは首を振る。
「まだ分からない。でも、一つだけ確かなことがある。このまま逃げていたら、いつか捕まる」
沈黙。
ルーカスは拳を握る。
でも、まだ怖い。
戦う覚悟なんてない。
その時。
遠くから巨大な音が響いた。
ドォォォン!!
大型ロボットが建物を破壊している。
その姿を見て、ルーカスは息を飲む。
あれは知っているロボットだった。
数年前。
街の災害現場で活躍した救助ロボット。
多くの人を助けた英雄。
しかし今は――
人間を襲う怪物になっていた。
「……あいつ…人を助けてたのに」
ルーカスの胸が苦しくなる。
ミリアが言う。
「ロボットが悪いわけじゃない!何かが、そうさせている」
その言葉を聞いた瞬間。
ルーカスの頭に父親の言葉が蘇る。
『もし機械が間違った道へ進んだ時』
『止める人間が必要になる』
「父さん……」
ルーカスは呟く。
もしかしたら。
父親はこの未来を知っていたのではないか。
その夜、
ルーカス達は安全な場所を探しながら移動する。
しかし、街の全てが敵になった今。
逃げ場所など、どこにもなかった。
そしてルーカスはまだ知らない。
自宅の地下深く。
10年間眠っていた父親の研究施設が、
異常信号を検知して起動していることを。
第2話 完




