第1話「機械が牙をむく日」
「ルーカス、また機械見てただろ」
学校へ向かう道。
少年が呆れたように言った。
ジェイク・ハワード
17歳。
ルーカスの幼馴染で親友。
「少しだけだよ」
答えた少年。
ルーカス・レイン
17歳。
機械いじりが好きな普通の高校生。
「お前、本当に機械好きだよな」
「父さんの影響かな」
ルーカスは空を見上げる。
父親。
アレン・レイン。
世界的なロボット研究者。
10年前。
突然、姿を消した。
理由は分からない。
ただ最後に言われた言葉だけが、今でも残っている。
『ルーカス』
『機械を恐れる必要はない』
『でも、もし機械が間違った道へ進んだ時……』
『誰かが止めなければならない』
当時のルーカスには理解できなかった。
しかし、その日。
父親の言葉の意味を知ることになる。
昼休み。
学校。
いつも通りの時間。
生徒達は笑い、教師は授業をしている。
廊下では清掃ロボットが動いている。
『清掃を開始します』
誰も気にしない。
いつもの光景。
その瞬間。
ピタッ。
清掃ロボットが停止した。
「……?」
一台だけではない。
校内にある全てのロボットが止まる。
教室。
廊下。
体育館。
「故障?」
誰かが言った。
数秒後。
全てのロボットが同時に起動する。
しかし。
様子がおかしい。
清掃ロボット。
警備ロボット。
案内ロボット。
全ての目が赤く光る。
『新規信号を確認』
機械音声が響く。
『行動目的を再設定』
ルーカスは違和感を覚える。
「……何だ?」
その瞬間。
廊下から大きな音。
ドンッ!!
警備ロボットが、生徒を押し飛ばした。
「え……?」
誰も理解できない。
昨日まで。
人を守っていた機械。
それが突然、人間を攻撃した。
『安全確保を開始します』
ロボットが近づいてくる。
「逃げろ!!」
誰かが叫ぶ。
その言葉で、学校中がパニックになる。
悲鳴。
逃げ惑う生徒。
倒れる机。
ルーカスは動けなかった。
目の前にいるのは、ただの機械。
なのに。
怖い。
「なんで……」
「なんでこいつが……」
ジェイクがルーカスの腕を掴む。
「ルーカス!!」
「今は考えるな!」
「逃げるぞ!!」
ルーカスは我に返る。
そうだ。
戦えるわけがない。
自分はただの高校生だ。
拳で機械に勝てるわけがない。
二人は走る。
廊下を抜ける。
階段を下りる。
後ろからロボットの足音。
ガシャン……。
ガシャン……。
近づいてくる。
ルーカスは振り返らない。
怖かった。
助けたいと思っても。
体が動かなかった。
「俺……」
「何もできない……」
ジェイクは答えない。
ただ走る。
二人は何とか校舎外へ脱出する。
しかし。
外の景色を見て、言葉を失った。
街でも。
同じことが起きていた。
救助ロボットが暴走。
配送ロボットが道路を封鎖。
警備ロボットが人々を襲う。
世界中のロボットが、人間の敵になっていた。
原因は分からない。
ただ。
全てのロボットが、同じ瞬間に未知の電波を受信していた。
人間には届かない。
ロボットだけが受け取った信号。
その正体を知る者は、まだいない。
ルーカスは燃え上がる街を見る。
「昨日まで……」
「普通だったのに……」
その日。
少年の日常は壊れた。
そして彼はまだ知らない。
この絶望の中で。
自分が機械との戦いに巻き込まれていくことを。
⸻
第1話 完




