第19話「出発の準備」
地下研究施設。
訓練を終えたルーカスは、壁に背を預けて座っていた。
「……疲れた」
ジェイクが床に座りながら笑う。
「そりゃそうだろ。何時間やってたと思ってるんだ」
「まだ全然、思った通りに動けない」
ルーカスはブレイカーを見る。
「こいつを使いこなすには、もっと鍛えないとな」
ミリアは端末を操作していた。
画面には街の地図と、一つの施設が表示されている。
「少し調べてみた」
ルーカスとジェイクが近づく。
「第七自動化工場?」
ミリアが頷く。
「以前は、医療用や災害救助用のロボットを製造していた施設みたい」
ジェイクが地図を見る。
「今は?」
「施設は閉鎖されている。でも、通信設備は動いてる」
ミリアが別の画面を開く。
「それに、ここから特殊な信号が発信されている」
ルーカスが画面を見る。
「暴走ロボットと同じ信号?」
「完全に同じとは言えない。でも、かなり似ている」
ジェイクが腕を組む。
「だったら、調べに行くしかないな」
ルーカスは頷いた。
「そうだな」
ミリアが地図を拡大する。
「ここから歩いて数時間かかる。途中の道路も安全とは限らない」
「車は?」
「使えそうなものを探す必要があるわね」
ジェイクが立ち上がった。
「じゃあ、まず必要なものを集めよう」
三人は研究施設の中を探し始めた。
水。
食料。
救急用品。
工具。
必要最低限の物をバッグへ詰めていく。
ジェイクは工具箱を持ち上げた。
「これも持っていく」
ミリアが見る。
「何に使うの?」
「ロボットを殴る」
「それ、工具の使い方じゃないと思うけど」
「使えるものは何でも使うんだよ」
ルーカスが笑う。
「ジェイクらしいな」
「だろ?」
三人の準備が進んでいく。
その途中、ルーカスは研究室の棚に置かれた資料を見つけた。
一枚を手に取る。
そこには、父親の名前が記されていた。
「……父さん」
資料には、複数のロボット施設について記録されている。
その中に、第七自動化工場の名前もあった。
ルーカスは資料を読み進める。
「父さんも、この工場に関わってたみたいだ」
ミリアが資料を見る。
「アレン博士は、ロボットの安全システムに関する研究をしていたみたいね」
「じゃあ、暴走する前のロボットも知ってたのか」
「おそらく」
ジェイクが資料を覗き込む。
「だったら、工場に行けば何か分かるかもしれないな」
ルーカスは資料をバッグへ入れた。
「ああ」
その時。
施設の照明が一瞬だけ消えた。
パッ。
すぐに明かりが戻る。
「停電?」
ジェイクが周囲を見る。
ミリアは端末を確認した。
「違う」
「じゃあ何だ?」
ミリアの表情が変わる。
「通信信号が強くなってる」
画面には、第七自動化工場の位置が表示されていた。
「さっきより強い……」
ルーカスが画面を見る。
「向こうで何か起きてるのか?」
「分からない」
ミリアが首を振る。
「でも、何かが動いているのは確か」
ジェイクがバッグを背負う。
「だったら、早い方がいい」
ルーカスも立ち上がった。
「明日、出発しよう」
「うん」
ミリアも準備を続ける。
三人は研究施設の中で最後の確認を始めた。
外の世界は、もう以前の街ではない。
ロボットが人間を襲っている。
人間の中にも、何かを企んでいる者がいる。
そして、その原因へ繋がっているかもしれない工場がある。
ルーカスはブレイカーを見つめる。
「……何が待ってるんだろうな」
ジェイクが隣に立つ。
「行ってみれば分かるさ」
「そうだな」
ミリアが荷物を持ち上げる。
「今日はしっかり休みましょう」
「了解」
三人は明日の出発に備える。
第七自動化工場へ向かうために。
第19話 完




