第18話「残された端末」
武装集団が撤退した後。
地下研究施設には、戦闘の跡が残っていた。
床には倒れた椅子や壊れた機器。
ルーカスは入口を見つめている。
「……逃げられたな」
ジェイクが肩を回す。
「仕方ないだろ。あの人数を追いかけるのは危険すぎる」
「分かってる」
ミリアは床に落ちていた小型端末を拾い上げた。
「でも、これを残していった」
「何か分かりそうか?」
「調べてみる」
ミリアは研究室の端末に接続する。
画面に大量のデータが表示された。
「パスワードがかかってる」
ジェイクが覗き込む。
「壊せば?」
「そんな簡単に言わないで」
「悪い」
ミリアはしばらく操作を続ける。
すると、一つの画面が開いた。
「入れた」
ルーカスとジェイクが近づく。
そこには複数の通信記録が並んでいた。
【通信記録】
【接続先:不明】
【通信対象:機械端末】
【送信状態:完了】
ルーカスが眉をひそめる。
「機械端末……?」
ミリアがさらに記録を開く。
「この通信、普通の無線通信とは違う」
「どう違うんだ?」
「人間が使う通信機器を対象にしてない」
ルーカスは昨日からの出来事を思い出す。
突然暴れ始めたロボット。
人間には聞こえないような何か。
そして、暴走したロボットたち。
「……ロボットに向けて送ってる?」
ミリアはすぐには答えなかった。
「可能性はある」
ジェイクが端末を見る。
「じゃあ、誰かがロボットに命令を送ってるってことか?」
「まだ分からない」
ミリアが通信記録を確認する。
「でも、この端末から何かを送っていたことは確か」
その時。
端末が突然点滅した。
ピッ。
【受信】
三人が固まる。
「今、何か来た」
ミリアが画面を見る。
「待って……」
画面に一行の文字が表示される。
【通信経路を確認】
そして、その直後。
【接続を終了】
画面が暗くなった。
「……切られた?」
ジェイクが周囲を見る。
「誰かに見られてたのか?」
ミリアは端末を調べる。
「分からない」
ルーカスは拳を握る。
敵が自分たちの存在を把握している。
それだけは確かだった。
「このままじゃ、また襲われる」
ジェイクが頷く。
「だったら強くならないとな」
ルーカスはブレイカーを見る。
「うん」
ミリアが研究施設の奥にある訓練装置を起動する。
「ここにブレイカー用の訓練設備がある」
壁の一部が開く。
その奥には、広い訓練スペースがあった。
床には複数のセンサー。
壁には機械式のターゲット。
ルーカスが中へ入る。
「これを使えば、ブレイカーを使いこなせる?」
「少なくとも、今よりは」
ジェイクが笑う。
「じゃあ、やってみようぜ」
ルーカスは頷く。
「まずは普通に動いてみる」
ブレイカーを起動する。
カチッ。
青い光が腕を包む。
【訓練モード】
【開始】
目の前のターゲットが動き始める。
ルーカスが構える。
ターゲットが突然、横へ移動した。
「速い!」
ルーカスが拳を振る。
空振り。
次のターゲットが背後から迫る。
「うわっ!」
ルーカスは慌てて振り返る。
間に合わない。
ターゲットが肩へ接触する。
ピッ。
【失敗】
ジェイクが笑う。
「おいおい。さっきロボット相手にあれだけ動けたのに」
「うるさい!」
「でも、実戦より難しくないか?」
「……確かに」
ミリアがデータを確認する。
「ブレイカーが動きを補助する前に、ルーカス自身が反応しないといけないみたい」
「つまり、俺自身の反応速度を上げろってことか」
「そう」
ルーカスはもう一度構える。
「じゃあ、何度でもやる」
訓練が始まった。
一回。
失敗。
二回。
失敗。
三回。
また失敗。
それでもルーカスは立ち上がる。
「もう一回」
ジェイクが笑う。
「その調子だ」
ミリアも静かにデータを記録していく。
一方。
研究施設から遠く離れた場所。
暗い部屋の中で、一台の端末が点灯した。
【ブレイカー適合者:活動継続】
画面には、ルーカスたちがいる施設の位置が表示されている。
だが、そこにいる人物の姿は見えない。
「まだ力を使いこなせてはいないか」
低い声だけが響く。
画面が消える。
そして再び、暗闇に戻った。
第18話 完




