第15話「戦いの後」
地下研究施設。
四体の暴走ロボットを倒した後、研究室には静かな時間が戻っていた。
ルーカスは壁に背を預けて座っている。
両手には、まだブレイカーが装着されていた。
「……疲れた」
隣ではジェイクも床に座り込んでいた。
「そりゃ疲れるだろ。昨日からまともに休んでないんだから」
「ジェイクも肩、大丈夫か?」
「これくらい平気だって」
そう言いながら肩を押さえる。
ミリアが救急箱を持って近づいてきた。
「平気な人は、そんな顔しない」
「いや、本当に――」
「座って」
「……はい」
ジェイクが素直に座る。
ルーカスは思わず笑った。
「昔からそういうところ変わらないな」
「うるせえな」
「何年の付き合いだと思ってるんだよ」
「まあな」
二人は顔を見合わせて笑う。
ミリアはそんな二人を見ながら、少し不思議そうにしていた。
「二人って、本当に昔から仲がいいのね」
「まあ、昔からの友達だからな」
ジェイクが答える。
「こいつとは結構長い付き合いだよ」
ルーカスも頷く。
「まさか、こんな状況で一緒に戦うことになるとは思わなかったけど」
「俺もだよ」
ジェイクが笑う。
「昨日までは普通に学校生活してたんだからな」
その言葉で、三人の表情が少し曇る。
学校。
普通の日常。
それはもう、戻ってこないかもしれない。
ミリアが包帯を結び終える。
「これでいいわ」
「ありがとう」
ジェイクが肩を回す。
「お、少し楽になった」
「無理に動かさないで」
「分かってるって」
ルーカスはブレイカーを見つめる。
「これ……もっと使えるようにならないとな」
ミリアが端末を操作する。
「戦闘データを確認してみる」
画面に記録が表示される。
【装着時間:8分41秒】
【身体負荷:高】
【神経負荷:危険域】
「やっぱり……」
「かなり危なかった?」
ルーカスが聞く。
「ええ。ブレイカーが身体を補助してくれていたから戦えたけど、今のまま長時間使うのは危険」
ジェイクが腕を組む。
「だったら鍛えればいい」
「鍛える?」
「体力とか、反応速度とかさ」
ジェイクはルーカスを見る。
「お前、昔から運動するときは結構しぶとかっただろ」
「それとこれとは違うだろ」
「でも、やらないよりマシだ」
ミリアが研究資料を調べる。
「……待って」
「何かあった?」
「訓練プログラムが残ってる」
画面に項目が表示される。
【基礎体力訓練】
【反応速度訓練】
【打撃訓練】
【回避訓練】
【ブレイカー適合訓練】
ルーカスは画面を見つめる。
「父さんが残したのか……」
「おそらく」
ミリアが頷く。
「ブレイカーを使う人間のために作られたものだと思う」
ルーカスは立ち上がる。
「やろう」
ジェイクも立ち上がる。
「もちろん俺も付き合う」
「お前はブレイカー使わないだろ」
「俺だって戦えるようにならないとな」
ジェイクは拳を握る。
「さっき、お前に任せるしかなかったのが悔しかったんだよ」
ルーカスは少し驚いた。
そして笑う。
「分かった。一緒に強くなろう」
「おう」
ミリアも端末を見ながら頷く。
「私は、この施設の研究資料を調べる。次に何が起きるのか分からないから」
「頼む」
三人がそれぞれ動き始めた。
その時だった。
ゴゴゴゴゴ……
地上から振動が伝わってくる。
三人が一斉に顔を上げた。
「……何だ?」
ミリアが監視カメラを確認する。
画面に映ったのは、ルーカスの家の前。
複数の車が停まっている。
そこから降りてきたのは――人間。
武器を持った集団だった。
ジェイクの表情が変わる。
「ロボットじゃないぞ」
「……人間?」
ミリアが画面を拡大する。
集団の一人が家の中へ入っていく。
ルーカスは黙って画面を見つめた。
「何のためにここへ?」
ミリアが研究施設のデータを確認する。
「分からない。でも、あの人たちが来た直後から、この施設へのアクセスを試みている」
ジェイクがルーカスを見る。
「父さんの研究を狙ってるのか?」
「……たぶん」
ルーカスは拳を握る。
ロボットだけではない。
人間の中にも、この事件に関わっている者がいる。
そして今、その人間たちが父親の研究施設へ迫っていた。
「行こう」
ルーカスが立ち上がる。
「何か分かるかもしれない」
ジェイクも頷く。
「よし」
ミリアも端末を閉じる。
三人は地下研究施設の奥へ向かう。
第15話 完




