第14話「遠くから見ている者」
地下研究施設に静寂が戻っていた。
床には四体の暴走ロボットが倒れている。
ルーカスは自分の両手を見つめた。
黒いグローブ――ブレイカー。
まだ装着したばかりなのに、すでに身体には強い疲労が残っている。
「……これ、かなり体力を使うな」
「当然よ」
ミリアがブレイカーを見る。
「普通の人間が扱えるような装備じゃないもの」
ジェイクも倒れたロボットを見る。
「でも、あれだけのロボットを倒せたんだ。すげえよ」
ルーカスは苦笑する。
「二人がいたからだよ」
その時。
研究室のモニターが再び点灯した。
【遠隔観測を確認】
三人の表情が変わる。
「まだ動いてる……」
ミリアが端末を操作する。
「待って。記録を確認する」
画面には大量のデータが流れていく。
「この施設の通信回線を使って、外部へデータが送信されてる」
「止められる?」
「やってみる」
ミリアはキーボードを操作する。
しかし、画面に赤い文字が表示された。
【アクセス拒否】
「……駄目」
「施設の管理権限でも切れないの?」
「この通信だけ、別の回線を使ってるみたい」
ルーカスがモニターを見る。
「つまり、誰かがこの施設の中に仕掛けを残してたってこと?」
「たぶん」
ミリアが答える。
「でも、誰が何のために?」
その答えは、すぐには出なかった。
ジェイクが研究室を見回す。
「もしかして、アレン博士が仕掛けたんじゃないのか?」
ルーカスは首を振った。
「分からない」
父親の研究施設。
そこに残された謎の通信。
そして、自分たちの戦闘を監視していた何者か。
一つ一つは小さな手掛かり。
だが、全てが同じ事件に繋がっているように思えた。
ミリアが突然、画面を指差した。
「これ……」
「何?」
「送信先が分かった」
画面には一つの地点が表示されていた。
研究施設から遠く離れた場所。
「場所は?」
ミリアが地図を拡大する。
「……ここ」
表示された場所を見て、ジェイクが驚く。
「ロボット工場?」
そこには巨大な施設があった。
現在も稼働しているらしく、周辺から大量のロボットが出入りしている。
「こんなところが残ってたのか……」
ルーカスは地図を見つめる。
ミリアが続ける。
「ただの工場じゃないと思う」
「どうして?」
「この施設から、暴走ロボットと同じ通信信号が出てる」
ルーカスの表情が変わる。
「じゃあ……」
「ここから何かが送られている可能性がある」
ジェイクが拳を握る。
「だったら、そこを調べればいい」
しかしミリアは首を振った。
「今の私たちじゃ無理よ」
「どうして?」
「今のルーカスはブレイカーを使ったばかり。ジェイクも怪我をしてる。私だって戦えるわけじゃない」
ルーカスは黙り込む。
確かにその通りだった。
敵が何体いるのかも分からない。
工場の中に何があるのかも分からない。
今すぐ向かえば、同じことを繰り返す可能性が高い。
「……準備が必要だな」
ルーカスが言う。
ジェイクが頷く。
「武器も食料も必要だ」
ミリアも頷く。
「それと、この施設についてもっと調べる必要がある」
三人は研究室を見回した。
まだ見つけていない資料が大量にある。
父親が何を残したのか。
それを調べれば、これから向かう場所についても何か分かるかもしれない。
その時。
モニターに新しい文字が表示された。
【遠隔観測終了】
そして最後に、一つだけ表示される。
【ブレイカー確認】
ルーカスの表情が険しくなる。
「……俺たちを見ていた奴は、ブレイカーを知ってる」
誰かが、自分たちの存在を把握している。
それだけは確かだった。
そして地上では。
遠く離れた施設の一室で、一人の人間がモニターを見つめていた。
画面にはルーカスの姿。
その手には黒いブレイカー。
「……見つかったか」
男は静かに呟く。
「アレン・レインの息子が……」
モニターが暗くなる。
第14話 完




