『毎晩チートで満たす。みんな俺の嫁』
七海がキーを叩く。また一つ、物語が綴られてゆく。
* * *
ガシャーン、と金属の音が響いた。気づけば俺は、宙を舞っていた。仕事帰り、横断歩道、突っ込んできたトラック。ああ……俺、死んだのか。
「お前、死んだ割には淡々としとるなァ」
目の前に立っていたのは、白いローブをまとった初老の男。背中には羽……?まさか、神様?
「手違いで魂を運んじまった。オマケにチートをつけてやる。“抱けば強くなる”。そういう力だ」
「は!?なにその仕様!?」
問いただす間もなく、視界が白く弾けた。
* * *
「……ご目覚めですか、主様」
耳元で、柔らかい声。目を開けると、豪奢な神殿の天蓋ベッド。そして、すぐ目の前に──金髪の清楚な美女が跪いていた。
「私はセレスティア。この世界の巫女です。神託により……あなたに子を授かることが、私の使命」
「えっ、いきなり!? 俺、死んで5分なんですけど!?」
「べ、別にあんたに抱かれたいわけじゃないんだから!でも……神様の命令だから……仕方なく……!」
横から割って入ってきたのは、狐耳を揺らす少女。銀髪の巫女装束に、赤い顔。尻尾がぶんぶん揺れている。
「ミナリス、あなたは出すぎです!」
「うっさい清楚ぶり女!」
「まあまあ……お二人とも、落ち着いてくださいませ」
今度は、落ち着いた声。黒髪を結い上げた爆乳メイドが、やわらかな微笑みで身を屈めてきた。その谷間に視線を持っていかれそうになる。
「坊ちゃま……初夜は、どうぞ私にお任せを。お身体も、心も……全部包んで差し上げます♥」
「いやちょっと待て! なんで俺、転生5分でハーレム修羅場!?」
三人の美女に同時に迫られ、俺はベッドの上で完全にフリーズしていた。これが……異世界転生ってやつなのか……?天蓋ベッドの上、俺は完全に挟まれていた。右に金髪巫女セレスティア。左に狐耳巫女ミナリス。足元には爆乳メイドのクラリス。……これ、どんな拷問だよ!?
「主様、どうか……神託通り、私を最初に」
セレスティアは潤んだ瞳で俺を見上げる。
「私こそが、最も正統な“儀式の相手”。そう決まっているのです」
「な、なんでそんなことになるのよっ!べ、別にあんたのこと好きじゃないしっ……でも、最初は……っ、わ、私が!」
ミナリスは尻尾をばさばさ揺らしながら顔を真っ赤にする。
「まあまあ、お二人とも落ち着いて。坊ちゃまが困っておいででしょう?」
クラリスは大人の余裕で微笑む。胸を押し当ててきて、低い声で囁く。
「……初めての儀式は、経験豊富な私にお任せくださいませ。坊ちゃまのお身体……全部教えて差し上げますわ」
三者三様の誘惑に、俺の脳内はショート寸前。しかも、さっき神様に言われたチート能力──
「抱けば強くなる」
つまり、誰を選んでも強化される。でも最初は……ひとりだけ。
「さあ……主様」
「……どっちにするのよ」
「坊ちゃま……」
三人の美女が同時に手を差し伸べてくる。俺は、喉を鳴らして息を飲んだ。
「──それでは、公平に順番を決めましょう」
クラリスが小さな木片を三つ用意した。
「一つだけに赤印がございます。引き当てた方が、最初の“誘惑アピール”権を」
三人は一斉に手を伸ばす。ぱっと開いた瞬間──
「……っ、わ、私ですか」
セレスティアの掌に、赤印が刻まれていた。
「ちょ、ちょっと!? 清楚ぶり女が最初なんて、ずるい!」
ミナリスが狐耳をぴんと逆立てて抗議する。
「順番は順番ですわ」
クラリスは余裕の微笑み。蝋燭に照らされる神殿ベッドの前。セレスティアは胸の前で手を組み、静かに歩み出る。金髪が揺れ、蒼い瞳が俺を射抜く。
「主様……どうか、今夜は私をお選びください」
「お、俺を……?」
「はい。これは神託で定められたこと。私はあなたに抱かれ、子を授かるために、この世に生まれました」
(やばい……真顔でそんなこと言われたら、こっちのメンタルがもたない……!)
* * *
彼女は震える指先で自らのローブの裾を持ち上げる。雪のように白い太腿があらわになり、光を受けて艶めく。
「清らかであることを誇りにしてきました。けれど……今宵からは違います」
恥じらうように視線を逸らし、けれど確かに近づいてくる。やがて俺の前に膝を折り、手を取り、その甲に唇を落とした。
「私は……主様だけの女になります」
その仕草に、背後でミナリスが尻尾をぶんぶん振りながら叫ぶ。
「な、なに清楚ぶってんのよ! そ、そんなこと言っても騙されないんだから!」
「坊ちゃま……比べるまでもありませんわね」
クラリスは艶めかしく微笑んで胸を揺らす。
(あああ……胃が社畜時代より痛い!けど心臓は爆速で走ってる! これ……どうすればいいんだ……!?)
* * *
「次は私の番よね!」
ミナリスが勢いよく手を挙げた。狐耳がぴんと立ち、尻尾がぶんぶん揺れている。
「公平に、と言いましたでしょう?」
クラリスが涼やかに微笑み、もう一度木片を差し出す。三人が同時に引き、開いた瞬間──
「……っ、赤印……!ほら見なさい、次は私でしょ!」
ミナリスが得意げに木片を掲げた。蝋燭の灯りの下、ミナリスはもじもじしながら俺の前に立った。口では強がっているのに、銀髪が揺れ、耳はぴくぴく震えている。
「べ、別に……抱かれたいとか、そんなんじゃないんだから!でも……神様の命令だから、し、仕方なくよ!」
頬を真っ赤にしてそっぽを向きつつ、尻尾だけは俺の腰に絡みついてくる。
「それに……あたしとあんたは、一緒に育ってきたんだから……。最初の相手が、知らない女なんて……そんなの、イヤでしょ?」
耳が恥ずかしそうにしゅんと伏せられる。視線は泳ぎながらも、必死にこちらを覗き込んでくる。ちょっと……おれ幼馴染でもなんでもないんだけど……! そういう設定ってことなの……!
「……っ、だから……最初は……あたしが、いいの」
その瞬間、背後でセレスティアが小さく呻いた。
「ず、ずるい……幼馴染という立場を利用するなんて……!」
クラリスは穏やかに笑みを浮かべて肩をすくめる。
「まあまあ。こうして順番に、坊ちゃまを惑わせるのも楽しいでしょう?」
「さて……いよいよ私の番ですわね」
クラリスが優雅に微笑み、木片を開いた。赤印。
「ご覧の通り。坊ちゃまへのアピール権、最後は私にございます」
「ずるい……」
セレスティアは唇を噛み、蒼い瞳に焦りをにじませる。
「べ、別に! どんな手を使っても負けないんだから!」
ミナリスは耳と尻尾をばさばささせて抗議する。蝋燭の明かりに照らされながら、クラリスはゆったりと俺の隣に腰を下ろした。黒髪を解き、眼差しをやわらかく細める。
「坊ちゃま……初めては、どうか私にお任せくださいませ」
低い声が、耳に心地よく響く。そして──むちむちとした豊満な胸を、ゆっくり俺の腕に押し当ててきた。
「坊ちゃまのお身体も、心も……全部、私が受け止めます」
甘い香り。温もり。大人の余裕。一気に包み込まれたような安心感が、全身を痺れさせる。クラリスは俺の手を取り、自分の頬へ導く。そのまま、胸元の柔らかい感触をわざと触れさせるように寄せてくる。
「大丈夫……怖くありません。もし痛みがあるのなら、私がすべて引き受けて差し上げます。坊ちゃまは、ただ私に身を委ねてくださればいいのです」
背後で、セレスティアが小さく呻いた。
「……大人の余裕で惑わせるなんて……」
ミナリスは耳を真っ赤にしながら叫ぶ。
「ちょっ、そんなの反則でしょ!ズルい爆乳女!」
クラリスは二人の抗議を受け流し、ただ俺だけを見つめて囁いた。
「さあ……坊ちゃま。お選びくださいませ」
(……ちょ、ちょっと待て。これ、誰を選んでも最高すぎるやつじゃん……!)
* * *
【グループチャット】
瑞希:あのー七海ちゃん、これは……?
七海:いかがでしたでしょうか?
飛鳥:説明して?
七海:……小説投稿サイトにチャレンジしてみようと思いまして。その下書きです。
瑞希:ええええ!? いつのまにそんなことを!?
飛鳥:うーん……悪くはない。悪くはないんだけど……。
七海:指摘いただけると嬉しいです。真摯に受け止めますので。
飛鳥:よくある展開をなぞりすぎじゃない?トラック転生して、チートもらって、美女三人にモテて……って、こういうの別に転生ものでもいいんだよ?でもそこに本気で書きたいことがないと。『鏡の夜に咲く人』にはそれがあったと思うよ。
七海:そう言われますと……確かに。どこかで雰囲気ウケだけを考えていたのかもしれません……。
飛鳥:じゃあさ、七海がほんとに書きたいテーマ、もっと自由に書いてみたら?真面目でもふざけてても、七海の“熱”が入ったも のが読みたいな。そっちの方が絶対読者に届くって。
七海:……了解です、飛鳥さん。ありがとうございます。もういちど、書きたいものと向き合ってみます!
瑞希:飛鳥せんせい、かっこいい……完全に敏腕編集者じゃん……。




