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飛鳥、虎になる~おひらき

 グラスに注がれたスパークリングの泡が、さっきより少し速く昇っている。シャンパンはすでに空き、今は七海が選んだ白ワインがテーブルに回っていた。ほほを赤らめた瑞希が、プリンのスプーンをひと口食べては、

「しあわせ〜」

 と笑っている。七海は変わらず穏やかな微笑みだが、グラスの持ち方がいつもよりゆるい。そして――飛鳥。

「なあああ、ちょっと聞いてよぉ……」

 飛鳥が、ソファに体ごと預けるようにしながら、スカートの裾を気にせず足を投げ出していた。目が潤んで、頬は真っ赤。

「このあいだのコンパ、あたし数合わせで呼ばれてさぁ……」

「え?あのときの?」

 誠が振り向く前に、瑞希が食いつく。

「そしたらさ、まことのやつ、女の子にめっちゃデレデレしてたんだよ?ひどくない?」

「ええ〜!?それはダメだよ〜〜!」

 瑞希が両手で頬を覆う。

「……ダメですね、それは」

 七海の声もすこしだけ低い。誠はあわてて手を振る。

「ま、待って、それは違――」

「だから、わたし言ってやったの!」

 飛鳥がグラスを机にドンと置いて立ち上がった。やばい。完全にスイッチが入ってる。

「この人と!交際してる彼女です!!って!!!」

「ええええええ!?!?」

 瑞希がスプーンを取り落としそうになる。

「それ、言わない約束だったんじゃ……」

 七海も、珍しく眉をひそめる。

「本当ですか、誠さん」

 声のトーンは静かだけど、目だけ真剣。

「ち、ちがうから!あのとき飛鳥、酔っ払ってたし!あることないこと……!」

「なにがないんだよおおおおっ」

 飛鳥が突如、ソファの上で仁王立ち。視線がぐらぐらしてる。グラスはまだ手に持ってる。

「現につきあって!いっぱいいちゃいちゃして!いっぱいえっちしてるじゃんかよぉおお!」

「うわー、虎になってるよー!!」

 瑞希が叫んで、七海がスッとグラスを回収する。

「落ち着いてください飛鳥さん、ね?ここは公の場です」

「うちだよ!?!?ぜんぜんプライベート!!!」

 誠は顔を覆いながら笑う。

「……いやもう、誰か止めてほんと」

「でも、かわいー」

「うん、酔うと甘えるんだよね飛鳥ちゃん」

「うるさいうるさいっ、あたしはただの戦士!!」

「え、それ言うとヒロインじゃないのでは……?」

 笑い声。誰かがソファに転がって、誰かがクッションを投げた。音楽もないのに、空間が賑やかに響いていた。そして誠は、その“うるさくて幸せな場所”の真ん中で、心から、笑っていた。

 

 ***

 

 まだ誰もグラスを下げないまま、飛鳥がソファの背もたれに片膝立て、虎モードを継続していた。

「なあ~~みんなも話してよおお!!」

 声がでかい。目が据わってる。

「まことの!許せないとことか!逆にここ好き~ってとことか!幸せだったデートとか!えっちの気持ちよさとかさああ!!」

「えっち混ぜるな危険!!!」

 瑞希が即座にツッコミながら、クッションを投げた。

「飛鳥ちゃん、ど、どうどうっ」

「お水お水、まずお水飲みましょうね」

 七海が立ち上がってキッチンへ向かう。完全に保護者モード。

「はい!じゃあ七海から話しなさい」

「命令!?」

 瑞希が身を乗り出す。

「飛鳥ちゃん、目据わってるよ……」

 そして戻ってきた七海が、水のグラスを差し出した直後――

「……わ、わたしですか?ええと、そうですね……」

 一拍の間。

「……コスプレして、えっちしたことでしょうか」

「!?!?!?!?!?」

 誠のグラスが派手に揺れた。

「み、七海さんっ!!?」

「ちょっとおおおおおおおお!!」

 飛鳥が全力で食いつく。

「ち、違うんです!その……!そういう“格好のわたし”も、“愛してくれたこと”が……とても、嬉しくて……!」

 顔が真っ赤。語尾が震えてる。でも、嘘じゃない。愛が溢れてる。

「気持ちは!分かるけど!!」

 瑞希が手で口を覆って叫ぶ。

「爆弾すぎるよ~~~!!」

「まことおおお~~~」

 飛鳥がクッションを抱えて床に転がった。

「えっちなコスプレ七海さんとかさああ!ずるくない!?あたしだって!着たらすごいんだからね!?!?」

「見たい……」

 瑞希がぽそっと呟く。

「わたしも……少し気になります」

「なんでそっち盛り上がってんの!?」

 誠が完全に押されていた。ソファの端でひとり、コップを手にしながら、情けなくも幸せそうな笑顔で。笑い声。誰かが横倒しになって、誰かが抱きついて、誰かがクッションを振り回してる。そのどれもが、好きが止められなくなった人たちの、暴走だった。

 

 ***

 

「わ、わたしだってあるからね!自慢できるやつ!」

 瑞希が、グラス片手にぴょこんと立ち上がる。頬はもうしっかりピンク色。目は潤んで、口元はにやけてる。

「こないだ、新宿デートして――」

「デートぐらい、みんなしてるじゃん」

 飛鳥がすかさず茶々を入れる。横になったまま、クッション抱えて上目遣い。

「ちょ、最後まで聞いてよ!」

 瑞希がクッションを逆投げするが、飛鳥はひらりとかわす。

「たぶん、最高記録だったんだから……!」

「……最高記録?」

 七海が、ゆっくりとグラスを置いて、静かに言葉を繋ぐ。

「どういう意味ですか、誠さん?」

「え、俺に聞くの!?」

 誠が両手を上げてパニック。誰かが笑いを噛み殺しながらテーブルを叩く。

「瑞希のマウントはよくないと思うなあああ」

 虎モード継続中の飛鳥が吠える。

「そんなのわかんないじゃんかぁあ!ちゃんと統計取ったのかよぉ!!」

「なんとなく分かるじゃん!」

「なんとなくで数字語るな!!」

「でもさ……」

 瑞希はふにゃっと笑って、ソファに座り直す。

「“何回”とかじゃなくて……“何回も名前呼ばれた気がする”とか、“いっぱい好きって言ってくれた”とか……そういうの、あるでしょ?」

 その言葉に、一瞬、空気がふっと静かになった。

「……うん、まあ、それは……ある……」

 飛鳥がモゾモゾと口を動かす。そしてうつ伏せでクッションに突っ伏した。

「……言ってたし、まこと、“好き”って……あたしが泣いたとき、頭なでて、……ぎゅってしてくれたし……」

「飛鳥ちゃん寝る前のモード入ってるよ……」

 七海が静かに笑って、ブランケットを差し出す。

「はい、お水。落ち着いて話しましょう」

「まことはぁ……優しいからずるいんだよぉ……」

 飛鳥はもぞもぞしながら、クッションにキスしそうな勢い。誠は、苦笑いしながらも目を伏せた。そして瑞希は、ゆっくりと誠の肩にもたれかかる。

「……でもね、わたしが一番だって思ってるの」

「え?」

「理由なんて、いらないでしょ。……なんとなくだもん」

 その言葉に、誰も反論しなかった。たしかにそれは、数字でも、統計でも測れない、“感情の体感”だったから。

 

 ***

 

 クッションに顔を埋めていた飛鳥が、ふと、体を起こす。目は少し潤んでいて、酔いのせいなのか、感情なのか、分からない。けれど、声は――すこしだけ真面目だった。

「……あのさ、まことがお泊まりした日の、次の朝のことなんだけど」

 みんなの視線が、自然と飛鳥に集まる。

「一緒に、散歩したの。川沿い、夕方で……」

 記憶をたぐるように、言葉が静かに落ちる。

「夕日が、すっごくきれいでさ。ああ……って思ったの。なんか、泣きそうになったんだよ。“いま、幸せだな”って」

 誰も茶化さなかった。その瞬間だけ、空気がひとつ、深く息をしたみたいに静かだった。

「わかります」

 七海が、そっと声を重ねる。

「いっぱい愛し合って……駅で別れるとき、すごく切ない。でも、“これが幸せなんだな”って、わたしも思いました」

 瑞希は、誠の肩にもたれたまま、うんうんと頷いた。

「別れ際に、いつも思う。“あー、好きだな”“愛してるな”って」

「……」

 誠は何も言えなかった。笑いも言葉も、ぜんぶ胸に溜まって、なんだか返すタイミングを、完全に逃してしまっていた。

「……まこと?」

 飛鳥が、クッションを抱きながら振り返る。

「こういう時、なんか言いなよ」

「そ、そうだよ〜、“俺も愛してるよ”って言ってくれないとさ〜」

 瑞希が頬を赤くしながら笑う。七海は、目を細めて微笑む。

「無理に言わなくても……でも、聞けたら嬉しいです」

 誠は――

「……なんも、言えないよ」

 ただ、それだけ呟いた。でも、その声が一番、いまこの空間の“本気”を、語っていた。それを聞いた飛鳥が、小さく笑った。

「……ずるいな、そういうとこ」

 そして、瑞希がくすっと笑って、

「でも好き」

 と呟いた。七海はただ静かに、

「……わたしも」

 と言った。言葉のあとに、少しだけ沈黙があった。でも、それはきっと、いちばん温かい“間”だった。

 

 ***

 

 時間が少しだけ進んで。時計の針は、もうすぐ深夜。ソファの上では、飛鳥がクッションに顔を埋めたまま寝息を立てている。足は投げ出され、毛布は途中までしかかかっていない。でも表情は、どこか安心しているようだった。リビングでは、瑞希がひとり黙々とテーブルの上を片付けていた。キャンドルライトの芯を戻して、小皿をまとめて、グラスを拭いて。キッチンでは、誠が水音を立てながら、皿を洗っていた。すこし熱めのお湯が手に触れて、泡立った洗剤の香りがほんのり立ちのぼっている。そこへ、七海が静かにやってくる。両手に、重ねた白い皿。

「これ、あとお願いしますね」

「おっ、ありがとう。助かる」

 七海は、誠の横に立って、シンクの中を覗き込みながら小さく笑った。

「……今日は、ありがとうございました」

「いや、こちらこそだよ。途中ちょっと慌てた時もあったけど、めちゃくちゃ楽しかった」

「ふふ、ですね。瑞希さんも飛鳥さんも……いい表情をしていました」

 水音の合間に、グラスがカチンと鳴る。

「また、集まりましょうね」

「うん。……ぜひ」

 少しの沈黙。でもそのあとに、七海がすこし小さな声で続けた。

「“また”と言わず、……ずっと、こんな風でいたいですね」

 誠の手が止まった。水は流れたまま、泡がシンクの縁で揺れていた。

「……うん」

 その答えを聞いて、七海はほんのすこしだけ、目元を緩めた。そこへ、背後から声が飛んだ。

「はーいはーい、また出たー!正妻モード〜〜〜!!」

 瑞希がキッチンの扉のところで手を腰に当てていた。

「なにその“ずっと一緒に”って言ってもらえる前提トーク〜〜〜!!」

「どうどう、瑞希さん」

「瑞希さんも正妻でしょ」

「うぅ、でも……悔しい……なんか悔しい……」

 七海が誠に耳打ちするように、

「かわいいですね」

 と微笑む。誠は苦笑しながら、最後の皿をすすいだ。グラスの水滴が、音もなく静かに乾いていく――そんな、深夜のキッチンだった。

 

 ***

 

 深夜。キッチンは片づき、リビングにはもう食器もグラスもない。キャンドルの灯りだけが、まだぼんやりとゆれていた。玄関では、瑞希がバッグを肩にかけて、誠の横に立っている。少しだけおぼつかない足取りだけど、顔はご機嫌。唇の端には、まだ笑いの名残。

「じゃあ、そろそろ……」

 誠が小さく声をかけると、奥の廊下から、七海が歩いてきた。

「お見送りします。瑞希さん、足元お気をつけて」

「大丈夫〜。まーくんがいるから」

「そうですか。それなら安心ですね」

 七海の声は相変わらず穏やかで、でもほんのすこしだけ、目元が眠たそうだった。その背後から――

「おい~~~~」

 聞き覚えのあるだるい声。ソファから転がるように出てきた飛鳥が、ブランケットを引きずりながら、仁王立ちしていた。相変わらず、目は半分閉じている。

「おまえら~~~~今日はまっすぐ帰るんだぞおおおお~~~」

「寝てろ」

「寝なさい」

 誠と瑞希が、同時に突っ込んだ。

「……だって……あとで“やっぱり帰るのやめた”とか言って戻ってくるんだろお……」

「言わない言わない!!」

「そんな漫画みたいなことしないからっ!」

 飛鳥はふらふらと七海の横に寄りかかって、なぜか誠に向かって指をさす。

「……でもなああ……いっぱいいちゃいちゃしてるの、あたし知ってるんだからなあ……」

「酔ってる時の記憶は大丈夫ですか」

 七海が軽く肩を抱いて、飛鳥を支える。

「まったく……」

 誠が額に手を当てる。

「もう、行くよ、まーくん」

 瑞希が小声で笑って、玄関のドアを開けた。

「じゃあ……またね」

「はい。またいつでも。次は……もう少し、夜をゆっくり過ごせるといいですね」

「七海、なんか言い方が大人〜〜」

「いちいち響かせないでください……」

 ふたりの声が重なって、笑いがこぼれた。そして、静かに、ドアが閉まる。廊下の灯りが、その音に呼応するように、そっと揺れた。

 

 ***

 

 夜風が、頬をかすめた。商店街を抜けた先、閉まりかけたシャッターと、深夜営業のラーメン屋の明かりが、ぽつりぽつりと道を照らしていた。誠と瑞希は、言葉少なに並んで歩いている。でも、その沈黙が重いわけじゃなかった。――むしろ、心地よい。酔いの残り香と、甘い疲労感。笑いすぎて喉がからからで、でもまだ、笑っていたい。

「……楽しかったね」

 ふいに、瑞希が言った。

「うん」

 誠も、短く答える。それだけの会話で、この夜の全部が通じ合った気がした。ふたりの足音だけが、タイルの道をコツコツと刻んでいく。

「それにしても、飛鳥ちゃん……すごかったね」

「うん……虎だったね……」

 思い出すだけで笑いがこみ上げて、ふたりとも声を出して笑った。

「明日、大丈夫かな……」

「たぶん……覚えてないフリすると思う」

「ふふっ……するする、ぜったいする……」

 笑いながらも、どこか胸の奥がきゅっと締まる。こんなふうに歩ける時間が、いつまで続くんだろう。この駅に着いて、改札で手を振って、それぞれの家に帰る夜が、あと何回あるんだろう。隣を見ると、瑞希の横顔は優しくて、でもどこか、その頬もほんのりと切なげだった。

「……まーくん」

「ん?」

「ありがと。今日、来ててくれて」

「ううん。こっちこそ」

「……わたし、幸せだったよ」

 その言葉に、誠は、返す言葉を一瞬迷って――でも言葉にするより先に、そっと彼女の手を取った。ほんのすこしだけ冷たかった指が、すぐに、ぎゅっと握り返してくる。何も言わなくていい。今はまだ、この手があるから。ふたりは、夜の街をそのまま、駅へと歩いていった。

 

 ***

 

「さ、飛鳥さん。歯磨きしましょうね」

 そう言いながら、七海は洗面所のライトをぽんと点けた。飛鳥はソファにうつぶせのまま、もぞもぞと身体をくねらせるだけ。

「うーん……」

「だめです。寝る前に歯、磨かないと明日気持ち悪くなりますよ」

「うーん……わかったぁ……」

 重い身体を引きずるように、飛鳥はふらふらと立ち上がって洗面所へ向かった。その背中を見送りながら、七海はくすっと笑う。少しして、洗面所から――

「……あああ、こっちのコップと歯ブラシ、まこと用に置いてるやつだああ……」

 と、半泣きみたいな声が聞こえた。

「……知らなかったぁ……そんなに来てたのかよぉ……」

「ちゃんと磨けてますかー?」

「みがいてるぅぅ……」

 笑いを噛み殺しながら、七海は寝室のベッドに新しいシーツを敷いていた。ふたり分の枕。掛け布団は、少しだけ広げたまま。――こうして誰かと夜を過ごすの、いつぶりだっただろう。何気ない時間。誰かが家にいて、自分の動きに反応してくれる空気。

「こういうの……いいなぁ」

 ぽつりと、ひとりごとのように呟いた。洗面所の水音が止まって、よたよたとした足音が近づいてくる。

「寝ますよー、飛鳥さん」

「……うん……」

「お風呂、一緒に入ります?」

 ちょっとだけ、からかうように明るく聞く。

「いらなーい、もう寝るー……」

「はーい」

 言いながら、七海はリビングの灯りを落とす。飛鳥はごそごそと布団に潜り込むと、そのまま背を向けて小さくまるまった。

「おやすみなさい、飛鳥さん」

「……んー……おやすみぃ……」

 あっという間に寝息が聞こえ始めて、七海はそっと笑った。こんな夜が、また来ますように。そんなことを願いながら。夜が、静かに深まっていく。

 

 ***

 

 タクシーの窓の外、夜の景色がすべるように流れてゆく。街灯、信号、ビルの灯り。全部、パーティの賑やかさとは無関係に回っていて――急に、取り残された気がした。シートに体を預けながら、瑞希は無言で天井を見上げた。車内のモニターに、どこかのコスメCM。

「……終わっちゃったなぁ」

 ぽつりと呟いたそのとき、スマホが震えた。──【誠】

「料理の写真、全然撮ってなかった!勿体ない!」

 思わず、くすっと笑ってしまう。緊張も寂しさも、拍子抜けした。すぐに打ち返す。──【瑞希】

「それだ!」

「あとぜんぶ飛鳥ちゃんが悪い」

 送信。それだけで、なんだか少しだけ楽になった。あの夜の温度が、まだ掌に残ってる気がした。窓の外の景色が、もう少し優しく見えた。

 

 ***

 

 ふと、目が覚めた。時計はとうに深夜をまわっていて、部屋はしんと静かだった。となりでは、飛鳥が寝返りを打っている。布団をはだけて、ぐっすりと無防備な寝相。その寝顔に、ふっと笑ってしまう。七海はそっと布団を抜け出し、キッチンへ。冷たい麦茶をグラスに注ぐと、一口だけ口に含む。喉を伝う冷たさが、かえって胸の奥のぽつんとした空洞を照らし出す。

「……もう、終わっちゃったんですね」

 呟いて、スマホを手に取る。通知が二件。──誠からと、瑞希から。どちらも、他愛のないやりとり。けれどその画面を見つめているうちに、自然と笑みがこぼれた。

「ほんと、仲良しですね……」

 グラスを流しに置いて、また寝室へ戻る。すると――

「まこと……ゆるさん……」

 飛鳥が寝言をつぶやいた。

「……ふふっ」

 しょうもなくて、愛しくて、心がふわりと満ちていく。

「おやすみなさい、飛鳥さん」

 小さく囁いて、七海はもう一度、布団に潜り込んだ。夜は、深くやさしく、再び彼女たちを包んでいった。

 

 【グループチャット】

 

 瑞希:飛鳥ちゃん……すごかったよ……。

 飛鳥:???なにが。

 七海:おはようございます覚えていないんですか?

 飛鳥:え、なに?なにかした……?(こわい)

 瑞希:全部ぜんぶ飛鳥ちゃんのせいだったよ(笑)コンパ暴露→交際宣言→えっち暴露→泣き→寝落ち

 飛鳥:え゛っっ!?!?!?!?!?!?!?

 七海:瑞希さん、あまり刺激しすぎるとまた寝込むのでは……。

 飛鳥:まことにも?まことにもなにか言った……?

 瑞希:「いっぱいえっちしてるじゃんよぉおおお」って。

 飛鳥:死。

 七海:安心してください、きっと誠さんも優しく忘れてくれます。

 飛鳥:え、ちょっとぉ!?

 瑞希:うん、飛鳥ちゃんが全部持ってったから(笑)

 七海:伝説の夜ですからね記録に残しましょうか?

 飛鳥:やめてーーーー!!!

 瑞希:でも楽しかったねーまたやりたいな、今度は誰の家?

 七海:今度はお料理テーマを決めてやるのもいいかもしれません。あと、飛鳥さんは飲酒制限ありで。

 飛鳥:ううう……。


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