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「……いい予感がする」
悠人は、太陽が照りつける窓の外を眺めながら言った。
「遊園地、今日行こう。みんな準備して」
ソファに座ってアイスクリームを食べていた蒼大と芽生は、悠人の視線を追って外を見た。
「今日? ちょっと……暑すぎるけど」
「そうだよ、今日はやめておこうよ……」
二人の消極的な反応に、悠人はソファから立ち上がり、二人の前に立ちはだかった。
「でも、我慢できないほどじゃないだろ?なあ、行こうよ。なんだか……今日行かなきゃいけない気がするんだ。きっと、いい日になる気がするんだよ」
「…………」
どこか駄々をこねるような物言いは、悠人らしくなかった。蒼大と芽生は困惑した顔で兄を見上げた。稀に、こういう時がある。悠人が自分の中の何かに突き動かされ、こうして突然の情熱を見せると、他の二人は従わざるを得なかった。
蒼大は相変わらず面倒くさそうにしていたが、芽生はすぐに表情を明るく変え、ソファから弾けるように立ち上がった。
「うん! 私は行く!」
彼女は自分の部屋から、やりたいことを記したメモ――バケットリストを持って戻ってきた。
「蒼大も早く。立って、立って」
悠人に腕を掴まれて急かされ、蒼大も観念したように腰を上げた。
「……僕の分、本当に兄ちゃんが出してくれるんだろうね?」
「もちろん。さあ、行こう」
そうして三人は家を出た。両親は留守だったため、こっそり抜け出す必要もなかった。談笑しながら歩き、住宅街を抜けて市街地へと出る。
バケットリストの一項目目を実行するため、三人はタクシーを拾うことにした。小学生だけだったせいか、最初の一、二台は通り過ぎてしまったが、やがて一台が停まってくれた。
運転手は子供たちの顔ぶれを珍しそうに眺めた後、目的地までの運賃は足りるか、親の許可は得ているかを簡潔に確認し、車を発進させた。
助手席に座った悠人は、窓を開け、ゆっくりと流れる景色を見つめた。
中天にかかった太陽。生温い風。膨らんだ財布。そして、後部座席で穏やかに喋っている弟と妹。
完璧だった。
あらゆる面で、これ以上ない最高の一日になると、悠人は確信していた。




