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王女の従者  作者:
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第18話 霧丸を求めて パートⅡ

 虎助さんの子孫のところにあると思っていた霧丸は、そこにはなく彼らが住む領地の領主であるカスパル公爵に差し出したということだった。

 それを聞いた俺たちは早速カスパル公爵の屋敷があるティナルに向かうことになった。

 ティナルまではパルムから馬車で一日半のところにあるらしい。

 まぁ、もともと、理美がそこの令嬢に挨拶したいといっていたので寄るつもりではあったから旅の行程に変更がないのはありがたかった。

「それじゃ、虎作さん、俺たちはこれで、何かあればトリタニア王国のソフィア工房までお願いします。そこなら必ず俺に連絡が来ますから」

「わかった、そのときは頼むよ。それと、実はすでに頼みたいことがあるんだが、いいかな」

「ええ、もちろんです、虎作さんは松堂家の分家ですから」

「ありがたい、頼みというのは、虎凛のことだ」

 俺はそんな気がしていた。

「俺はすでにカスパル公爵に忠誠を誓っている、しかし、虎凛はまだ誰にも仕えていない、そこで、虎凛をつれていってほしい」

「お、お父さん」

 虎凛が一番驚いていた。

「虎凛、彼らについていき多くのことを見てきなさい、そして、ひいおじいちゃんがもう一度見たかった世界と、松堂の里をその目で見て、修業をしてくるんだ」

「お父さん、でも」

「俺のことは気にするな、何、まだ若い自分のことぐらい自分で見れる」

 虎凛は少し黙って考えているようだった。

「……わかった、お父さん、私、行ってくる」

「ああ、気をつけてな」

「うん」

「というわけだ、幸仁殿、沙織殿、虎凛をよろしく頼みます」

「わかった、預かるよ」

「ええ、必ず、虎凛ちゃんは松堂の里に連れていきます」

「ありがとう」

 こうして俺たちの旅の仲間に虎凛を加え一路ティナルに向かった。


 虎凛は生まれたときからパルムにいたために、今回が初めての遠出らしく、馬車に乗るのも初めてだそうだ。

 実は平民の中にはそうやって一生自分の生まれ育った街や村から出ない人ほとんど、その理由は、必要がないからだった。

 そんな理由から虎凛は馬車に乗った時点からテンションが高かった。

「すごい、これが、馬車、はじめて乗ったけど、あまり揺れないのね」

「うふふ、前はもっと揺れていたのよ」

 そういったのは理美だった。

「どういうこと」

 虎凛は俺と同い年、だから理美とも同い年のためにすぐに仲が良くなったらしい。

「あまりに揺れるから、最初乗ったとき乗り物酔いしてな、それで、それを抑えるサスペンションっていうものを工房で開発したんだ」

「工房? 開発?」

 虎凛はいまいちよく分かっていないようだった。

「そういえばまだ、松堂家としてしか自己紹介していなかったな。俺はこっちの世界ではトリタニア王国第二王女、ソフィア・ドゥ・トリタニア殿下の従者をしているんだ。それで、トリタニアの城には王女の名を冠した工房、ソフィア工房があって、俺はそこの管理などをしている。それで、たまに工房に新製品の開発として、地球の技術を持ち込んでいるんだ」

「ふーん、あんたって結構すごい奴だったの」

「まぁ、そういうわけでもないよ、剣と同様、俺はいたって普通の人間だからな、地球には技術を誰でも調べることができるものがある。それを使って調べたり、って言っても調べるのは姉ちゃんだけど」

「ええ、そうね、いずれは虎凛ちゃんにも手伝ってもらおうかしら」

「は、はい、私にできるのなら」

「大丈夫よ、誰でもできるからね」

「はい、あっ、それじゃ、理美は?」

「ああ、理美も工房で働いてる。主に翻訳と、職人たちの操縦ってところか」

「操縦?」

「職人たちは基本的に男たちだ、だから、いろいろと雑でな、理美がいなかった時は放置してたんだけど、理美がそれを厳しく管理するようになった。おかげで、工房の作業効率が飛躍的に上がったからな」

「そ、そんなことないわよ、あれは私が耐えられなかっただけ」

 理美は少し照れながら言った。

「でも、すごいわ、私も知り合いに職人がいるけど、結構乱暴な人もいるし私みたいに力があるならともかく理美は普通なのにそんなことができるなんて、ちょっと理美のこと尊敬する」

「もう、虎凛ったら」

 理美は完全に照れて顔を赤くしていた。

 そんな様子をみながら、俺は虎凛がすっかり理美と仲良くなっていることにかなりほっとしていた。

 それからしばらく進んだところで虎凛があることに気が付いた。

「ねぇ、幸仁」

「なんだ」

「どうやって、領主様にあるわけ、いくらあんたがトリタニアの王女様の従者だからってそんなもの通用しないでしょ」

 もっともなことを言った、そう、俺はあくまでここバルノールでは外国人だからだ。

「ああ、それか、そこは理美が頼りになる」

「理美が!」

 虎凛は理美を見た。

「どういうこと、理美って普通の子でしょ」

「今はな、でも、以前リミーナ・ドゥ・シュバルと名乗っていたんだ」

「えっ、シュバル」

 さすがの虎凛も驚愕した。

「シュ、シュバルって、もしかして、隣の……」

「ええ、そう、このカスパルの隣の領地のこと、私ちょっと前までそこのシュバル伯爵の娘だったのよ」

 理美が続いてそう答えた。

「で、でも、確かこの貴族って、魔法が使えないと」

「そう、だから私は貴族をやめて元の常盤理美って名乗っているの」

「そ、そうなんだ」

「でも、それで、どうして理美が元貴族でも今は平民なのよね」

「ええ、でも、実はね、私、イリス学園に通っていたの、そこで、カスパル公爵のご令嬢のフェリスとは親友の関係だったのよ」

「虎凛のところに霧丸があれば、本来は挨拶をしに行く程度だったんだけどな。まさか、霧丸を取り上げられているとは思わなかったからな」

「ええ、フェリスもそこまでは話してくれなかったから」

「そうなんだ」

 こうして俺たちはやはり何事もなく順調な旅の末、何とかティナルへとたどり着いた。


「さて、やっと着いたな」

「うん、やっぱり遠いわね」

「だな」

「それで、理美、この後どうする」

「そうね、一応、屋敷に行ってみようと思う、すぐには会えないだろうけど約束はできるからね」

「そうだな、じゃぁ、行くか」

「それでは俺は、ここで馬車を見張っている」

 そういったのはムルダだった。

 俺たちはムルダにそれを頼むと早速屋敷に向かった。

 ティナルは領主の屋敷があるだけあってかなり大きな街だ。市場なんかも活気があって人の往来もかなりの量だった。

 俺や姉ちゃんはもっと人の多い東京で慣れているし、理美もよくトリタニアの街に繰り出しているので、このくらいの人だかりには慣れていた。しかし、虎凛にとっては初めてだった。パルムも街ではあるがそれdも規模はそんなに大きくはない、だから、目をまわし始めていた。

「す、すごい、こんなに人が、今日ってなんかの記念日だっけ」

「たぶん、これが平常だと思うよ」

「うそ、これで」

「虎凛、これに驚いていたら、日本に行ったときどうするんだ」

 俺が何気にそういうと虎凛はさらに驚愕していた。

「えっ、日本って、これより人が多いの」

「ええ、まぁ、地方に行けば少ないけどね、松堂の里もうちの一族の人間しかいないから安心して」

「そ、そうですか」

 そんな話をしているうちに屋敷にたどり着いた。


「それじゃ、ここからは私が話から、みんなは黙っていて」

「わかった、頼むぜ」

「ええ、任せて」

 そう言って理美は先頭に立って屋敷の門番に話しかけた。

「すみません、私、以前リミーナと名乗っていたもので、こちらのご令嬢フェリスさんの友人なのですが、彼女にお取次ぎをお願いできますか?」

 理美がそういうと門番がじろりと理美を見渡して答えた。

「ふん、平民風情がお嬢様に会いたいだとふざけるな、ほら、帰った帰った」

 あまりに予想通りな返答に俺たちは思わず吹き出しそうになったが、そこはこらえた。

「ええ、確かに今は平民ですが、以前貴族でした。彼女とはそのときに知り合ったのです。なんなら本人か……そうですね、あっ、そういえば執事のタルムさんならわかると思います」

「た、確かに、タルム殿はお嬢様の執事をされているが、どこでそれを知った」

「いや、だから、貴族の時友人でしたから」

 そんな問答を続けているので、俺たちは無理かなと別な方法を考え始めていた。

 するとそのとき、門の奥から一人の老人がひょいと顔を出した。

「どうしました、何かありましたかな」

「あっ、タルムさん」

「おやおや、これは、リミーナ様、ご無沙汰しております」

「はい、タルムさんもお変わりないようで安心しました」

「た、タルムどの、お知り合いで」

「ええ、この方はリミーナ・ドゥ・シュバル様、フェリスお嬢様のご友人です」

「えっ、そ、それは、誠ですか。し、しかし、この者は、平民でシュバルとは一度も」

「ええ、リミーナ様は貴族をやめられましたから、シュバルと名乗ることはできないのですよ。この方の身元は私が保証いたします」

「タルム殿がそうおっしゃるんでしたら」

 俺は改めて理美が元貴族だということを実感していた。

「ところでリミーナ様、お嬢様にお会いに……」

「はい、挨拶と、お願いに上がりました」

「そうですか、きっとお嬢様もお喜びになられるでしょう、しかし、本日はこの後予定が入っております。明日ならば午前中お相手できると存じます」

「本当ですか、それでは明日午前中にまた来ます」

「ええ、お待ちしております、それでは、明朝お待ちしております、後ろの方々もぜひどうぞ」

 俺たちはその言葉にうなずきながら踵を返した。

 こうして俺たちはカスパル公爵令嬢との約束を交わしたのだった。


「本当に理美って、貴族だったのね」

「信じてなかったの」

「信じてたけど、あれを見るとなんだか実感しちゃって」

「確かに、まぁ、俺はリミーナ時代に会っているからそこまでは思わなかったけどな」

「もう、みんなして」

 それから俺たちはムルダと合流してから宿をとった。


 そして次の日俺たちは朝から屋敷の前に立っていた。

「これは、お待ちしておりました、どうぞ中に」

 門のところでタムルさんが待っていてくれた。

「おはようございますタルムさん」

「おはようございます、お嬢様がお待ちしております」

「ええ、怒っていませんでした」

 理美は思うところがあるようで恐る恐る尋ねた。

「ふふ、ええ、それはそれは、昨日訪ねたときなぜ通さなかったのかと」

「あはは、変わっていないのね」

 それから俺たちはタルムさんに連れられて応接間に通された。


「ああ、そうだ、先に言っておくけど、フェリスは気性が激しから、もしかしたらユキ、あなた叩かれるかもしれないから覚悟しておいて」

 直前にそんなことを言い始めた。

「えっ、そ、それって、なんで」

「そりゃぁ、ユキは私が貴族をやめる原因だからね」

「なるほど、フェリスさんの嫉妬の相手ってわけね」

「それ、もっと早くいてくれよ」

 俺たちのそんな会話を背中で聞きながらタルムさんは微笑んでいたように思えた。

 そしてタルムさんがタイミングを見て部屋の扉を開けた。

「どうぞ、それは少しお待ちください」

「はい、ありがとうございます」

 それから俺たちは中に入り思い思いに過ごしていると少しして、扉がノックされた。

 どうやらフェリスが来たようだった。

「リミーナ」

 扉を開けるなり理美の名を叫びながら、一人の少女が入ってきた。

 その少女はいかにもな巻紙で金髪、端正な顔立ちをした美少女だった。

「フェリス、久しぶり」

「リミーナ、本当に、あなたなのね」

「当たり前でしょ」

 そんな二人を見て俺はああ、この二人は本当に親友なんだなと思っていた。

「リミーナ、あなたが貴族をやめたって聞いて私、本当にショックだったのよ」

「ごめんなさい、でも、私もいつまでも貴族ではいられなかったし」

「そ、そうかもしれないけど、そうなれば私のところにって思っていたのに、寄りにもよってトリタニアに行くなんて」

「ごめん、でも、トリタニアに行ったのは理由があったからなの」

「手紙にも書いてあったけど、詳しく話して」

「ええ、もちろん」

 この後理美はゆっくりとすべてを話していた。

「……話は分かったわ。つまり、この男のせいってことね」

何をどうわかったのか理美の予想通り矛先が俺に向いてきた。

「待って、フェリス、その人は悪くないわ、むしろその人は私の恩人なのよ」

「恩人?」

「そう、彼のおかげで私は本当の両親にも、幼いころの友人たちにも会えたの、感謝してもしきれないほどよ」

 理美がそういったことで少し矛が和らいだようだった。

「で、でも、リミーナ」

「いいから、それじゃ、みんなを紹介するわ」

「え、ええ」

「彼はさっきも言ったように私の恩人でこっちの世界に来る前の学校でクラスが同じだった人で松堂幸仁っていうの」

「よ、よろしく」

 俺はいまだに向けられる矛を恐れながらあいさつした。

「それで、彼女は彼のお姉さんで沙織さん、私が小さいころからあこがれる人よ」

「あこがれる、リミーナが」

「ええ、彼女は強くて優しくてきれいで、私たち女の子全員があこがれてたのよ」

「へぇ、確かに、きれいだと思うけど」

 さすが姉ちゃん、フェリスは納得していた。

「それから、この子は虎凛っていうんだけど、実は今日フェリスに会いに来た理由が彼女に関することなの、まぁ、実際には私以外の全員に関することだけどね」

「どういうこと」

「こっからは俺が説明してもいいか」

 俺は理美に尋ねた。

「そうね、当事者から話したほうがいいと思うし、それじゃユキお願い」

 理美がそういうとフェリスは少し顔をしかめた。どうやら理美が俺と親しげに反すことが気に入らないようだった。

「ああ、さっき紹介があったように俺の名は松堂幸仁って言います。一応理美と同じ異世界からの転移者です。実は、この国には今から百年前に松堂虎助という人が転移してきました。まぁ、俺の親戚なんですが、その人は我が家の家宝と一緒に転移してしまったんです」

「家宝?」

「はい、霧丸という名の剣です」

「そう、霧丸、妙な名ね」

「そうですね、俺たちの名も妙に聞こえるこっちの世界では変な名かもしれませんが、俺の家にとっては、何よりも大事なものです」

「でも、あなたは平民でしょ」

「そうですね、確かに、俺はここでは平民です。でも、俺たちの世界では魔法使いはいません、だから剣の達人は魔法使いと同等の存在なんですよ。そして、俺の先祖は霧丸を天皇陛下、まぁ、国王に位置する人物から授かった」

「なるほどね、それで、その話何か私に関係があるのかしら」

「はい、実は、今から十数年前トリタニア王国とバルノール王国が戦争していた際、虎作という人物が霧丸をもって戦果をあげました。そのとき、当時のカスパル領主、つまりフェリスさんのおじいさまに当たる方の目に霧丸が止まり、霧丸を差し出すようにと、虎作に命じたのです」

「つまり、あなたの家の家宝がここにあるってことかしら」

「はい、そこで、その返却をお願いしたいんです。あれの本来の持ち主は現在俺の父ですから」

「わかったわ、私としては許せない存在だけど、仮にもリミーナが恩人というし、協力はするわ。でも、私では、返すのは無理よ」

「はい、なので、公爵殿に話をさせてもらえませんか」

「まぁ、それしかないわね、ちょっと待っていなさい」

「はい」

 それからフェリスは近く控えていたタルムさんに合図をした。

「タルム、お父様と彼らを会わせたいのだけど、セッティングしてくれるかしら」

「かしこ参りました」

 タルムさんはすぐに部屋を出て行った。

 ソフィアの従者である俺の予想では、今タルムさんは公爵の執事と話をしているはずだ。

 それからしばらくして、タルムさんがやってきた。

「お嬢様、お待たせいたしました」

「どうだった」

「はい、旦那様は、現在背来客中ですが、その方が帰られたら話を聞いてくださるそうです」

「そう、ありがと」

「ということだそうよ、かまわないかしら」

「もちろん、願ってもない早さです」

 それからしばらくは俺たち松堂家のものは遠慮して理美とフェリスから離れて座っていた。

「あの二人、久しぶりに会えてよかったわ」

「そうだな、無効と違ってこっちには携帯ないからな、話すのも久しぶりだろうし、俺たちが帰るとまた、しばらく、会えないだろうからな」

「そうね、こっちにも形態が普及すればいいけど」

「まぁ、それは無理な注文だからな」

「ええ」

「そのケイタイっていうのなに」

 そこで虎凛が訪ねてきた。

「携帯っていうのはこれのことで、電話という遠くの人間と話をすることができるものなんだ」

「遠くの人と、それってどんなに離れててもできるの」

「ああ、まぁな」

「それって、こっちじゃできないの」

「ああ、いろいろ弊害が多くてな」

「そう、なんだか、魔法みたい」

「だな、でもこれは科学だよ」

「カガク、すごいな」

 虎凛は心底そう思っているようだった。これは、虎凛にも携帯を買ってやればいいなと思った。

 それからしばらくしてどうやら公爵の客が帰ったようで、タルムさんがやってきた。

「お嬢様、旦那さまがお会いになるそうです」

「そう、わかったわ、リミーナ、それと、ショウドウだったかしら、みなさんもどうぞ」

「ええ、お願い」

 こうして俺たちは公爵と会うことができそうだった。


 部屋の前につくとまずフェリスと理美が先頭に立った。

「お父様、フェリスです、お連れいたしましたわ」

「うむ、入ってもらえ」

「はい」

 俺たちはフェリスに導かれて中に入っていった。


 中に入るとひょろっとした感じのひげを生やした中年の男性がいた。その人物がくだんの公爵だった。

「よくぞ参られた、私がミルガ・ドゥ・カスパルである」

「お久しぶりです、おじさま」

「おお、リミーナか、いや、今はリミと名乗っているのであったな」

「はい、ですが、リミーナで結構ですわ、フェリスにもそう呼ばれていますし、この名はお父様シュバル伯爵にいただいた名ですから」

「そうか、ではリミーナよく参ったな」

「はい」

 やり取りを見ているとどうやらリミーナは公爵とも仲がいいそうだった。

 理美によるとどうやらカスパル公爵と理美の父親シュバル伯爵は身分は違えど友人だったらしい。その縁で理美とフェリスが親友となったようだ。

「それで、私の用がるということだが」

「はい、それについては俺が説明します」

 俺はそのあと自己紹介をしてから霧丸を探していること先代領主が霧丸を奪ったことを離した。

「……うむ、なるほど、確かに父ならやりかねん、父は欲深い男だった、。悪いことをしたな、コリン」

「い、いえ、そんな、もったいないです」

 虎凛は父親が忠誠を誓っている領主相手で緊張しているようだった。

「しかし、私も覚えがない、早速目録を調べてみよう」

 公爵が合図をすると近くにいた執事がうなずき部屋を出て行った。

 そしてすぐに帰ってきた。

「こちらです」

「うむ」

 公爵が早速目録を見た。

「ん、キリマルというものはないようだが」

「えっ、そんなはずは、お父さんは確かに……」

「どのような剣だ、目録には絵が乗っておるから形だけでもわかれば」

「はい、少し反り返った片刃の剣です。こっちの世界にない形なのですぐにわかるはずです」

「そうか、では」

 公爵が改めて見るとある一点で目を止めた。

「うむ、あったぞ、これじゃないか」

 そう言って公爵は俺たちの目の前に目録を広げてくれた。

 そこに確かに日本刀らしき剣が描いてあった。

 俺はじっくりとそれを眺めてから言った。

「姉ちゃん、これ……」

「ええ、間違いないわ、これよ、ほら、この鞘の模様もうちの文献に乗っていたものと同じ」

「ああ、確かに」

「これが、霧丸」

 虎凛は霧丸を知らないのでこの反応だった。

「間違いありませんこれです」

「そうか、これは、どうやら父がデュランダルと名付けたようだ」

 俺はまさかかつて妖刀と呼ばれた霧丸がここで聖剣の名をもらっているとは思いもよらなかった。

「ここにあるのですか?」

 俺が尋ねると公爵は苦い顔をした。

「いや、ここにはない、どうやら、献上したようだ」

「献上、ってまさか」

 俺がそう言いかけると理美が続いた。

「国王陛下にですか?」

「そうだ、すまぬな」

 俺たちはそれ以上何も言えずに宿に戻ることになった。

 理美だけはフェリスのたっての願いにより一晩だけ屋敷に泊まることになった。


 宿に帰って留守番をしていたムルダにも報告をして、俺たちはちょっとした会議をすることにした。

「まさか、献上しているとはな」

「ほんとにね」

「どうするの、これじゃ、霧丸、取り戻せないよね」

 虎凛も姉ちゃんも絶望視していた。

「ユキ、これは、姫様のお力をお借りすべき時ではないか」

 そんなときムルダがそう言ってきた。

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