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王女の従者  作者:
15/27

第15話 扉

この話も語りは姉ちゃん(沙織)です。

 ジャポニが滅亡したと聞いてからユキとソフィアは元気がない、こんなときユキを抱きしめてあげられたらと悔やまれる。

 そこで、私はかねてより研究を重ねていたものをついに実行することにした。

 それは、まだユキにもソフィアにも話していないことで、実は私の部屋にあるあの白い靄のサンプルをとって分析研究をしていたのです。

 研究は大学の友人数名と教授の協力を得ていました。

 基本的に内緒の研究で外部に漏れることはありません、というか漏れたら大変なことになるでしょう、みんなそれをちゃんと理解してくれているし、念のために漏れたらどうなるかということを話してあるので、そんなことはないと思います。

 研究はまず白い靄を人工的に発生させるところから入りました。最初はうまくいかずにどうしたらいいのかと悩んでいるとさすがに教授が提案をして、それがうまくいき何とか白い靄を発生させることに成功しました。

 そのときのうれしさは言い表せませんでした。みんなも同じようで手に取を取り合って喜びを分かち合いました。

 次は発生させた靄から異世界の通じることです。これは、難なく成功し、白い靄を発生させてからすぐに異世界がのぞけました。これには普段から異世界を見ている私と違って友人たちや教授は驚愕を隠せていませんでした。

 こうして何とか実験は成功し、今日は最終段階である異世界に通じる穴を広げる実験です。


「みんな用意はいい」

「ええ、問題ない」

「進めて」

「よし、それじゃ」

 私はそういってすでに発生している靄にさらに発生させました。

 すると一瞬広がったかと思うとすぐに閉じてしまいました。

「嘘、これでダメなの」

「何がいけなかったんだ」

 私たちはそのあとすぐに反省会をして原因を考えました。

 そしていくつか考えられる原因を解消しながら進めることにしました。

「今日は解散して、また今度やってみましょう」

 私の号令で今日のところは一旦解散することにしました。


 それからしばらくたち、ついに靄を広げることに成功しました。

 その日はみんなで祝杯をあげました。私も普段はお酒は飲まないのですが、その日ばかりはたくさん飲みました。

 おかげで、帰ってきて酔っぱらった私を見たユキとソフィアが私の心配をしてくれました。

「姉ちゃん、珍しいな、酔ってるのか」

「沙織様」

「だいろうびゅよー、ふらりろも」

 私の呂律は回っていませんでした。

 そして、その日はすぐにベッドにもぐりこんでしまいました。


 次の日私はすぐにでもユキに伝えたかったのですが、数日は黙っていました。その理由は、不具合が起きたときに困るからです。

 ちなみに私たちが作った異世界の入り口は松堂家の分家の人に警備を任せています。

 理由は普通の警備員だと何買ったときに対処できないからです。

 数日が立ち靄も安定しついに私はユキにこのことを伝えたいと思います。


「ユキ、ソフィア、話があるわ」

 私は朝からユキとソフィアにこういいました。

「なに、姉ちゃん」

「どうされましたか、沙織様」

「ええ、実はね……」

 私は話しました。

「……ほ、本当か、姉ちゃん、本当にこれ、広がるのか」

「ええ、本当よ、私がユキにウソついたことある」

「えっと、いや、ないけど、でも、信じられねぇよ」

「はい、あの、沙織様、どうやるのでしょうか」

「まぁ、詳しくことは気にしなくていいのよ。そういうわけだからそっちの都合のいい時を教えてくれる」

「あ、ああ、そうだな、今日はこれから予定が入っているから、あさってはどうだ」

「明後日って、土曜日ね、ええ、大丈夫よ」

「それじゃ、明後日」

「ええ」

 私はそれから結構の日まで眠れない夜が続きました。研究には絶対の自信があります。ですが、万が一ということもあります。その万が一が起きたとき私はどうすればいいのか悩みどころでした。


 そしてついに決行の日がやってきました。

「それじゃ、早速始めるわ、ユキとソフィアは何があるといけないからとりあえず部屋の外にいなさい」

「わかった、何かあったら呼んでくれ」

「わかったわ」

 ユキとソフィアの安全は第一として私たちは早速始めました。

 決行のメンバーは教授以外の全員です。友人たちは全員女の子なので私の部屋に上げることは問題ありませんでした。

「しかし、沙織って弟好きだなぁって思ってたけど、まさか、ここまでとはね」

「ほんとに、隠す気ゼロだもんね」

「う、うん」

 みんながそういう理由は私の部屋にあるユキの写真のことです。実は私の部屋にはユキの写真が貼ってあります。

「扉ができたらこれもはがさないといけないわね」

「外すんだ」

「そりゃぁね、扉ができればユキもここ通るからね。もし、見られて、姉ちゃんキモイとか言われたら私生きていけないかも」

「い、いや、そこまでは、ないと、おもうけど」

「う、うん、だいっ丈夫だよ」

 なんだかしどろもどろとなっている友人たちがいた。

「さて、それじゃ、始めちゃおう」

「そ、そうだね」

 それから私たちは早速靄の量を増やしつつ、入り口を徐々に広げていった。

 すると少しして扉が入りそうな大きさになった。

「よし、広がった、あとはこれは入れればいいのね」

「うん、そうだけど、一人で大丈夫」

「もちろん」

 そういって私は部屋のどらと同じくらいの扉が付いた木製の木枠を持ち上げた。

「よいしょっと」

 私は掛け声とともにそれを塩ビ管を入れと時と同じ要領で差し込んだ。

 すると靄の入り口も狭まりすっぽりと扉を挟みこみました。

「よし、これであとは安定すれば成功ね」

「え、ええ」

 緊張の瞬間だった。これが成功するかしないかで私の運命も変わるかもしれなかったからだ。

 そして、数分待って靄が安定したのを確認して、深呼吸をしてから扉を開けてみた。

「……や、やった、成功、成功よ」

 私は思わず喜んで叫んだ。するとその声を聴いたユキとソフィアが部屋に入ってきた。

「……ね、姉ちゃん? そこにいるってことは、もしかして」

「ユキ!」

 私は思わずユキに抱き着いた。

「サオリ様、ようこそ、トリタニア王国へ」

 ソフィアもそんな私に歓迎の言葉を言ってくれた。

「ありがとう、ソフィア」

 私はそういってソフィアにも抱き着いていた。

「ちょっと沙織、まだ終わってないんだけど」

 すると後ろのほうから白けた声で友人が言った。

「あ、ごめん」

「なんだ、まだ何かあるの」

 ユキがそう尋ねてきました。

「塩ビ管と違ってこれは大きいし重たいからね、ちゃんと固定しないといけないのよ、もし倒れたりしたら穴がふさがるどころかけがをする可能性もあるからね」

「なるほどね、それで、どうやるんだ、手伝うよ」

「ありがと、それじゃ、向こう側はみんなに任せるからこっち側をお願い、ソフィア、この杭を床に打ち付けたいけどいいかしら」

「はい、もちろんかまいませんが」

「ありがとう、それじゃ、ユキこれを打ってくれる」

「わかった」

 私はユキに杭を渡しました。そして私はもう一つの杭を床に打ち付けたのです。

 それからドアからワイヤーを引っ張り、向こう側と息を合わせてようやく固定が終わりました。

「これで、固定できたのですか」

「ええ、まぁ、本当はもっとちゃんと固定したいけど、これしかないしね」

「でしたら、私の魔法で固定いたしましょうか」

 ソフィアが願ってもないことを言ってくれた。

「そんなことができるの、それならありがたいけど」

「では、始めますね」

「ええ、お願い」

「それではみなさん扉から少し離れていて下さい」

 そういわれて私とユキ、それから向こう側にいる友人たちが扉から離れ初めて見る魔法に固唾を飲んでいた。

 するとソフィアはよくわからない言葉の呪文を言ってから杖を掲げた。

 その瞬間杖から強い光が放たれた。

「終わりました、どうぞ、確認してみてください」

「え、ええ」

 私たちは扉を揺らしてみた。

 すると先ほどまで固定したとはいえ少し揺れていた扉が完全に固定され全く動かなかった。

「すごい、これが魔法」

「ほ、ほんとにそこ、異世界なんだ」

「す、すごい」

 友人たちも驚愕していました。

「これがあるなら杭は必要なかったかな」

 友人の一人がそうつぶやきました。

「いいえ、私の魔法は扉と杭両方にかけました。もし扉だけでしたら、ここまでの固定は不可能だったと思います」

「そ、そうなんだ」

 友人は少し緊張している様子でした。

「ふぅ、とにかくこれで、自由にこっちに来れるし、ユキも地球にいつでも帰ってこれるわね」

「ああ、言われてみれば、それじゃ早速久しぶりに自分の部屋に行ってみるかな」

「そうね、そうしなさい」

 ユキは扉をくぐり久しぶりの我が家を見に行きました。

「それにしても室内なのに空気がすごくいいわね」

「そうなのですか?」

「ええ、向こうは空気がかなり汚れてるからね」

「そうですか」

 わつぃとソフィアがそんな話をしていると、友人たちも異世界にやってきました。

「わっ、すご、天蓋つきじゃん、さすがお姫様って感じだよね」

「う、うん、あっ、ちょっと、お姫様なんだからちゃんと警護使わなくちゃ」

「あ、そ、そうだよね、すみません」

「いいえ、かまいませんよ、みなさんサオリ様のご友人だそうですし、サオリ様と同じく話されて結構です。それと、私のことはソフィアとお呼びください」

 ソフィアがそう愛想よく言った。それを聞いた友人たちは顔を赤らめていた。

 そのときのソフィアすごくかわいかったから、私もよくわかる。

 そうこうしているとユキが帰ってきました。

「それじゃ、弟君も帰ってきたし、私たちはここらで帰るわ」

「うん、わかった、いろいろありがとね」

「いいって、それじゃ、成功したって教授にも報告しておくから」

「お願い」

 そういって友人たちは帰っていきました。

「さて、姉ちゃん、これからどうするんだ、一応国王とか会う」

「それはやめとく、国王様って地球のこと知らないでしょ」

「まぁな、ややこしくなるか」

「そう、それより、工房に行きたいわね」

「そうだな、って、工房、理美にも伝えなきゃな」

「そういうこと、それにアレルさんにもあってみたいし」

「わかった、それじゃ、行くか」

 こうして私はようやく来た異世界、ユキがいる世界に足を踏み入れ、ユキとソフィアをこの手に抱きしめることができました。ここまで非常に長くて、長くて、辛いこともあったけれど、今私はとても幸せな気持ちです。

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