↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝国の青年たちよ  作者: ちゃばしら
二章 新皇太子編
PR
27/33

九(オルベール視点)

オルベールは安堵した。

オベリアの精神状態は、思ったよりも良くなかったが、今日の対話で多少は持ち直しただろうと思えたからだ。


だが、油断は禁物だ。

オベリアの土台は不安定、些細な他人からの言葉で呆気なく崩れる。

これはしばらくの間、毎日手紙を送った方がいいのかもしれない。


手紙を送る建前もある。

新たに皇太子となったが、君のことは疎かにするつもりはないという政治的なポーズ。

その本音の大部分は心配だと、オルベール自身は気づいているのか。


同時にもう一つ考えるべきことがあった。それが、『新・バザン王国併合論』だ。

もっとも、あれはすでに皇帝の政務補佐官に提出した。そして、各院に配られた。


その反応は賛否が分かれるだろう。


あの資料には、わざと穴を残しておいた。その方が“受け入れられやすい”から。

最初から完璧な理詰めの提案は、相手の思考を奪う。強い反発と、激しい熱狂を呼ぶ。それではいけない。


オルベールはこの議論に関して、複数の出口を見ていた。

そしてそれは必ずしも、譲歩ではない。

なぜなら、オルベールには明確な方針など存在しないのだから。いや、大枠では存在する。

それは大きな問題を起こさず、平和で安定した治世を築くこと。


そのための手段は選ばない。


必要ならバザンを取り込む。必要なら独立国として残す。必要なら全く別の案もある。

そして、もしバザンが帝国の平和を脅かす存在となった時は、必要に応じて滅ぼす選択すら厭わない。もっとも、それは最終手段ではある。積極的に戦争がしたいわけではない。


必要と判断したことを、合理的に選択できる。それこそがオルベールの強みであり危うさだと自認していた。

誰の敵にもならないということは、誰の味方にもならないということだから。


だからこそ、オルベールは強く思う。やはりオベリア・セナレムという存在を隣に置いておくべきだと。

彼女は無自覚な保守派だ。それは社交界において、そして政治において明確な軸になる。

国のためにふらふらと調停するオルベールに代わり、オベリアは立場のはっきりとした存在となるだろう。

そう、期待している。


彼女が知ったらどう思うだろうか。

驚くだろう、たじろぐだろう、自分では無理だと泣きそうな顔をするかもしれない。

だから、まだ言わない。


オルベールは、オベリアを考えると少しだけ早くなる心臓に、気づかないふりをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。