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第2話 私とあなたのこれから

「お嬢様、セレナ様、相当荒れていらっしゃるようですよ。あと馬車に詰めていた荷物が全部、屋敷の所有物だったので没収されたとか.......」


「最後まで強欲に持ち出そうとするその悪性だけは是非とも見習いところだわ」


「.........お嬢様って意外と容赦ないですね」


「五年分の利子がついていますのよ? まだ優しい方だと思うのだけれど........」


ーーー


 一ヶ月後、王宮の大広間で御前裁判が開かれた。


「継母ヴィオラ・フォン・アーレンスは、五年にわたり公爵家の財政を横領していたことが確認された」


 司法長官の声が響く。


「義娘セレナは虚偽の証言により公爵令嬢リーシェに窃盗の濡れ衣を着せ、後に発覚した監禁未遂への加担も確認されております」


「違います......私は何も知りません!!!」


 セレナが叫ぶが、すでに四人目の証人がその場にいることに気づいて声がだんだん小さくなっていく。


「一方、公爵令嬢リーシェは虐げられた立場にありながら、五年間にわたり匿名で西部領地の改善に資金を提供し、国境戦線への支援物資も独力で手配していたことが明らかとなりました」


 会場のあちこちから、感心したようなどよめきが起こる。


「リーシェ嬢が、あの匿名の支援者だったは……」


「では、我々が長年お礼を言いたかった相手は、屋敷で虐げられていた令嬢だった......ということですか」


 国王陛下が低く重い声で口を開いた。


「リーシェ・フォン・アーレンス。そなたの行いは、この国にとって何物にも代えがたい功績である」


「陛下.......そのお言葉、私めにとっては最上級の褒美でございますわ」


 私はそう言って深く頭を下げた。


 隣のヴァイスが小声で囁く。


「........よくやったな」


「あなたももう少し早く帰ってきてくれたら、助かったんですけどね.......どこかで違う女に油を売ってたりして?」


「そんなことがあるわけないだろ!! 俺の愛する人はリーシェ、お前ただ一人だ。今回は本当にすまなかった........次は、もう少し早く帰るさ」


「........次があるんですか?」


「おっと......言葉選ぶびを誤ってしまったようだ。..........もうこんなことが二度とないよう、私が一生ここにいるとしよう」


 ーーー陛下の判決が下る。


「ヴィオラおよびセレナ、両名の貴族籍を剥奪し、財産はすべて国庫に没収のうえ、辺境の修道院へ無期限の幽閉を命じる。なお.......これまで着用していた宝飾品はすべて競売にかけ、横領した分の返済に充てるものとする」


「いやああああ! その........その指輪だけは!」


 セレナが叫んだ瞬間、係官の手によって彼女の十本の指から指輪がすべて引き抜かれていった。


 両手がさっぱりと軽くなったセレナは何も持っていない自分の手を見つめて、しばらく言葉を失っていたという。


 ヴィオラは崩れ落ちながらまだ何か言いたげに口を開いていたけれど、もう誰も聞いていなかった。


ーーーー


 数ヶ月後、私はアーレンス公爵家の正式な継承者として認められ、ヴァイスとの婚約も結び直されることになった。


 修道院に送られたヴィオラとセレナの噂はその後も時々王都の貴族たちの間で語られていたという。


「あの二人、修道院で毎日畑仕事をさせられているらしいぞ........ヴィオラ様は鍬の使い方すら知らなかったとか........」


「セレナ様は虫が苦手だったのか、こーんな小さな芋虫を見て叫び声を上げたらしいぞ」


「贅沢が大好きだった人たちがよりによって畑仕事ね.......因果というのは本当によくできているわ」


 そんな噂を耳にしても私は不思議なほど何も感じなかった。


「リーシェ、これからは私が君の隣で守っていく」


 夕暮れに染まる庭園の中、ヴァイスが真剣な顔でそう告げた。


「ありがとうございます........でも、その台詞、夜会でも髪飾りの時にも言いましたよね?」


「大切な人に伝える大切なことは、何度言っても良いと思っているからな」


「ヴァイアス.......素直に覚えていませんでした、そう言ってもいいのよ?」


「そうとも言うかもな。あと.......今日はまだ何にもぶつかっていないからな!!」


「あなたは赤ちゃんか何かなんですか......? それを褒められる基準にしないでくださいよ」


 私は思わず笑ってしまった。


 虐げられていた五年間、誰にも見せられなかった夜の仕事と、小さな抵抗.......


 それらは結局、私から何も奪うことのできない、たった一つの誇りだったのだと今ならはっきりと言える。


 そして、隣にいるこの少し不器用な騎士団長と一緒なら.........これからの日々もそう悪くないだろうと、私は静かに思うのだった。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


 もし少しでもスカッとしたり、ニヤッとしたりしていただけましたら、評価ポイントとブックマークをいただけると、次の話を書く一番の励みになります!


 まだまだ書きたいことがございますので、よろしければ作者フォローもしていただけると幸いです!


 それでは、また次のお話でお会いしましょう!

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