第4話 完璧令嬢と残念令息
スパイダ様と過ごす事になり残念令息に絡まれる事がなくなった平和な学園生活を過ごせるようになったある日。
「麗しき人よ。その美しさはまるで絵画のようだよ」
「???」
折角のスパイダ様との楽しき食事の一時を邪魔する残念な令息の声がしたため、思わず「チッ」と舌打ちしてしまいスパイダ様から注意を受けてしまう。
すみません、スパイダ様。
でも、悪いのは大切な食事の時間を邪魔しようとするあなたの婚約者が悪いのです。
「どちら様で?」
自信過剰な者にはこの手に限る。
令息の眉が引きつき笑顔が微妙に崩れるが、直ぐに完璧な笑顔へと戻り自信の世界に入り込む。
「ああ、麗しき人よ。君の愛に向き合わなかった私に怒っているんだね。ああ、私は何て罪深い事をしてしまったのか、許しておくれ麗しき人よ」
片膝をつき私の手を握ろうとしてきたので、勢いよく払い落とした。
婚約者であるスパイダ様がいるのに私に声かけてきただけでなく、手を握り口説こうとしてきた姿はあまりにも気持ち悪く見えた。
「きっしょ!」
「キ、キッシヨ??」
気持ち悪すぎて思わず前世の言葉が出てしまった。
言葉の意味は理解出来なかった見たいで不敬罪に問われなかったが、表情で悪口である事を理解した男の顔は完全に歪み笑顔とは程遠い顔となっていた。
隣に座るスパイダ様が扇子で顔を隠しプルプルと震えていた。
「ラストさん、言葉使い気を付けなさい」
「すみません。婚約者が隣にいますのに信じられなかった者で思わず心の声が漏れてしまいました」
スパイダ様に謝りながらも残への攻撃は忘れない。
残念令息は歪んだ笑顔を浮かべながらもスパイダ様の事は無視したまま、再度私に話しかけてきた。
「ああ、余りにも君をほっておいてしまったから、いじけているんだね。怒らせてごめんよ」
ご自身で勝手にリセットしたようで、再び片膝をついてまた手を握ろうとしてきた。
再び手を払い落とす。
「いや、寧ろ逆で声を掛けられた事が不愉快で仕方がありません。先程までの幸せの時間が台無しです」
周辺から吹出すように息が漏れる音がした。
残念令息は顔を真っ赤にして体を震わしていた。
もうプラス思考に変える余裕がなくなってきたらしい
「な、何て失礼なんだ!高貴貴族の手を払い落とすなど無礼過ぎるだろ残念令嬢め」
「すみません。ですが、あなた様の婚約者はお隣の方ですよね。婚約者の方に誤解を与えないための行動ですのでお許し頂きますよね」
私の事を咎めたい残念令息であるが、こえ切り返されると私に不敬罪をいい渡す事は出来ない。
婚約者に不敬を働いているのはそちらで私は正当防衛みたいなものなだから。
「おしさぶりですわね」
「ふん、スパイダか。まさか貴様がまた私の愛を邪魔したのではないだろうな」
「私の記憶が正しければ私共のお食事を邪魔しておられるのはハルマゲ様のようですが」
「くっ・・・」
完璧令嬢に座布団1枚差し上げたい。
本当に残念令息は邪魔だ。
興奮して叫ぶ残念令息のせいで目の前におかれた料理を食べる気力を卯してしまった。
「わたくしがラストさんを束縛しているとでも?」
「違うのかい?」
「ラスタさん、わたくしは貴女の事を束縛してますの?」
「いえ、全く。何だったらスパイダ様のお陰でしつこい異性から解放され平和な日々を過ごせるようになったくらいです」
「だそうですわ」
「君がこんなにも歪んだ性格をしているなんて思いもしなかったよ。身分が低い者を無理矢理従わせる事がそんなに楽しいかい?」
どうやら私が無理矢理言わされていると残念令息の残念な脳みそは自動変換されたらしい。
本当に残念令息は何て残念なのだろうか。
残念令息は確か成績優秀だったはずなのだが、一切理解出来ないでいる残念令息は私よりも知能が低そうに見えてしまった。
「身に覚えのない中傷を申されましても困ります」
「麗しき人よ、安心していい。私が君の事を守ってあげるから、さぁ一緒に行こう」
残念令息がまたうでを触ろうとしてきたが、今度は完璧令嬢が持っていた扇子がそれを遮った。
「公爵令息として相応しくない行動ですわね。婚約者の前で別の令嬢の手を引っ張り何処かへ連れ込もうとは非常識ですわ。この事は我が父にもお知らせしなくてはなりませんわね」
「侯爵令嬢の分際で、貴様との婚約など・・・いや、何でもない。君がそのような態度を取り続けるなら私にも考えがる覚えていろ」
残念令息は捨て台詞を吐いて去っていった。
『覚えていろ』と言う雑魚が放つ捨て台詞は情けない敗者にピッタリで残念令息にはよく似合っていた。
それにしても、残念令息はあのような人物であっただろうか。
確かスパイダ様の事はそれなりに大事にしていたように思えた。
「ハルマゲ様はどうされたのですか?昔はスパイダ様に優しかったように思えたのですが」
「ええ、わたくしとの婚約を破棄したいらしいですわ」
「婚約破棄!!」
『婚約破棄』のワードで思わず大声を上げてしまい周りの視線を集め、スパイダ様に再びお叱りを受ける。
だけど、流石に婚約破棄と言われて驚くなというのが無理な話だと思う。
「どうして婚約破棄など?」
お昼は大声を上げた事でスパイダ様にミッチリと叱られてしまった私であったが、気になるなというのが無理な話であったため、帰りの馬車の中で再び話題にしてみた。
この時ほど、無神経に聞くことが出来る残念令嬢の肩書きが有り難く感じた事はない。
「以前、ラストさんが申された事が気になり、我が侯爵家の者に調べさせましたところ、ハルマゲ様には既にお付き合いされたご令嬢が三人ほどおりましたわ」
「三人もですか?」
「ええ、そのうち二人が子を孕み、一人は無事に産むことが出来ましたが一人は無理矢理におろされてしまわれたそうです」
「そんな・・・」
「それをお茶会でご一緒された方々に悩みとして相談致しましたところハルマゲ様の周囲から異性が遠ざかり、かなりストレスを抱えられているようですわ」
「なるほど、欲求不満状態と言うことですか。ですが、何故に向こうが婚約破棄を企てているのですか?」
「婚約破棄される前にわたくしの事を有罪にして先に破棄をされたいようですわ。そうすれば慰謝料を支払うに済むと思われているのでしょうね」
「はぁー大変ですねぇ」
「あら、ラストさんはもしやご自身は全く関係ないと思っておられるのかしら?」
「え?私は何もしてないですよ」
「よくお考えになって、今は私が防波堤となってハルマゲ様からお守りしておりますが、私が婚約者でなくなればあの方は鎖が外された狂犬となられますわよ。
本日もまだ婚約者であるにも関わらず暴走し始めておりますから」
「そんな・・・」
スパイダ様の事だから読みは当たっているのかもしれない。
確かに色情男が私の前に現れなくなったなはスパイダ様のお陰で、スパイダ様の守りの効果切れてしまったのなら由々しき問題であった。
「恐らくだけど、今度のパーティーで婚約破棄を宣言されるようですわ」
「パーティーってドーン公爵家で行われるパーティーの事ですか?流石に小説じゃあるまいし普通そんな事しますか?」
「確かに市井でそのような小説が流行られているようですわね。ハルマゲ様のお付き合いされていた方には庶民の方もおりましたからお読みになったのかもしれませんわね。?あの方、ご自身が世界の中心と思われているようなところがありますから」
記憶の中のあの男を思い出す。
残念ながらスパイダ様の言う事が正しく思えた。
「もう慰謝料など、どうでも宜しいので速やかに婚約者を破棄して下さると嬉しいのですが」
「・・・スパイダ様、慰謝料はいらないのですか?」
「我が家にとっては慰謝料よりも早くあの方との縁を切る方が最善となっておりますわ」
確かに隠し子がいる者の婚約者は世間体のダメージが大きくスパイダ様にとって大きな傷として残ってしまう。
だが、このままスパイダ様もだけど、市井で被害にあわられた令嬢が泣き寝入りするのは許せない気持ちが込み上げてきた。
「そうですか・・・それでもスパイダ様、不貞男からたんまりと慰謝料を奪い取りませんか?スパイダ様だけでなく、被害にあわれました方々の分まで」
「・・・どうゆう事ですの?」
私の不気味な笑みにスパイダ様が引いているようであったがお構い無し。
あの不貞男に天罰を与えてやらねばと、前世の私の腕がなる。




