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Gun Freak Sisters -didn’t change us-  作者: idiotdog
Watching the Line They Crossed
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Concealed Self

 棗達の前に立っていたのは、薄汚れてはいるが華音やマコ、棗にも劣らない美女だった。

 まるでハリウッド女優のような美貌にひどく薄汚れた麻の粗雑な作りの異世界風の管頭衣にズボン、髪もやや脂に塗れ手入れをしていない為ひどい状態になっていた。


 「なんかようか? アタシは今、平和を満喫してるとこなんだ。てめぇらの下らねぇ要件を聞く気はねぇぞ。」


 棗は話を聞く前にバッサリと切り捨て、つまみのナッツを口に運ぶ。


 「ね、ねぇ私もあなたたちのグループに入れてよ。ほらアンタ、レズビアンなんでしょ? 私の身体を好きにしていいからさ。」


 汐路はあからさまな要望に顔を歪め、ちらりと棗達の顔を見渡した。

 以前、棗は会ったばかりのエリオナに一晩の誘いをするくらいだし毎晩のように華音とマコの二人を相手にするくらい性欲があることを知っていたためひょっとしたらその提案に飛びつくのではないかと思えたからだった。

 そしてマコも、一緒に混ざれるならというほど性に奔放だということも知っている。

 だが、そんな性に奔放なはずのマコは、敵意むき出しのまなざしで女を見つめ、普段は棗に苦言を呈する華音も興味なさげにクラッカーにチーズをのせその上にオリーブを落ちないようにどう乗せるか試行錯誤しているほどだった。


 「あー アタシはビアンバーで働いてるし割と一夜限りの関係なんつうのもするがな……そういう身体を売るようなのは好きじゃぁねぇんだよ。 それにアタシは抱く女を容姿で選んでるわけじゃぁねぇぞ。その点で見るとテメェは抱きてぇと思えねぇよ。」


 エリオナに誘いをかけたのは少なくとも棗がエリオナ自身を評価したからだった。

 マコはややそういう意味では例外だが、少なくとも棗は日本に馴染めなかった高校時代にまるで小動物のように付きまといあれこれと世話を焼こうとしてくるマコに愛情を感じからこそ付き合い始めた。


 「なっ なんでよ。そいつだってアンタに股を開いて仲間にしてもらってるんでしょう?ソイツより私の方が美人じゃない。」


 そう女が言い、指を差された汐路は別に股を開いたことないんだけどなぁと思っていた。


 「おいおい、勘違いすんじゃぁねぇよ。汐路はアタシらの身内になってるがそういう関係じゃぁねぇ。アタシの能力には日本円が必要だそいつをコンスタントに稼げる能力を持ってるから庇護しているそういうビジネスライクな契約だ。ま、最初はそんなもんだったがこう長く一緒に居りゃあ情ぐらい湧くからなそこまでビジネスライクって感じじゃぁねぇがな。」


 棗の願望、レズハーレム。

 棗はそれを公言しているが、実際にそれを実行しようとしているところを汐路は見た事が無かった。エリオナへも一夜の火遊びの誘いをしてもハーレム要員にしようとはしなかった。

 それは棗が棗を中心とした関係を作ろうとしているのではなく嫁たちは全員が等しくお互いを愛することをもとめているからだった。

 棗と華音とマコの三人の関係は棗と華音、棗とマコという関係ではなくそこに華音とマコという確かな関係があるからこそ成り立ちそこに独占欲というものは存在しない。汐路がそこに入らないのは汐路がレズビアンではないというのもあるが、汐路はマコに対してはアニメというサブカルチャーでの共感とマコが庇護欲を誘う存在だということもあり距離が近いが、棗に対してはやや苦手意識をもっているからだった。


 「それに見た目だけならマコや華音ていう最高の嫁がいるしな。」


 そう言いながら両隣に座るマコと華音を抱きしめた。


 「くっ あんた日本人でしょ?協調性ないんじゃない?助け合うのが普通でしょ? 頭おかしいんじゃない?」


 「おいおい 自分の身体を売ってまで仲間にしてくれって言うような奴に頭おかしいとか言われちまったぜ。アタシはこの村で何度も仕事を依頼してる。真面目に働いてる奴は、少なくともそんな身なりにはなってねぇ。身体を売るのが最初の選択肢って時点で、楽してぇって考えが透けて見えるぜ。 転移初日にも行ったが協力ってのはお互い補い合えるから協力っていうんだぜ?一方的に助けてもらうのは協力とは言わねぇよ。アタシは国籍こそ日本だが、育ちはアメリカだ。『日本人なんだから』『日本人同士なんだから』なんて理屈はアタシには通じねぇ。アタシの魂はアメリカ人、テキサス人だからな。……もっとも、南部は保守的なぶん、人情は厚い土地だぜ。協調性がねぇのは、単にアタシ自身の性分だ。」


 ひょうひょうと答えてはいるがなにぶん棗は気が短い。いつ銃を突きつけたり発砲するかわからず汐路は、早く諦めて去って欲しいと願っていたが今日の棗はいつものバトルベルトやキャリアを身に着けていないことを思い出した。

 現在銃を身に着けているのはウェスタン衣装を身にまとうマコがModel.3 スコフィールドのレプリカを身に着けているのみだ。もしこの女性が短気を起こし戦闘用の能力を使用したらと汐路は身体をこわばらせた。


 「はいはい、なっちゃんそんなことよりミチェラーダのおかわり作ってよ。あなたもなっちゃんに撃ち殺されたくなかったらそろそろ諦めたほうが良いよ? ね?」


 華音がそう口をはさみ既にガンベルトに手を伸ばしていたマコにウィンクをした。


 「う、うん。」


 華音の言葉に、マコは自分たちの関係を汚すような女の言葉に昂った行き場のない感情で目にうっすらと涙を浮かべながら華音に抱き着く。

 華音の体温と体臭にマコは安堵を覚え落ち着きを取り戻していく。


 「撃ち殺すって……あんたらホントどうかしてるんじゃない?大体、今このイカレ女はいつも見たいに物騒な恰好してないじゃない。」

 

 女に指を差された棗は、やや呆れた顔で小さく息を吐いた。

 そして、まるで煙草でも取り出すかのような自然な動作でTシャツの裾をたくし上げる。


 カーゴパンツの内側。

 そこに隠されていたコンシールドキャリー用のホルスターから、普段愛用している1911とは明らかに異なる、小型のハンドガンを抜き取った。

 その動作は、これ見よがしな威圧感など欠片もない、いつもの習慣を実行しているだけだった。


 「おいおい。誰が銃を持ってねぇって?」


 棗は抜き取った銃を軽く見せると、すぐに腰の位置へ戻した。


 「いつモンスターに遭遇するか分からねぇ異世界で、銃をキャリーしてねぇ時なんざあるわけねぇだろ?」


 女の顔から、僅かに血の気が引く。


 「それにアレだ。身体を売る気があんなら、こんな開拓村で油売ってねぇで、デカい街にでも行きゃいいだろ」


 棗はナッツを一粒つまみ、口へ放り込む。


 「そっちの方が、テメェの望みも叶うんじゃねぇか?」


 そう言って、棗は何事もなかったかのようにミチェラーダへ手を伸ばす。


 「あ、あんたらそうやって日本の物を手に入れれるじゃない。こんな中世みたいな遅れた文明のクソみたいな世界で満足できるわけないでしょ。」


 女が叫び感情をぶつける。


 棗はミチェラーダを一口飲み、喉を鳴らした。


 「アタシが通販能力を持ってるのと、テメェが何もできねぇことに何の関係がある? 人の能力を羨む前に、テメェも何らかの能力を持ってんだろ。それを上手く使って自分で何とかしろ」


 そしてグラスをテーブルへ置く。


 「もちろんアタシは前にも言ったぜ? 対等な取引ならしてやるってな」


 「だ、だから身体を好きにしていいって言ってんでしょ! 私の能力はトランスフォーム。姿を別人に変えられる能力なの! こんな能力でどうしろっていうのよ!」


 「……あん?」


 棗が女を見つめる。


 「その見てくれも能力によるもんか?」


 「……え?」


 「はぁ……」


 棗は深いため息を吐いた。


 「だったら余計に抱く価値もねぇな」


 女の顔が引きつる。


 「以前、汐路の元カレの小物……名前は覚えちゃいねぇが、アイツにも言ったな。アタシらの能力ってのは、おそらくアタシら自身の思想や執着、経験……そういうモンから形作られてんだ。アタシなら銃に魅せられた人生の為、それを十全に扱う通販能力、華音は居場所を、マコは繋がりを、そして汐路はハンドクラフトで作った物を売るという自立だろうな。」


 棗は女の姿を一度だけ頭の先から足元まで眺める。


 「テメェの能力が『トランスフォーム』だってんなら、テメェは今まで、自分の容姿を武器にして生きてきたんだろうな」


 「ち、違う……!」


 「違わねぇだろ」


 即座に言葉を被せる。


 「自分自身を変えるんじゃなく、自分を別人に変えて、他人から何かを引き出す。そういう生き方をしてきたから、そういう能力になった。アタシにはそう見えるぜ」


 棗は肩を竦める。


 「だったら、その能力を使って自分で稼げばいい。別人になって働くなり、情報を集めるなり、誰かの代わりになるなり……使い道なんざいくらでもあるだろ」


 そして、女を真っ直ぐ見据えた。


 「なのにテメェは、能力を使って何かをするんじゃなく、身体を餌にして誰かに寄生しようとしてる」


 棗の声には怒気すらなかった。


 ただ、冷たい事実を述べているだけだった。


 「そりゃ、テメェが悪いんじゃねぇか?」


 女は何も言い返せず、唇を噛み締めた。

Concealed Self(隠された自己 / コンシールド・セルフ


服の下に隠し持っていたコンシールドキャリー(銃)と、偽りの姿(トランスフォーム)の下に隠された女の醜い本質を掛け合わせたタイトルっぽいかなとつけました。


相変わらず、相手の言動から勝手に知った気になって「断定」してしまう棗ですね。

彼女は観察力や勘が鋭いので、プロファイリングの途中で一見正しい推測に辿り着くのですが、そこから「他の可能性」を客観的に検証・模索することなく、自分の価値観だけで結論を一気に断定してしまう危うさを持っています。

この「自分の見たい世界・信じるロジックで世界を決めつける歪み」こそが、彼女が完璧な兵士になりきれない理由でもあります。


【ガンマニアのトリビア:アペンディクス・キャリーの危険性】

今回、棗がTシャツの下(パンツの内側)から銃を抜き出しましたが、いわゆる「アペンディクス・キャリー(Appendix Carry / 前頭部・盲腸付近での帯銃)」について少し補足です。


日本の任侠映画なんかだと、ヤクザがリボルバーを裸のままズボンの帯に直接突っ込むシーンがおなじみですが……あれを現代のポリマーフレーム&セミオート・ハンドガンでやると、玉や息子と永遠にお別れすることになります。


アペンディクス位置は、銃口がちょうど下半身の重要部位や、内股を通る大動脈の直上を向くことになります。ここで万が一暴発(ND)を起こした場合、数分で凄まじい失血死を迎える危険性と常に隣り合わせです。


そのため、実銃でアペンディクス・キャリーを行う場合は、トリガーガードを完全に覆うIWB(Inside the Waistband)と呼ばれる専用カイデックスホルスターの使用が絶対に不可欠です。


ただし、 ホルスターを使っていれば100%安全かと言われると、そうではありません。

銃をホルスターに戻す(リホルスター)際、たくし上げたTシャツや着衣の裾をしっかり手で押さえておかないと、衣服の裾がトリガーガード内に噛み込み、そのまま押し込んだせいで引き金が引かれて暴発するという最悪の事故が実際に多発しています。


銃を抜く瞬間だけでなく、銃をしまう瞬間まで完璧に衣服をクリアして意識を向けられるか。

コンシールドキャリー(隠匿携帯)の世界は、格好良さの裏にこうした泥臭い安全管理と技術が詰まっているのです。


因みに1911みたいなフルサイズのハンドガンなんかはアペンディクスキャリーには向きません。せっかくコンシールドしていてもその大きさで衣服にプリント(銃の形が浮き上がる)してしまいます。

なので作中で明言はしてませんが、棗がアペンディクスキャリーしているコンシールドハンドガンはスミス&ウェッソン ボディガード2.0 .380です。


最後までお読みいただきありがとうございます。


『面白かった』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、作品への応援お願いいたします。

正直な感想や好きな銃や出演させてほしい銃などコメントを頂けると嬉しいです

また、ブックマークもしていただけると嬉ションしながら1911を握りしめます。

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