Adaptive Doctrine
斥候であるラスティとAMPでの集音を活用する棗を先頭に開拓村への帰路を進んでいた。
今だ打ち付けた肘や手首、肩や腰が痛み本調子ではない棗は普段より身軽な格好だった。
腰には新たなハンドガン、プラティーパスを装着しているが身に着けたキャリアには重い7.62mmのマガジンはなくプラティーパスで使用する9mmダブルカラムのマガジンがモールに着けられたポーチに収められているだけだった。
そして来る時とは違い華音とマコはライフルやメアーズレッグを肩からぶら下げている。
後方からの奇襲を警戒し後ろを歩くグレッグ達も、棗の負傷を重く見ていた。
銃を持つ華音とマコの攻撃力自体はグレッグも理解しているが、棗がいるからこそ十全に発揮されているのだと理解していた。
棗達はもし何かあればグレッグ達を見捨てると来るときに言っていたが、グレッグにはもし今何かあれば棗達を守るという強い意志があった。
自分たちは傭兵だ。戦って死ぬその覚悟はできている。
だが棗達は異世界の武器の強さを持っているだけの市民だ。
何かあれば、まだ年若い少女のラスティを棗達に託し、自分たちは命を懸け壁になり逃げる時間を稼ぐつもりだった。
棗の耳が微かな異音を捉える。
それはミシンの音を軽くしたような、高速で何かを突く様な小さな音だ。
「おい、止まれ何か小さな音だがカタカタと鳴ってる。こりゃなんだ?」
棗と同じようにOps-coreAMPを身に着けていた華音もマコも耳を澄ませながら周囲を見渡し警戒する。
「なんか枯れ葉の上を昆虫が歩く様な音だね。」
そんな華音の言葉にラスティが声をあげた。
「森の掃除屋だ。」
それは子犬程度の大きさの蟻だった。
いくらスケール比で600倍になったところでキチン質の外殻は衝撃などに脆い性質をもっていた。
グレッグ達の鉄製の剣や槍でも簡単に破壊することができる。
だがそれの恐ろしさはまるで恐怖を知らないマシンのように前に侵攻し、進路にある生命を貪り食う群れというところだ。
「おい、名称はどうでもいい。どんなやつでどう対処するか教えろ。」
「子犬くらいの大きさの虫だ。一匹一匹は弱いが300から500くらいの群れでやってくるはずだぞ。」
棗はその数に顔をしかめる。棗はプラティーパスのみ22発入りのマガジンが既に銃に装着している物を含め4つ、1ショット1キルでも88匹しか始末ができない。
華音はライフルで120発ハンドガンで約70発、マコはかなりの量の銃弾を保持しているがチューブマガジンのメアーズレッグとXDだ。
ただ今日のマコはXDのマガジンを余剰になった華音の分も身に着け64発は持っていた。
ライフルのスコープを覗く華音がいち早くその姿を捉え発砲。
その一撃はたやすくその巨大な蟻を貫通し2匹まとめて吹き飛ばす。
「なっちゃん、脆いけど数が多い。 それに意外と早いすぐ接近されそう。」
5.56mmの銃声がまるでフルオートのように鳴り響く。
そしてハンドガンより広い射程をもつマコのメアーズレッグも火を噴きその圧倒的なストッピングパワーで蟻を吹き飛ばし始める。
先頭の蟻との距離はおおよそ35ヤード程、すでにハンドガンの射程に入っていた。
「華音はできるだけ遠くのを狙え。マコは.357が切れたらXDで応戦しろ。 グレッグ達は自分らで考えろ。アタシらの前に出るなよ?」
ブレイクインどころか、まだ一発も試射していないPlatypusを引き抜く。
普段なら一瞬で抜き放つその動きも、今日はマコと変わらないほど鈍かった。
オプティックカットを施されたスライドにはドットサイトが搭載せれ、さらにはオプティックファイバーのハイトサイトに変更し1/3コ・ウィットネスも意識されている。
度重なるミスを重ねたためドットサイトの電池切れや結露、故障を想定しドットサイト越しからでもアイアンサイトでのサイティングをできるようしていた。
9mmというマイナー弾、普段扱うメジャーとは比べ物にならない制御しやすいリコイルだったが、それでも打ち付け負傷した手首や肘に響き僅かに顔をしかめる。
そしてグレッグ達も棗達に任せ突っ立ってるわけではない、ラスティは短弓を、ハンスは弓を構え巨大な蟻に向かい矢を放ち、グレッグと槍使いのルドヴィクは接近された時の為に武器を構え待機し、ミアは飛礫を魔法により飛ばし応戦する。
たった一撃でどの蟻も頭部や胴体を吹き飛ばされ、マコの.357マグナムの一撃では木っ端みじんに爆散し姿を消すほどだった。
だが、いま必要なのは強力な一撃ではなく、手数だった。
怪我の功名ともいえるのは棗がTAC ULTRAからPlatypusに変更したことによって継戦能力が上がっている事だった。
徐々に蟻との距離が詰められていき棗達との距離は僅か10m。
棗は新たなマガジンへとリロードをすると同時に身体を斜めに向け銃を斜めに傾け引き寄せた。
C.A.R それは至近戦での素早いサイティングを重視した構えだ。
銃を身体へ引き寄せて構えるC.A.R.は、リコイルを腕だけでなく体幹にも分散できる。そのおかげで、痛めた肘や手首に走る衝撃は、アイソセレスより幾分ましだった。
「棗! あのデカいのが女王だ。アレを殺せば一時的に混乱する!」
グレッグの助言に反応したのは華音だった。
ライフルを構える華音は100mほど先の大型犬ほどの大きさの禍々しい姿をした女王蟻に銃口を向けいつものファイブタップを行う。
頭部と胴体を加えた体積の数倍は大きな臀部に3発の5.56mmが命中し破裂させ、さらに頭部にも一発、胴体にも一発命中し女王を吹き飛ばす。
女王を失った蟻はとたんその顎を鳴らしながら右往左往し始めその統率を失っていく。
「あとは俺たちに任せろ!」
グレッグとハンスが武器を構え、狼狽える蟻に向かい突進し ハンスもまた弓から片手剣に持ち直し駆け始める。
「ったく、この調子じゃぁ接近戦をするグレッグ達とのドクトリンを考えにゃならねぇな。」
華音のDDM4は100発の連続射撃により赤熱化しておりマコや棗のハンドガンも銃身がかなりの高温になっていた。
後処理というにはやや数は多い、このまま撃ち続ければブレイクインを済ませていない棗のPlatypusは不調に陥る可能性もあった。
今回だけは棗もグレッグ達に助けられたと感じていた。
ハイトサイト
サプレッサーなどをつけるとアイアンサイトにサプレッサーが被りサイティングしにくくなったり、アイアンサイト自体が完全に隠れてしまい使えなくなります
その為通常のアイアンサイトよりも高い位置まで伸びている物をハイトサイトといいます
1/3コ・ウィットネス
ドットサイトのレンズの高さ1/3にアイアンサイトを合わせてある状態です。
ドットサイトのレティクルとサイトを完全に合わせるよりも視界が広く取れます。
余談
余談ですがこの話を書くにあたって私は自分の肩や肘、手首を痛めた状態でC.A.Rを試しました。
肘や手首への負担は減ってると感じたので多分あってるはず
もちろん日本在住なのでエアガンで試してます。
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