表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/62

Steel Soul, Iron Cage

 翌朝。棗はまだ眠そうに視線を彷徨わせているマコを膝の上に抱きしめながら、簡単な朝食をとっていた。

 いつものようにマコが腕を振るった温かい料理ではなく、今朝はただ必要なカロリーを摂取するためだけのチョコレートバーとプロテインバー、そしてマグカップに注がれたインスタントコーヒーだ。


「てかさ、なんで日本のインスタントコーヒーは、アメリカのコンビニにあるバリスタマシンよりうめぇんだよ。日本のコンビニのバリスタマシンに至っちゃ、そこらの小洒落たコーヒーショップより美味いのに、一ドルしかしねぇんだぞ? 意味分かんねぇ。」


 「まぁ、日本ってそういう細かいクオリティに変に拘るよね。ネットでも、海外からの旅行者が日本のコンビニ飯に驚いてる動画、よく見かけるし。」


 呆れたように、しかしどこか誇らしげに華音が応じる。


 「だなぁ。ま、そのおかげでアタシは今、毎日美味いもんが食えてるわけだ。コンビニの惣菜すらあのレベルの国だからこそ、マコも華音も美味い飯が作れるんだろうな。」


 はは、と笑いながら、棗は自分の膝の上でまだコックリコックリと船を漕いでいるマコの唇に、からかうように人差し指をちょんと当てた。

 すると、マコは完全に寝ぼけたまま、棗の指を小さな唇でハムりと咥え、まるで哺乳瓶の乳首でも吸うようにチュウチュウと愛らしく吸い始めた。


「マコちゃん、それおしゃぶりでも哺乳瓶でもないからね?」


 対面に座る華音から、完全に冷ややかなツッコミが飛ぶ。


 「いや、なんつうかさ……マコはアタシのなかに僅かに残ってる母性ってやつを、容赦なくくすぐってくるんだよなぁ。嫁なのに自分の娘なんじゃねぇかって思えちまう」


 「ふにゃ……?」


 指をパッと離され、口元を寂しそうにすぼめたマコが、ようやく少しだけ覚醒したようにパチパチと瞬きをした。


 「お?やっと目が覚めたか? そんなに吸いたきゃ後でアタシの平らな胸だろうが華音の胸だろうが吸わせてやっから飯を食って支度を済ませちまおうぜ。」


 「ほら、マコちゃん。なっちゃんのちっぱいも良いけどママのおっぱいの方が大きいよ。」


 そう言いながら華音はマコに向け胸を張り、その隣で汐路はコイツラなにやってんだという目を向けていた。

 だがそれと同時にやはり棗が居るだけで空気が違うなと3人の絆を感じ、そこに踏み込めないことをやや寂しくも感じる。

 自分はまだ、その強固な輪の外側にいる。彼女たちの温かい世界にどうしても一歩踏み込めない己の立ち位置を、汐路は少しだけ寂しく、視線を落とした。

 同時に、汐路はある疑問を抱く。 なぜ華音もマコも、棗のあの冷酷なまでの戦闘ドクトリンや、食事の量にまで戦術的判断を持ち込む異常なまでの拘りに、何の疑問も抱かないのだろうか、と。

 その理由は、棗という人間の、元来の性質に起因していた。

 アメリカでは日本人として扱われ、日本ではテキサス育ちの荒々しい文化ゆえに周囲から浮き上がる。どちらの国にも本当の居場所を持てなかった棗は、根っからの思想家だった。 国家や血筋ではなく、自分が愛する銃、好む南部料理の歴史やルーツといった確固たる己の定義を何よりも重視し、普段からその哲学を熱く語るのが彼女のアイデンティティだったのだ。

 だからこそ、華音もマコも日本に居た頃から彼女のその姿を見ており、現在の異常なドクトリンへの傾倒を見てもいつものルーツを気にする思想家ななっちゃんだとしか思わなかった。

 女神のサポートは棗に新たな思想を与えたわけではない。もともと彼女の中に存在した価値観を、異世界で生き抜くための最適解として過剰に研ぎ澄ましただけだった。

 何より恐ろしいのは、棗本人すらも「これは自分の確固たる思想だ」と頑なに信じ込んでいるため、自分がシステムの檻に囚われていることに、永久に気がつけないという事実だった。

 

 「それより、棗。なんか向こうが大変なことになってるわよ。」


 汐路が指を差したのは、棗の用意したカロリーバーを手にまるで飢えた難民のように食べるミアやその味に感動し涙すら流すハンスやラスティ達だった。

 この世界の携帯食は、定番の干し肉などがメインだ味など二の次の飢えをしのぐ代物だった。

 棗も手渡すときに、マコの手料理ではないから期待するなといい手渡している為グレッグ達もまるでこねられた粘土のようなソレに期待はしていなかった。


 だが棗が手渡したプロテインバーやチョコバー、ヌガーなどはこの世界では貴重な甘味だ。

 普段はクールなミアですら、我を忘れアメリカの刑事ドラマで定番の重ねられたウェハースをチョコでコーティングした|Nutty Buddyナッティ・バディを抱え込んでいた。


 「あー 中世に生きてるやつらにゃチョコバーはちょっと刺激的すぎたか?」


 「てか、棗。なんでキットカットじゃないのよ。スニッカーズはギリギリわかるんだけど他のは聞いたこともないわよ。」


 「スニッカーズもミルキィウェイもスリー・マスケティアーズもナッティ・バディもアメリカの映画やドラマだと定番だよね。よく警察がパトカーで齧ってるやつだよ。」


 「てか、棗ならあのなんていうんだっけ?袋詰めされた軍隊の携帯食出すかと思ってたわ。」


 汐路は素朴な疑問を口にする。


 「あん?MREの事か? ありゃ糞不味くて食えたもんじゃねぇし化合物塗れだぞ。まだチョコバーの方がマシだ。さてと、さっさと村に戻ろうぜ? おい、いつまで飯食ってんだ。10ドルそこらのチョコバーだいつでも売ってやるからさっさと帰るぞ。」

59話で書き忘れた棗の思想家である部分を無理やりいれました


アメリカの警察と言ったらやはりチョコバーとダンキン・ドーナツが定番ですよね


最後までお読みいただきありがとうございます。

『面白かった』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、作品への応援お願いいたします。

正直な感想や好きな銃や出演させてほしい銃などコメントを頂けると嬉しいです

また、ブックマークもしていただけると嬉ションしながら1911を握りしめます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ