Standardization
ゴブリンやオークの死体が次々と魔石を抜き取られていく中、棗は購入したばかりのプラティーパスのマガジンに9mm弾を購入し詰めていく。
40ドル程の安価なGLOCKのマガジンには棗が最も信頼し長年愛用しているフェデラルの後にHSTへと進化する系譜の古いホローポイント,ハイドラショックが込められていた。
現在のアメリカでの主流はSpeer Gold Dotや同じフェデラルでもHSTに切り替わっている。
だが棗があえてフェデラルハイドラショックを使用するのは1911プラットフォームという設計の古い銃を使用しているからだ。
最新のホローポイント弾は、先端の穴が大きすぎて給弾斜面に引っかかってジャムを起こすことがある。
しかし、ハイドラショックは比較的丸みを帯びた伝統的な形状をしているため、現代的な銃と比べて角度が急なフィードランプの1911プラットフォームでも比較的スムーズに給弾される、そこには棗が最も重視する確実な作動の信頼性があった。
サブであるハンドガンをRIAのTAC ULTRAからPlatypusに変更し、メインのM1Aでの瞬間火力とPlatypusでの継戦能力を手に入れた棗はさらにシューターからソルジャーへの最適化を図っていく。
現状棗が使用するギアはキャリアとしては軽量のチェストリグだ。
競技ではベルトとレースホルスター、スピードマガジンポーチくらいしかつけない為、サバゲーでもチェストリグの使用にとどまっていたが多くのマガジンをキャリーすることを優先していく。
候補に挙がるプレートキャリアは二つ。一つは、チェストリグと同じアギライト製のフラッグシップ『K19』。肉厚なパッドがもたらす圧倒的な重量分散は、今も痛む身体には魅力的だった。
だが、棗の指は迷わずもう一つの画面をタップする。
ドイツのプロフェッショナル向けブランド、|タスマニアンタイガー《Tasmanian Tiger》の『プレートキャリア QR LC ZP IRR』。
「アギライトは頑丈だしクッションも最高だが……ショルダーが厚すぎる。ライフルのストックが滑る感覚は、アタシの性に合わねぇ」
棗の最大の武器は、銃口を下向けた状態から、コンマ38秒で標的を射抜く反射速度だ。
それは1インチ、コンマ1ミリの狂いもない完璧なフォームの再現によって成り立つ。
着心地のために、シューターとしての最大の武器を殺すわけにはいかなかった。
それにZPシステムによる背面へのポーチの取り付け、華音やマコの予備弾薬を背につけることにより二人の継戦能力もあがることになる。
|近赤外線反射マネジメント《IRR》仕様はこの世界で暗視装置を持つ存在が居るかは不確定だが似たような能力をもつモンスターの存在も否定できない。
多少値段は張ってしまうが、様々な対策をしておくべきだと棗は考えていた。
「なっ…なっちゃん。わっ わたしも、装備かっ変えたほうが良いかな?」
棗に腰に抱き着いていたマコが顔をあげ、小動物のような瞳で見上げる。
「あん? 別に今のままで構わねぇよ。そりゃマコの適性を考えりゃ狙撃用のライフルや装弾数の多いピストルカービンを持った方が良い。
だがな、アタシらはあくまでも一般人だモンスター退治屋でも兵士でもねぇ。こうしてモンスターの巣に突入するなんざそうそうねぇからな。」
リロードの遅いマコにはグロックの33発のロングマガジンを使用出来るピストルカービンと6.5CMを使用する遠距離からの狙撃が最も適していると棗は考えていたが現状300から500メートルという長距離狙撃を行うような状況に陥ることはなかった。
だが棗はそれでも使うかわからないソレを余裕があるときに用意しておくべきだと頭の片隅にメモをしておく。
「さて、そろそろ腹も減ってきたな。昼飯も食ってねぇ、ちょうどおやつの時間だろ。」
そう言いながら棗はマコの頭を撫で上げる。
今からマコが食事を用意すると時間がかかるため拠点への突入時、棗はセーフハウスに避難する汐路に軽食の用意を頼んでいた。
それがマコの胸をざわつかせる。
棗の血肉となる食事をつくるのは自分の特権だ。華音すら踏み入れられない聖域なのだ。
マコはぎゅっとこぶしを握り、そのざわつきを抑える。
フェデラル・ハイドラショック(Federal Hydra-Shok)
アメリカのフェデラル・プレミアム社が1989年に開発した代表的なホローポイント弾(JHP)です。
着弾時に弾頭中心のセンターポストがキノコ状の展開を均一に促す設計で、自己防衛や警察の制式弾として長年高い評価と信頼を得ています。
|タスマニアンタイガー《Tasmanian Tiger》
私もベルトやポーチなどで愛用しているドイツのブランド。
東京の中野にはタスマニアンタイガーの正規輸入代理店『ユーロサープラス』があり品ぞろえが豊富です。
|近赤外線反射マネジメント《IRR》
IRRは、ナイトビジョン(暗視装置)に見つかりにくくするためのステルス技術です。
主にストーングレーオリーブ(SGO)というカラーのモデルにこの加工が施されています。
通常のナイロン生地やプラスチックパーツは、ナイトビジョンを覗いたときに真っ白く光って浮き上がって見えますがIRR仕様のギアは、近赤外線の反射率を周囲の自然環境(草木など)と同じレベルに調整・抑制することで、暗闇でナイトビジョンで見た際に、周囲の景色に完全に同化してターゲットになるのを防ぎます。
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