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Paradigm Shift

 タトゥーに塗れた両腕を晒し、身軽な恰好の棗はわき腹や二の腕についた打撲の跡を見つめていた。


(一発あたりの火力は欲しいが、装弾数も捨てれねぇ。汐路を戦力に加えるのも危なっかしい。どうすりゃいい? 何かいい手はねぇか……)


 棗の指先には、ボブたちから叩き込まれた兵士の技術が染み付いている。だが、その本質はどこまでいっても競技射撃者(コンペティター)だ。彼女が磨き上げてきたドローも、エイミングも、リロードも、その多くはタイマーのBEEP音から始まるステージ攻略のために最適化されていた。

 彼女が頑なにスティールフレームの1911モデルを愛用し、大口径にこだわるのも、単なる懐古趣味ではない。IDPAやUSPSAといった競技における『スコアの稼ぎ方』が、彼女の血肉となっているからだ。

 リコイルの穏やかな9mm弾(マイナー)よりも、跳ね上がりのきつい|.40S&Wや.45ACPメジャーの方が、着弾時のポイントが高い。その暴力的な反動をねじ伏せ、次弾を最速で叩き込むために、彼女は重い鉄のフレームを選び続けてきた。

 テキサスのレンジで何万発と撃ち込んできた相棒(1911)は、コルトではなく『SIG 1911 Match Elite』。

 かつてFBIが採用し、反動による精度低下を理由に9mmへ回帰した.40S&W弾。だが、90年代のコンペティターたちは、そのメジャー弾としての価値に熱狂した。ボブが手に入れ、棗が長年愛用してきたその銃は、彼女にとって勝利のための最適解だったはずだった。


 二の腕の青あざを親指で押し込み、鈍い痛みを確認しながら、棗はふぅと紫煙を吐き出した。先のトロール戦での手応えが、どうしても脳裏から離れない。


 「.357マグナムのTRR8にしろ、アタシのTAC ULTRAにしろ、ハンドガンじゃあのクラスのデカブツを相手にするにゃ根本的にストッピングパワーが足りねぇ……」


 脳裏に浮かぶのは、心臓(ハートショット)を撃ち抜かれてなお狂い狂暴に突撃してきた巨躯だ。モンスターの強靭な肉体とイカれた再生能力の前では、競技用のリコイルコントロール技術も、精密な狙撃も、決定打にはなり得なかった。

 

 「コンペティションのルール(スコア稼ぎ)じゃねぇ。この異世界のクソッタレなリアルを生き残るための、もっと『暴力的で確実なドクトリン』が必要だぜ……」


 棗はガシガシと頭を掻き毟り、まだ見ぬ未知の脅威に対抗するための、新たなギアの構成を脳内のブックマークから手繰り寄せ始めた。

 結局のところ、この異世界の不条理を実戦レベルで叩き伏せられる火力を出せるのは、自分しかいない。

 7.62mm NATO弾を吐き出すM1A。その圧倒的なストッピングパワーをメインに据える以上、バックアップとなるハンドガンには、一発の重みよりも継戦能力、すなわち装弾数の多さが求められる。

 真っ先に脳裏をよぎったのは、スタッカートに代表される『2011』プラットフォームだった。

 1911の操作性をそのままに、ダブルスタックマガジンによる多弾数化を実現した競技者の理想。だが、棗はその思考を即座に、そして冷徹に切り捨てた。


(……ねぇな。マガジン一本に2万も出せるかよ)


 2011の専用マガジンは、一本で100ドルを軽く超える。現在愛用しているシングルスタックの1911マガジンが30ドルから40ドル程度で手に入ることを考えれば、そのコストパフォーマンスは最悪と言っていい。

 予備マガジンを数本揃えるだけで、ちょっとした中古車が買えるような金額が飛んでいく。スパチャとフリマで食いつないでいる現状、そんな貴族の道楽に付き合っている余裕は一銭もなかった。

 マッスルメモリーに刻み込んだ1911のトリガープルとグリップアングルを維持しつつ、安価で信頼性の高い多弾数マガジンを運用する手段はないか。

 焦燥感に駆られながら脳内のカタログをめくっていた棗の指が、ある一点で止まった。

 それは、かつてテキサスのレンジでボブや少佐が「実用性ならこれだ」と、半分呆れたような、半分感心したような顔で語っていた異端の銃。


「……そうだ。あいつがあったな。」


 1911の魂を持ちながら、世界で最も普及し、最も安価なGLOCKのマガジンを使用する、究極の混血児(ハイブリッド)

 棗は迷うことなく、異能のインターフェースを通じてその銃を購入した。


「なっちゃん、それは?」


 セーフハウスから戻ってきていた華音が棗の新たな相棒となるソレを興味深そうに見つめ、マコは棗の隣にしゃがみ込み、痛ましいわき腹の痣に唇を近づけ舌を這わせる。


 「んっ? コイツか?コイツはステルスアームズのプラティーパスだ。こいつの特徴はなんつっても1911の操作性で安価なグロックの9mmダブルスタックマガジンを使えることだな。」


 大口径(メジャーファクター)に拘る棗が9mmを使うことに華音は首を傾げた。


 「あれ?なっちゃんも9mm?火力担当がなっちゃんで手数担当が私じゃなかったの?」


 「それは変わらねぇよ。サブには継戦能力の高いダブルスタックのマガジンを採用しようと思ってな。そして今回みてぇに特殊弾が必要な時にアタシと華音たちの口径が違うのも問題だ。

だからアタシも9mmを使うことにしたのさ。もちろんあの開拓村のなかでのんびり生活してるときは常にM1Aを担いでるわけじゃぁねぇから10mmをキャリーしたりするときもあるだろうがな。」


 「私も装備を変えたほうが良い?」


 「あん?華音は5.56mmのライフルで完成されてるだろう?サブがコンシールドキャリーだが別にフルサイズと極端に変わるわけじゃぁねぇ、問題ねぇよ。」


 そう言いながら棗は腰にしがみつき丸で猫のように痣に舌を這わすマコの頭を撫で上げた。


 「マコ、舐めたところで早く治るわけじゃぁねぇだろ?それにムラついてくる。開拓村に戻るまでエロいことできねぇんだぞ。」

IDPAやUSPSAといった競技における『スコアの稼ぎ方』

IDPAやUSPSA、IPSCにおいてA点はメジャー弾もマイナー弾も5点ですがA点から外れたときの減点がメジャー弾の方が低く有利となっています。

(IDPAは厳密にはUSPSAとは少し異なり純粋なタイムでの得点となります)


マイナーとメジャー弾

便宜上9mmをマイナー。.40や45ACPをメジャーファクターと記載しましたが厳密には9mmでもメジャー弾としてオープンディビジョンでは使用ができます。


射撃競技置けるパワーファクター

パワーファクター = 弾頭重量 (グレイン:gr) × 弾頭初速 (フィート/秒:fps) ÷ 1000


マイナー ファクターでは 多くの競技で最低 125 以上が要求されます。

反動が小さく連射しやすいため、正確なエイミングに有利です。

ちなみに精密射撃に使われるような22LRや17HMRなどは最低口径の規定(9mm以上)やパワーファクターの条件を満たせません。


メジャーファクター は大口径の拳銃などが該当し、最低 160 または 165 以上が必要です。

強力な反動をコントロールする技術が求められます



SIG 1911 Match Elite

シグ・ザウエルから販売されている1911プラットフォーム

Match Eliteの名前の通りDuty向けではなくコンペティター需要の銃となります

この銃が販売された1990年代ごろはコンペにおいて1911の.40S&Wが多く販売された時期でもあります

厳密にはSIGの1911は2004年にGSRシリーズ、MatchEliteは2010年くらいと少し遅れて登場してます。


 |ステルスアームズ《Stealth Arms》のプラティーパス(Platypus)

トロール討伐の初期から考えていた棗のコンペティターからソルジャーへの最適化において出したかった1911モデル

伝統的なシングルアクション撃発システムと、グロックやP320の大容量ダブルカラムマガジンを組み合わせた革新的なカスタム・ハンドガン

ステルスアームズの1911 platypusビルダーからスライドの長さやカラーリング、トリガー形状などさまざまなカスタム注文が可能です。

私の好みはブッシングバレル、5インチ、グロックマガジン、スリーホールトリガー、マグファンネルの追加、スリーフィンガーグローブのグリップにしたカスタムですね。

ちなみにPlatypusとはカモノハシの事です。

余談ですがplatypusの他にはBersaのM2XIを候補にしていました。


棗の1911プラットフォームの拘り

銃を実際に扱ったことない方は9mmにするならグロックでいいじゃん。とかスチールフレームならワルサーPDPやスミス&ウェッソンM&Pのスチールフレームモデルでいいじゃんと思うかもしれません。

多くの銃を扱う作品では主人公がコロコロ銃を買えたりグロックの9mmじゃ火力が足りないから50口径のデザートイーグルに変更などという描写があるでしょう。

ですが実際にコンペティションに出るレベルになると考えは変わります。

とくに私の作品の棗はコンペティターでありファーストショット.72secから.68secを叩き出すという上級者帯です。

1911からグロックに銃を替えた場合、棗は確実にファーストショットの速度も精度も落ちます。

私も1911プラットフォームでなら.77secを出せますがPDPの精度が良い、トリガーのキレが良いと言っても確実にサイティングの速度や精度が落ちます。

なのでコレクションとして他のプラットフォームの銃を買っても棗は戦闘や護身の銃は1911プラットフォームからの変更はないです。


最後までお読みいただきありがとうございます。

『面白かった』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、作品への応援お願いいたします!

正直な感想や好きな銃や出演させてほしい銃などコメントを頂けると嬉しいです

また、ブックマークもしていただけると嬉ションしながら1911を握りしめます。

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