Bad Call
足元には無数の薬莢と、血だまりに沈むゴブリンとオーク。
血と硝煙の匂いが充満する中、棗は警戒を解いた。
弾薬の切れかかったM1Aの銃口を下げ、ポケットから高級感のある平たい紙ケースを取り出しいつものようにエスクリオを咥え、オイルライターで火をつける。
「片付いたな。あとはあの洞窟の中だけだがこんだけ激しい戦闘の後だ。もう中には残ってねぇだろうな。」
「だといいなぁ。入んなきゃ駄目だよねぇ?」
日の光が届かない天然の洞窟。
その中がどうなっているかは分からないが、衛生的でないことだけは容易に想像できる。
華音は顔をしかめた。
「なっ なっちゃん。そ、それは良いけど‥‥‥も、もう弾がないよ。」
キャリアやベルトなどにこれでもかとつけたホルダーにはほとんど弾薬が残っておらず最後の乱戦でのみ使用した.410のバードショットのシェルが数発残っているのみだった。
とはいえマコはまだ唯一銃を3丁携帯しており腰に付けたスプリングフィールドXD mod.3はまだフルに装填されたままだ。
だが逆に言えば3丁の銃を保持している為9mmは銃に装填されている分と予備の1マガジンしか所持していなかった。
「だな、アタシも7.62mmは尽きてるし10mmオートも残り数発だ。華音も同じだろ?」
「うん。私も5.56mmは弾切れ。9mmが1マガジンってところ。」
「どのみち狭い洞窟の中だ。取り回しにくいライフルはセーフハウスに置いておくか。華音はマコのAxeかmare's legどちらかを借りな。」
そう言い棗が能力を使い弾薬を購入し、華音がM1AとDDM4V7を持ち能力を使いセーフハウスの扉をくぐっていく。
セーフハウスの中には各種弾薬が大量に保管されているが棗はそれを、もし自分が二人を残し死んだときの為の備蓄と考えていた。
「あいかわらず凄まじい音と威力だな。」
帰り血に塗れたグレッグとその仲間を見て棗は顔をしかめた。
「きたねぇ・・・。残るはこの洞窟の中だけなんだが……。一緒に突入したらアタシの武器の轟音でダメージを受けるだろうからな。グレッグ達はこいつ等から魔石を取り出し死体の処理でもしててもらおうか。」
「棗達と行動するようになってからすっかり雑用係が身についちゃったね。」
短弓をしようし戦うラスティも多少の返り血に塗れながらそう茶化すようにグレッグに笑いかける。
グレッグ達は華々しい実績を持っていないがそれは決して実力がないわけではない。
この世界の人間種とモンスターではゲームや漫画とは比べ物にならない差がある。
アニメのように瞬間移動のような目に見えない高速戦闘も残像の残る不可思議な移動方法も、頭上に掲げた剣からビームのような剣撃を放てることもないのだ。
棗達ですらライフルをもってしてもオークをたやすく倒せる雑魚とは考えていない。
単純にグレッグ達に華々しい実績がないのは『受けた仕事を手を抜かず地道にやる』などと言った地域密着型の方針と、その方針に賛同し信頼できる人物のみでチームを構成するという点で5人という少ない人数の為だ。
華々しい実績のある傭兵団というのは大規模であり人員の入れ替わりも激しい。
弾薬をマガジンに補充していた棗がピクリと反応し洞窟の暗闇をみつめる。
「おい、なにかでけぇのがくるぞ!」
棗が声をあげた直後洞窟から唸り声が聞こえ、ハーフエルフのミアの人間にしてはやや長い笹耳が動いた。
「これってまさか……。グレッグ、トロールがいる!」
ミアが顔を青ざめさせながら叫ぶと同時にのそりとその巨体をトロールが洞窟の奥から現した。
その姿を確認した棗は冷静に素早くホルスターから銃を引き抜き、以前ミアに語った遠距離をすて素早いサイティングと近距離での精密性を重視したC.A.Rのスタンスをとりトロールの顔面に向け3タップしそのままアイソセレス・スタンスに移行し射撃を続ける。
華音もマコも棗ほどではないが素早く行動を起こし、棗に続いて発砲を開始する。
オークの3mの巨体をはるかに超える4mほどの巨人に華音の放つ.410Axeのスラグ弾とマコの放つ.357マグナムノーズフラットがその巨体に着弾し肉をはじけさせた。
だがその胸部や腹部の傷跡はブクブクと泡を立て煙を上げはじめる。
傷の治りが早い言うには異常な速度で肉が盛り上がり元通りに戻っていく。
「なっ!? どうなってんだ? おい こいつぁどういうことだ!?」
不可思議な現象に棗が思わずグレッグ達に叫んだ。
「トロールは強力な再生能力を持ってるモンスターだ。そいつを倒すには再生能力が切れるまで攻撃を与え続けるか、頭部を破壊したり首を跳ね飛ばすしかない。
炎で焼けば一時的に再生を抑えることができるがミアはエルフだ。炎の魔術は苦手だぞ。」
「fuck!」
おもわず棗の口からFワードが吐き出される。
トロールに頭部を破壊できそうな威力を持つ12ゲージのショットガンや7.62mmのライフルは華音のセーフハウスの中だ。
取りに行くともなるとその間棗とマコの二人で抑えなければならない。
そうなると装弾数の少ない現状の装備では押し切られる可能性が出てしまっていた。
「くそがっ。しくじったぜ。」
それでも棗はTAC ULTRAのマガジンを交換すると片手で構え、精密な射撃を諦めリコイル制御の慣れで抑え込みトロールの巨体故に狙いやすい胸部に射撃を集中させながら左手で異能の販売サイトのページを開き、この状況を打破できる物を選択していく。
棗が購入したのはHAVOCの Halo HEI-Incendiary 9mm弾だ。ブリスターケースにたった6発しか入っておらず弾頭が青い特徴的な弾薬だった。
「6発で29ドルかよ。これで効果なかったら笑えねぇな。 華音、マコこいつを使え。」
棗がそういうとまずはマコがそのブリスターパッケージを受け取りパッケージから取り出すと即座にXDを抜き取りトロールに向け連続で放つと空になったマガジンへとその特徴的な青い弾薬を装填していく。
棗や華音ほど銃器に詳しくないマコだったが、この状況下でわざわざ購入し使用するソレが伊達や酔狂で弾頭が青いとは思えなかった。
つまりは何らかの特殊な弾薬ということは明白だ。
マコが確認の為にちらりと棗に顔を向ける。
「そいつはHAVOCのincendiary弾だ。要するに焼夷榴弾みてぇなもんだ。ソイツであの不細工な顔面を狙え。」
マコは即座に銃を構える。9mm弾の為発砲時に周囲に影響を及ぼすことはないとわかってはいるが棗からやや距離をとり発砲。
着弾と同時にカメラのフラッシュのような一瞬の閃光があがり爆発音がなる。
一瞬とはいえ1000度を超え約1200度にも達する高温によりトロールの穿たれた傷跡は焼けたんぱく質の変質による再生阻害がおこる。
たった6発の貴重なincendiaryの弾が矢継ぎ早にトロールの顔を穿ち肉を弾けさせ骨を露出させていく。
その間に華音も9mmをトロールに浴びせ、空になったマガジンへと同じく青い弾頭を詰め、棗はというと燃焼により再生を阻害されているトロールに向け致命打を叩き込むためにTAC ULTRAを両手で構え狙っていた。
前日、棗が語っていたように特殊な弾薬というのはその特殊性により万能ではない。
着弾時に小規模な爆発も置き貫通力などはフルメタルジャケットはおろかホローポイントよりも劣っていた。
だがその高温の一瞬の発火と爆発は肉を引き裂き、その傷口を焼き確実に再生を阻害している。
目も潰れ普段なら即座に行われる再生が起きないことで混乱するトロールへ銃口を向けた棗は致命打をあたえるためマコが集中砲火を浴びせた場所に10mmを確実に叩き込みトロールを沈黙させた。
HAVOCの Halo HEI-Incendiary
HEI (High-Explosive Incendiary)
アメリカの一部(カリフォルニア、フロリダ、イリノイなど)でも使用は厳しく制限、または禁止されています。当たり前ですが45ACPを使用するライフルに使うからと日本に輸入しようとしたら確実に捕まります。というか使用出来る一部の州がおかしいと、考えたほうが良いものです。
焼夷弾とは銘打ってますが着弾したからと言ってナパームのように燃えるわけではありません
カメラのフラッシュのような一瞬の閃光と爆発です
物にもよりますがその温度は1000~1500度らしいです。
当たり前ですが危険なためシューティングレンジにおいてはないと思います。
(今のところ見たことないだけでおいてあるところもあるかもしれません。)
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