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第七十五話:みんな結婚だ


 サン王国なる国の使節との会見から一ヶ月以上が経ち季節は十二月

農業国の我が国は実にゆったりした状態だ。


「それで猫の話だと魔法を使っている人間を見たことが無いわけだな」

 

「そうです。それに猫ちゃんの生まれ故郷は一日二回のご飯を三十五回

繰り返した所にあって国の南の方が寒いそうです」


「船の中では?」

「北の暖かい地域を越えた後に更に暑くなって

この島についてご飯を十二回くらい食べた頃に

やっと過ごしやすくなったと言ってます」


 猫と会話出来るタマコは便利だが

普通に考えると南半球からやってきたと考えるべきか。


 東京からオーストラリアのシドニーまでは定期路線で半月程度と

聞いた事がある。八千キロを半月だから時速二十キロ以上

コンテナ船は二十四ノット程度出ると聞いているし

そうなると時速四十四キロか。


 そもそも我が国の南端はここから一万二千キロ程度はある。

 地球ならば南部は赤道を越えていると考えるが普通だけど

ここは地球よりかなり大きいようだし南半球からやって来たのか。 


「リリーナ、他には何か言ってないのか?」

「食糧は豊富で魔物がいっぱい居ると言っていましたね」

       

 おとぎ話に出てきた南大陸に近いようだな

先にオーガスに手を出したという事は南東よりにあって距離的には

我が国からは五千キロ以上は離れていると見ていいか。


         

 仕事に向かうか。


「ノア様、敵船を調べた結果ですが武装は全て火薬で動力は重油

最大速度は時速二十五キロ程度で巡航速度は十八キロ程度です」


「我が国の脅威になりそうな物は?」


「プラズマ弾より結界が全くない分フレア弾やトルネード弾の方が効果が

ありそうです。敵の主砲の最大射程は五十キロ程度で対空砲の射程は

三キロ未満で精度も悪いという結果です」

      

威力はありそうだが航空機の敵じゃないな。

問題は数を揃えて攻められた場合だけか。


「まあ、南部の警戒を強めよう」


「それと地図と海図がみつかりました」

「さすが新造艦といった所か」


「これですが、海図はサンとオーガスの間の物だけですが、サン王国は

オーガス大陸の南端から二千キロ程度で国土はオーガス大陸とサントスを

合わせた国土と同等で中央部は砂漠地帯のようですね」


 南は何も無い所を見ると南極と接しているのか?

 オーガス大陸と比較するとフリーダムより大きい国のようだな

東西に長くて北西から南東にかけて太い線が引いてある。サン王国が東側で

赤い方の南西部が敵国で戦争しているんだろう。

 


「この二カ国と思われる国々と全面戦争するとなると

南部だけでも攻撃機を四千機は配備しないと我らが食われるぞ」


「海図には我が国との中間に島が八つありますし戦争になりそうな場合は

島を占拠して敵の補給路を断ちましょう」


 西の端に描かれている一番大きい島は日本程度の大きさだが仕方ないな。



 

 この音はヒルダの靴の音だな。

 

「ノア様、よろしいでしょうか?」

「構わないよ」


「全ての難民が金額は低いですが税を納めたので領民証を発行しなければ

いけなくなりましたが、これを機に学院のカードのように魔法技術を

駆使したカードへの変更と細分化を行っては如何かと思われます」


 技術者やクレア領から着いてきてくれた人間の優遇は仕方ない

カード化か悪くない。


      

「それで区分方法は?」


「はい、数字をつけると差別と言われそうなので色で分けたいと思います

我々が紫、技術者が赤、軍人と職員とクレア領から来てくれた者が緑

本国での居住が三年以上の者を青、それ以外を水色で新領土の人間は

黄色と黒に分けます。外国人は白です」


「八種類かそれで問題はないよ」

  

 多分だが黒が一番の下層階級だろうな。



「それと漁をしていた海軍が南部で油田を発見したようなので

現在は開発は開始しております」

      

「わかったよ」


 俺がイエスマンだから勝手に進んでいくな

俺もたまにはノーと言えるフリーダム人になるべきか?


  

「兄貴、なんで紫なんて地味なカードなんですか? 俺も赤がいいですよ」

「我が国の紋章は菊だ。金色の菊に紫は合うと思うぞ」

「俺は紋章も星がいいと思ったんですけどね」


 

 うちの紋章は単純な紋章では簡単に塗り替えられるという事で

俺の我が儘で赤と白で中央に金色の菊の紋章だ。軍用機は緑だが菊の紋章は

フリーダムの全ての航空機に義務ずけられている。


「でも学院と同じで紫から緑の人はお金を持ち歩く必要がないんでしょう?」


「それも魔力判別機のある店だけですよ。満腹亭は設置するようですが」

「補助金込みで金貨五枚だと悩む店も多そうね」


「カード偽造の違反者は一族根切りなんですよね」

「ヤン、偽造しないでよね。わたしはまだ死にたくないわ」

「するわけないだろう」


    

「それより若様、話題のカレーハウスへ行きましょうよ」

「行くぞ」

    

「「「おおおぉぉぉ」」」


 

「凄い人ね、開店してまだ二週間程度でしょう」

「二十八人も並んでいますね」


 さすがカレーだ、既に人気店じゃないか

軍隊限定で金曜はカレーの日にするか。


   

「ご注文はどうされますか?」

  

「ビーフトンカツカレーの辛口の大盛りを四人前お願いするよ」

「若様、トンカツとカレーを混ぜて食べるんですか?」

     

「豚を揚げたやつを上に乗せて食べるんだよ」


           

「ちょっと嫌な物を想像する色ね」

「それは仕方ない。食べて見ろよ」



「辛いけど美味い」

「いけるわね。この漬物の味も相性がいいわ」

「見た目を裏切る味ですね」


 カレーも転移したとき以来だから四年ぶりか。

ちゃんと辛さ控えめになっているな。


「食べたな」

「二杯もお替わりすれば十分でしょう」


「それよりヤンとコンラートは新年会に合わせて結婚式だろう」

「「出来ちゃったので」」


「本当に男って困った物ね」

「ミーアも妊娠してるんだろう」

「私は良いのよ、結婚してるんだから」

        

「今年の新年会はヤンとコンラートのお祝いとするか

若い天使アヒルを四百程度放出しよう」


「それでは一羽丸ごと食べられますね」

    


       

 今日は年末で俺の制定した冬休み期間だ。十二月の二十日から新年の三日

までを休みにしたのでアレス鉄道は親族の家への訪問客で大忙しのようだ。


「ルーカス、幼稚園はどうだ?」

「うん、友達がいっぱい出来たよ」

「クレアは?」

    

「パパ、がんばるの」

 意味がわからんが、励ましてくれているんだろう。

  

「あなたが元気でいて欲しいって言ってますよ」

「そうなのか?」


「クレアはパパが大好きですから」

「うん」


 リリーナも妊娠中だから来年は四人目か。俺も十九歳だ。

そうだ、クレアの目覚めの儀だったな。


「母さんは今日も遅いのか?」

「文部の仕事が忙しいみたいですね」


「北とは我慢比べで西は戦争か、来年も大変な年になりそうだな」

「食糧は余ってます。去年に比べれば余裕があると考えましょう」


「かんがえるの」

「はーい」

   

「そうだな」


     

 そして今日は新年の四日で新年会を取りやめ

ヤンとコンラートの結婚披露宴会場となった。参加者は八百人だ。


「コンラートとマイさんにヤンとリンダさんおめでとう」


「行くぜ、今日は天使アヒルの食い放題だ」

       

「「「「おおおおおぉぉぉぉ」」」」



「ダン、結局四式も四型も出来なかったな」

「五式は後はエンジンを載せるだけだ。五型はまだだけどな」

「どんな航空機なんだ?」


「それは見てのお楽しみだ」


「ダン、空母はどうなの?」

「ミーアの嬢ちゃんか、ノア型は八番艦が最終艦だ

今年からはフリーダム型空母の着工だな」


「そうなの、数万隻の戦闘艦に対抗出来そうなの?」

 

「魔道機雷が出来たからな

のこのこと艦隊でやってきたら袋のネズミにしてやるさ」


「ダン、自動車は?」

「自動車と農耕機は息子に任せてあるからドンドン出す予定だぞ」


 ダンは人気者のようだし解放してやろう。


「ノア様、これで長官職の人間は全て既婚者になりましたね」

「そうだな、ヒルダはトレミーにも兵器を売りつけているから

死の商人と呼ばれているぞ」

  

「魔王配下としてはその程度は問題ありませんわ」


「ノルトの様子はどうだ?」


「運のない商会の人間が水竜の逆鱗を買って二十隻程度が沈められた

ようですが、ノルトの漁船も南に出られないので 

あと三ヶ月もすれば折れるでしょう」


 いい昆布はノルト産だからな、なんとかして欲しいよ。



 

 披露宴も終わり、二人は一週間の新婚旅行で今日はお供に

ニコとフレッドだ。


「ニコとフレッドは仕事は大丈夫なのか?」

「若、春から忙しいですからね。休みませんと」

「わたしも納税の時期を過ぎたので来月まで仕事量を減らす予定です

今忙しいのは加工省のアイラだけでしょう」


 

「若、今日はお勧めの鍋料理を食べに参りましょう」

   

      

 賑わっているな。


「女将、用意は出来ているか?」

「すぐにお出しします」


「これはふぐちりとマグロか?」

「はい、一昨年までは死者を出すなどと不手際がありましたが

今は料理人の腕も上がり安心して食べれるようになりました」

              

「マグロは冷凍船を使って去年捕れたマグロですが

マイナス六十度の超冷凍庫に保存済みなので美味しいですよ」 

  

「熱いが美味いな」

「本当ですね、機械設備のお陰です」



 食ったな、ふぐなんて子供の時以来だな。

 

「最近はアレス魚通貨が浸透していて稼ぐ漁師は漁場を渡り歩いている

状態だそうです」

「全て冷凍船で運んでいるのか?」

「売れる魚を選別しておいて買取人が買い取って魚通貨を渡します

漁師は帰国した後に財務か国税でそれを交換する仕組みです」


「海運省ではやらないのか?」

「脱税の防止ですね」


「去年から猟師の税も売却高の六割に変更になりました

そこでアレス鳥通貨の出番で猟師は稼ぎが減ったとぼやいているそうです」

   

「国税も不法売買には目を光らせていますから」

                 

アレス魚通貨に鳥通貨か、そんな書類もあったような気がするが

適当にサインしていたな、今度から印鑑にして考える時間を増やすか。


「猟師と漁師の利益はどの程度なんだ?」

「はっきり言いますとピンキリですが、儲けている漁師は一年で海金貨で

三枚以上で猟師も儲けている人間は二枚程度はいきますね」


「裕福になるのは悪い事ではないが取り締まる方が大変そうだな」


「その通りです、冷凍船や冷凍運搬車の職員を民間が出来れば

かなり楽が出来るのですが不正を行う者とのいたちごっこです」


魔法鞄(マジックバック)やマジックポーチを使えばバレないんじゃないのか?」

         

「既に魔法がかかっている鞄系の携帯許可は紫国民と職務中の

緑と赤の国民だけです。それ以外の所持は没収と尋問になります」


 取り締まりが厳しくなっているな。

 戦闘機が入るマジックポーチは信用の出来る人間にしか渡してないが

エンジンを盗まれたら一大事だからな。


  

「そうなると大もうけを狙う人間はサントス王国か西大陸へ

行くしか無いわけか?」

「そうですね、関税はお互い一割なので相殺が可能です

払い下げの輸送船は闇オークションで更に値が上がっているようです」


 船を転売する人間も出始めたか、困った事だ。


「ニコ、サントスでの売上げはどうなんだ?」

「この半年だけでもマジックポーチを併用して五千万トンは

輸出していますが一トンで通常金貨で二枚と小金貨四枚ですよ」


 十二兆アルか、ラインハルト君も金払いがいいな

何か有力な資源でも持っているのか?」


「逆にサントスからは何を買っているんだ?」

「ミスリル鉱石とリチウムなどのレアメタルが八割を占めていますね」


「うちでも採れるが足りないのか?」

「ダンがもっと欲しいと言ってきているので

これでもかなり買いたたいているんですが」


「ほどほどにしてやってくれ」

「「わかりました」」      

          


 

俺達の料亭での話も終わりクレアの目覚めの儀だ。


「パパ、がんばるの」


  

「女神ヘカテーよ、この者の道を示し給え。血の道を示せ」


     

――――――――――

    

 名前:クレア・フリーダム

 年齢:三歳

 種族性別:人族:女

 所属:フリーダム王国

賞罰:無し


 加護:ヘカテーの加護(伝説級)

  :アテナの加護(伝説級)

  :クロノスの加護(神話級)


――――――――――


 爺ちゃんの話通りイシュタルの加護は無かったが素晴らしい加護だ

クロノスの加護に至っては俺と同等だ。


  

「折角の娘の祝いの日だっていうのに北で反乱とはな」


「既に爆撃機を向かわせています。一週間程度で収まるでしょう」

「わたしの娘もお祝いだっていうのに」

「本当ね。ノルトの人達も困ったものね」

「本当なら二ヶ月前に編入していたはずなのに」


 困ったな、夏だったら大変だったな。

 


お読み頂きありがとうございます。


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