第七十六話:ミラン大陸併合
我々の予想を裏切ってノルト大陸の反乱は拡大の様子を見せた。
五日後には空母二隻を派遣して威嚇するも暴動に参加する人間は
発表では六百万人を超えていて沈静不可能と判断し一時撤退。
「油田だけ確保して撤退か」
「仕方ないじゃない、暴徒の数はそろそろ一千万を超えそうな勢いよ」
「何が不満なんだろうな?」
「貧富の差だって言ってたわね」
「うちの下請けしている人間は年間で星金貨を稼ぐからな」
更に一週間後には貧富の差を争って遂に内戦に発展。
若者と四十代以上の人間が同じ国で殺し合うという惨事に発展してしまった。
「ノア様、どういたしますか?」
「本国へ移民してきた人間の押す方に味方するしかないだろう」
「そうなると若年層を支援する事になりますね」
「老人虐待は許されないが児童虐待は禁忌だ。旧式の陸上装備を売ってやれ」
「わかりました」
まともな銃と航空機がないのが救いだな。
そして遂にトレミー帝国がうちに泣きついてきた。
内容はマリノフ将軍一派の力が増大してしまい既に皇帝の妃である
ユキさんですら面会も出来ない程で穀物は五キロで金貨一枚まで価格が
上がっているそうだ。
「これが反マリノフ派の出して来た、ミュラー皇帝のサイン入りの北方大陸の
魔法譲渡証明書か」
「見返りは何なの?」
「飛行艇八隻と飛行艇技術を白金百トンで買いたいそうだ」
「まあまあの条件ね。古い飛行艇にバルバロッサの持っていた技術ね」
どうするかな、どんな人達が住んでいるかわからないんだよな。
「既に南方の参加国の軍が七割以上の地域を制圧している模様です
食糧自給率の低い国を抱えても大きな利益はありません」
「それに船で十日という輸送の手間を考えると距離があるよな」
「それに来年は三割程度の農家が大豆に移行するんだろう」
「お待ちください、魔法研究所で土壌成分を変換する魔法が
先月発表されました。これを元に水分に溶かし込んだレイン弾を製造中です
これが完成すれば五年の連作が可能となりますし稲作に関しては現時点で
既に問題はありません。それに北方大陸の資源と人間性は魅力です」
「だけどな……ノルトが手にはいれば要らない子になるんじゃ無いのか?」
「ノルトの考え方が変わるにはあと十年はかかるでしょう
それに我が国は農耕機械を入れればまだ国土の七割以上を農地に
出来る余裕があります。本国ですら未だに五割の土地が余っているんですよ」
「北方大陸で何が採れるの?」
「様々な物が取れますがやはりオリハルコンとヒヒイロカネです」
「「「オリハルコンか!」」」
やはりオリハルコンと聞くとみんなの顔色も変わるか?
ミスリルに並ぶ魔法金属が来たか。ヒヒイロカネは昔話に出てくるが。
「資源は判るが人間性とは?」
「ミラン帝国の人間は極めて勤勉で従順と聞きます。戦争でもノルト兵が
いる中で積極的に最前線を支えたそうです。それに技術に長けた者が
多いそうなので工房の増員にも貢献するでしょう」
俺が決めるべきなんだろうが、運に賭けてみるか。
「よし、助けるか見捨てるかは多数決で決めよう
両方に投票しなくても構わないぞ」
結果は十三対三で併合希望か。
「結果は併合希望となったがミラン帝国再興を訴えるようなら切り捨てる
現在、西大陸のトレミー帝国以外に向かっている輸送船が帰路につき次第
奪還作戦を開始する」
そして三月一日に作戦開始だ。
情報部の報告だとミラン帝国では全ての人間が奴隷とされており
救出してくれるなら喜んで従うという事だ。
「第三戦闘師団発進せよ」
「第四攻撃師団発進せよ」
「第二補給部隊発進せよ」
「ノア様、既に空母三隻と巡洋艦九隻を先行させております
陸軍五万もそろそろ上陸するのであとはミランの住民次第です」
「吉と出ればいいけどな」
「敵はトレミーに援軍を出す余裕がない事を知っています
飛行艇が五十程度と陸上部隊だけでしょう」
我が軍と西大陸の装備の差は圧倒的でトルネード弾五発で大隊が降伏する
有様で敵は輸送船で戻る以外には死に場所を求めて戦う以外の道はない。
「ミランで義勇軍が二十万以上に膨れ上がっています
既に勝ちは確定かと存じます」
「よし、穀物輸送を開始せよ」
「わかりました」
「敵の戦力は既に二十万の陸上部隊だけです」
三週間で敵の本隊が降伏して輸送船に戻っていった。
輸送船を事前に破壊して殲滅するという案もあったがヨハンとアイラと
コリーンの反対で破棄されてガイア大陸へ逃がしてやる事になったが。
「酷い状況ですね。トレミー帝国は既に去年の春から物資支援すら打ち切って
いたようで今年の冬に飢えと寒さで死んだ人間だけで二百万を超えるそうです」
「支援の状況は?」
「はい、米を中心に既に五百万トン以上をミラン大陸へ運び込んでいます」
「これがミラン大陸の地図か?」
「そうです、人口七千万というのでもっと狭いと思っておりました」
「兄貴、横に書き込んであるメモだと人口だけでも六億五千万とあるぞ」
六億以上もいるのか、大きいジュノー大陸の三割以上いるとは戦争を
指導したのは死亡した国王の独断だと言っていたが、それも食料を
国民に食べさせるための手段だったのかも知れないな。
「トレミーが人口を誤魔化していたんでしょう」
「なんでそんな面倒な事をしたんでしょう?」
「労働力として死んだら補充するつもりだったんじゃないの」
ユキさんも人口は知っていたはずだ。どうやらこの大陸の人間は
捨て駒として使うつもりだったようだな。
「ノアと出会って良かったわ」
「若様と出会わなければ今頃はバルバロッサ帝国の奴隷ですね」
「とりあえず、爆撃機を飛ばしてくれ。大陸の本当の大きさを知りたい?」
「わかりました」
東西七千に南北四千キロなんていう場所が放置されたままで暴動が
起きないなんて考えられないが。
そして四月一日にミラン大陸の編入式典だ。
「みなに言いたい事がある。フリーダムでは基本的に奴隷制を認めていない
種族差別も同様だ。十一月に税を納めれば全ての民が飢えと戦う事は無くなる
ここに宣言する。本日をもってミラン大陸をフリーダム王国へ編入する」
「「「「「フリーダム万歳」」」」」
「「「自由万歳」」」
この熱気がいつまで続くか。従順な国民なんて本当にいるのか。
本音か嘘か三ヶ月もすれば自然とわかるだろう。
「空母二隻を残して全軍撤退で良かったのか?」
「ジュノー大陸と同様に反乱を起こせば無差別爆撃と大陸中に勧告済みです
その時に陸軍の兵士がいてはかえって邪魔になります」
「まあいい、東西七千キロに南北四千キロの大地だ。陸軍でも治め切れまい」
「草は豊富です。ノルト用に育てた家畜が二年後には大きく繁殖するでしょう
来年の冬を越せば自然と我が国への信頼は高まるでしょう」
冬に戦争を終わらせられたのは良かった。
これからは農業戦争だ。
「ニコは来られないって言ってました」
「米作りが始まるし農務も忙しくなったんだろう」
「なんか私達がいつも暇みたいに聞こえるわね」
「ニコやデニスに比べられると暇なのは確かだね」
「それじゃ四人で五式を観に行くか?」
「そうね」
車の台数も増えたな。事故を起こしたら人生を十年は棒に振るのに
みんな飛ばしてるな。
「これが五式航空機か?」
「軍用機じゃないのよね」
「そうだね、主にアレス航空が買い取る予定だね」
「アレス航空って若様の所有ですよね?」
「そうなるね。他国に渡ったらエンジンを調べられるからね」
既に俺の次元収納は海金貨で一杯だ。
これをどうしろというんだ。
「坊っちゃん達来たな。これが五式航空機だ。最大速度が時速八百キロで
最大航続距離が一万二千キロで座席の数は二百八十だ
最高高度も九千メートルまで昇れるぞ」
「三型爆撃機より遠くまで行けるんだな?」
「二年の歳月は伊達じゃないぜ。増設タンクをつけて人の数を制限すれば
一万六千キロ以上も可能だ」
「悪くない出来だな」
「まあまあね」
「空中給油機と組み合わせれば他の大陸まで直行便の開通も可能ですね」
これはラライラちゃんに八型を作ってもらう事になるのかも知れないな。
「ダン、よくやってくれた。礼を言うぞ。空母はどうだ?」
「フリーダム型か難航してるっていうのが本音だな
どうしても原子力っていうのに憧れがあってな研究を辞めないんだよ」
「気長に待っているよ」
「そうしてくれると助かるぜ」
四式航空機のお披露目から僅か一週間後に南に船団発見の報告が飛んできた。
「サン王国でしょうか? サントスの情報ではかなりの軍を南に
展開していると言っていましたが」
「二正面作戦をする余裕があるんじゃない」
「とりあえず南の都市のエンジェルに行ってみよう
忙しそうな人間は置いていくとするとヨハンとヤンとコンラートとミーアだな」
上手くなったとはいえ十八回の転移を繰り貸して何とかエンジェルに到着
ここの港に来ているはずだが黒い船が数隻いるだけだ。
「我々は国の長官職だが黒い船の持ち主はどこかな?」
「エンジェル亭に滞在中です」
宿屋で待機とはサン王国の人間じゃ無いのか?
「失礼するフリーダムの使節団だがここに外国人がいると通報があったので
来たんだが滞在中か?」
「そこでランチを召し上がっている方々ですよ」
全部で十二名か。少ないな、腕に自信があるのか?
「フリーダムの高官だが、食事をご一緒によろしいかな?」
「構いませんよ」
「ランチを五人前お願いするよ」
「畏まりました」
相手が気になって食べた気がしないな。
「「「ごちそうさまです」」」
相手もごちそうさまという文化があるのか?
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
「そういえばフリーダムの高官だと言っていましたね
わたしはユニコーン王国の全権特使でバーンと言います」
「フリーダム国王のノア・フリーダムだ」
そして会談は食堂で始まった。
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