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第63話

申し訳ありませんっ!めっちゃ遅れました!

暇だ。


実に暇だ。


溶けそうなくらいに暇だ。


そんな暇という言葉しか出てこない。それ程暇なのだ。何もすることがないし、ラノベ主人公みたいに宿敵や目的もない。何しようか……


ボケ〜と、天を仰ぎ微動だにしていないと、リビングに入って来たリルルが声をかけて来た。


「どうしたんですか?」


「いや、暇すぎて」


リルルのお腹はかなり大きくなって来ている。リビングに入って来たリルルはお腹を撫でながら俺の隣に座る。


「いいのか?さっきまでお腹痛かったんだろ?」


「大丈夫ですよ」


何も音がしない屋敷の中に2人の声だけが木霊する。昨日から使用人全員に休暇を出して里帰りしてもらっているし、白鳥さんはフェルと一緒に魔物狩りに、リュカも父と仲直りするために里帰りしている。その為、俺とシルの2人で食事の準備はしているわけだが、


「暇なら料理の練習でもしたらどうですか?」


そう、そう言われるくらいに、俺とシルの2人は料理が下手だったのだ。いや、最初からわかっていたことだが、シルがここまで出来ないとは知らなかった。この世界に来るまではシルが俺の食事を作っていたからな。では、なぜそこまで下手なのかというと、元の世界にあった技術の集大成を惜しみなく使っていたからだそうだ。


「それなんだが、流石に不味すぎて今日から外食にすることにした。ちゃんと体に良い物を買って来るから安心して良いぞ」


「そうですか」


2人でリルルのお腹を撫でていると、腕につけていた腕輪が光り出し、人の形を作り出す。光が収まると、シルが現れた。いつものような幼い姿ではなく少女の姿で


「ん?どうした?」


「雰囲気感じてたらなんかシルも撫でたくなったから」


シルがそう言うと、リルルは、シルちゃんどうぞと言ってお腹を撫でるスペースを開ける。するりと懐に忍び寄ると、そのまま壊れ物を触るようにして撫でていく。


「妹かな……弟かな……」


いつの間に俺の娘?になったのかわからないがスルーする。そして、リルルはと言うと、「どちらでしょうね」と言っている。


その優しい容貌は聖母のように優しく、リルルの魅力を一層引き立てていた。


そんなリルルに見惚れているとその視線に気付いたリルルが頬を染めながら「好きですよ。大好きです」と、なんの前触れもなく言って来たので、もう何度目になるかわからないノックアウトを決められた。


外の喧騒は貴族街?上流層街?のため全くなく鳥の囀りが聞こえる。そして、屋敷の中では妻に再びノックアウト(精神的に)させられている旦那が……。と、平和な時間が流れていた。





場所は公都からかなり離れた帝国の帝城内。その最上階に位置する場所に皇帝の執務室があった。


その執務室の中は一見簡素だが、全て高級品で揃えられており、どこかの皇族というよりも、武官の執務室と言われた方がしっくり来る造りだった。


コンコンコン


三度のノックの後に掛けられた声は渋い男の声。執務室にある執務机に腰掛けていた二十代後半に見える男は苛立ちを隠しもせずに「入れ」と一言。

その言葉を受け取った扉の向こうの人物は、「失礼します」と一言告げて中に入って来た。


中に入って来たのは、老人と言われる年齢の男。しかし、その体は無骨爛々で筋肉が鎧のように覆い被さり、とてもその男を「老人とは言わせんぞっ」と言うような雰囲気をまとっている。

顔は、老人ゆえに皺が目立つが、眉目秀麗と分かるほど整っており、その洗礼された動きは只者ではないと誰もに感じさせる。


執務室のドアを閉め、老人は「陛下、お忙しい中お時間を取っていただき誠に有難うございます」と言って頭を軽く下げた。


「よい。それで、そなたが来たと言うことは準備が出来たのか?」


陛下と呼ばれた男が、先程とはまた違う期待を孕んだ声音でそう尋ねると、無骨爛々の老人は、その顔に似合わぬような悪魔のような笑みを浮かべて告げた。


「全てが順調に進んでおります。作戦決行まで後1ヶ月。少々お待ちいただくかも知れませんが必ずや陛下の期待に応えて見せましょう」


「そうか、期待しているぞ」


陛下もまた同じ様に悪魔の笑顔で返し、老人の退出を促す。


そして、老人の違和感。


その右手にはこの世界の技術では到底完成し得ない物……カラー写真が握られていた。



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