第59話
よろしくです!!
「リュウト・トナティウ!勝負だ!」
そう言いながら大声で入って来たのは、現序列2位元序列1位のクライク公爵の孫だ。
とてもうざったい性格で、俺が序列1位になった後はこうやって毎日勝負を申し込んでくる。
何回殴って、何回公爵さんに謝られたことか……数え切れない。
「今日こそは勝負しろっ!」
「今日こそはって……毎日してるじゃん」
「いいから勝負だ!」
「わかった。じゃあ、行くぞ」
「ちょっ、ちょっ待っ」
俺は返事も聞かずに肉薄し、アッパーを食らわせる。
幸いと言うべきか、意識を失っただけで舌を噛むことはなかった。
「リュウトさんところに毎日くるのがいけないんです。ベーッだ」
リルルが子供ぽっいことをするので、適当に抑えなると、先生がやって来た。
中に入って来た先生は、こちらを一瞥して、何事もなかったかのようにいつも通り授業を始める。
他の奴らも何も言わない。
慣れて来たのだろう。
そんないつもと変わらない1日を過ごし、屋敷に帰ってくる。
屋敷でも変わらない。帰って来たら使用人達が挨拶をしてくれる。
「リュカ、ちょっと俺、領主になるわ」
「領主ですよね?」
「あ、いや、そう言うことではなくて……領主代理として、最近、全部リュカにまかせっきりだろ?」
「最近というよりかは、最初っからというのが正確かと」
おぉう、なんか最近、リュカさんが冷たい。いや、もともとこんな感じか?
変な空気になったので、その空気を咳払いで吹き飛ばし、言葉を続ける。
「そんなことはどうでもいい。内政の話をしよう」
「では、まず最初にこの国の貴族、そして、他国の重鎮。税制、その他ノウハウを学んでもらいます」
そう言ってどこから出して来たのかわからないが、俺に国語辞典並みに分厚い本を10冊ほど渡して来た。
「ん〜っと、これ全部覚えなきゃダメ?」
「もちろんです」
「リュカは全部覚えてるの?」
「もちろんです」
リュカはそう言うと、全力で結界を張る。
この結界の効果は魔術効果があるものを全て破壊する。というものだった気がする。
うん、絶対にこっちの思考を読まれた。
精神干渉で俺の脳に強制的に覚えさせようとしたもんね。
俺が額に汗を浮かべ、乾いた笑いを出していると、横から服の裾を引っ張られた。
何かと見てみると、リルルと俺の目が会うと、逸らされてしまった。
「可愛いぃ〜、嫉妬しちゃって」
頬をつつくと膨らしていた頬をさらに膨らして、そっぽを向く。
ふふふ、ここは……アッチョ◯ブリケ!
リルルの頬を手の平で包み、空気を押し出すように押すと、「ぶふっ」という音が鳴り響いた。
それを自分が出した音だとわかるやいなや、顔をリンゴのように赤くして自室に走り去ってしまった。
「追わなくてよろしいのですか?」
「いいんだよ。あとで行くから」
続けて、ご飯にしてくれないか?と言うと、笑われた。
「何が面白かったんだ?」
「クスクス、いや、なんでもありません。夕食の支度をして来ます」
それに「おう」と答え、階段を上がり、リルルの部屋の前にくる。
コンコンコン
「リルル〜ン」
ばたんっ
普通の呼び掛けじゃ応じてくれないと思ったので先生が読んでいる呼び方をしたら、案の定と言うべきか、先程同様、羞恥で顔を赤くしたリルルが出て来た。
「リ、リルルンはやめてください」
「ははっ、ごめんごめん」
リルルの許可を貰わずに部屋の中に入ると、ヤバイ光景が広がっていた。
ヤバイ光景……この部屋警察に見られたら絶対に事情を聞かれるだろう。
「きゃあぁぁあああ!入らないで下さい!お願いしますお願いしますっ!」
部屋を俺に見られたことで、放心状態に陥ったリルルが回復すると、おもっいっきり部屋の外に連れ出される。
「見ましたっ!?見ましたかっ!?」
「い、いや、ナニモミテマセン」
「棒読みですか……見たんですね?」
「すみませんでしたっ!」
部屋の中を軽く説明すると、俺の写真で埋め尽くされていた。
まあ、別に嫌な気分はしないけどね。
俺が顔を上げると不安そうなリルルの顔が飛び込んでくる。
「どうしたの?」
「い、いや、その、あの、気持ち悪かったですか?」
「う〜ん。別にいいと思うよ?自分で言うのもあれだけど……人の趣味に口出すつもりなんて一切ないしね」
「そ、そうですか……なんかスッキリしました」
「それより、質問なんだけど、あれ写真だよね?」
何を当然な……みたいな顔で小首を傾げられるとこっちが反応に困るんですが……この世界にはまだこんな技術ありませんよね?
「あー、そう言うことですか。これを作る機械はユノさんに作ってもらいました。いんすたんとかめらなるものだそうです」
そう言って取り出して来たのは、赤と銀縁のインスタントカメラだった。
あいつ、こんなもの作ってたのか……
「正確にはインスタントカメラだぞ。イントネーションがおかしかったから直しておくといい」
「わかりました。リュカさーん!私とリュウトさんの夕食はあとで食べるのでとっておいてくださーい!」
リルルが食堂に向かって叫ぶと、頭の中にリュカの声が響く。
《わかりました》
それに満足そうに頷いたリルルは、俺の手を引っ張って寝室に入る。
何をするかなんて、このリルルの目を見ればわかるだろう……完全に目がハートになっている。
「リュウトさん。久しぶりですから、たくさんしましょうね♡」
俺は明日の朝を迎えることが出来るのだろうか……




