第52話
よろしくです
『ピーッ』
おっ、やっと終わったか。
俺はGRDに有線コードを差し込み、もう片方をパソコンに繋ぐ。
パスワードを入力して起動したパソコンを操作してGRDから流れて来た膨大な量のデータを最適化処理を施してから開く。
開くと画面いっぱいに数字の羅列、所謂機械文字と呼ばれるものが物凄い速度で流れて行き、最後に日本語で『翻訳を開始します』と出て来た。
『翻訳終了』と画面に出て来たので翻訳されたデータを開く。
それに目を通した瞬間に俺の目が見開かれる。
それは神のDNAまたはデオキシリボ核酸が異常だったからだ。
多くの生物において遺伝子情報の継承と発現を担う高分子生体物質の二重螺旋構造がないのだ。
無いというか、四重螺旋構造なのだ。
もしかしたらこれが不老不死の秘密なのかもしれない……
調べてみるには実験しなくてはならない。
人体実験が好ましいのだが、いきなりそんなことはできない。なので、俺が作り出したホムンクルスを実験体にする。
今、稼働中のホムンクルスは全て高性能なので、感情を持つことができる。しかし、感情を持っていてそこに不老不死が入るとマスターである俺の手から制御が離れる可能性があるので新しく超低スペックなホムンクルスを作り出すことにする。
超低スペックホムンクルスといっても感情を持つことが出来ないだけのものだが……
しかも、低スペックなおかげで生成するのに2時間もかからないのだ。
時間がないときにはいいね!
ーー2時間後ーー
「やあ、初めまして。ホムンクルス君。いきなりだけど君の体には自爆術式が組み込まれているから俺が『死ね』って言ったら潔く死んでね?」
「了解しました。マスター」
確認を取った後、培養器に入れて不老不死の秘密と思われる四重螺旋構造をそのホムンクルスに組み込む。
一回だけ大きく体が跳ね上がり、髪が白に、瞳がドラゴンのような金色に、瞳孔が縦に細くなった。
おお、これはこれは……すごいな。
そんな感想にもならないようなことを心の中だけで呟き次にすることに移る。
「体の異常はある?」
「所得する情報量が増えたため多少の吐き気はありますが、慣れれば大丈夫でしょう」
「情報量が増えた?例えばどんなのがわかるの?」
「物質の構造や温度湿度、それからここにいる生物。また、目、耳、口、鼻から入って来る情報量ですね。ちなみにここにいる生物と認識される者は存在しません」
おお、それは俺が亜神だからかな?そんなのはどうでもいいけど、情報量が増えたか……これはホムンクルスの脳だから耐えられるのであって普通の人間には耐えられないんじゃないか?
しかし、その事を調べる手段が今はない為今やれる事を実行する。
ホムンクルスを培養器から出す。
《シル、いつもの刀をよろしく》
《了解!》
俺の上腕についていた腕輪が明滅し、刀に変わる。
「じゃあ、そこに立って。今から切るけどビビらなくていいよ」
そう声をかけてから思いっきり袈裟懸けに斬り裂く
斬り裂かれたホムンクルスは当然のように体液を撒き散らしながら床に転がるが、その後が異常だったからた。
時間が巻き戻るように飛び散ったホムンクルスの体液が転がっている肉体に集まりだし、肉体の中に入っていく。
全ての体液が肉体に入ると傷がふさがり何もなかったかの如く立ち上がる。
ほう……じゃあ、これはどうだ?
俺はホムンクルスの首に刀の刃をあてがい、思いっきり引く。
刀の刃は何の抵抗もなく皮膚、筋肉、骨を切断して頭と胴体が別れを告げた。
斬り落とされた生首は床を転がり、胴体からは吹き上げるように血の雨が降り注ぐ。
そして、これもまた異常な光景が目に入る。
血の雨で濡れた服、壁、床が急激に乾いていったと思うと、先程と同じように体液が肉体に入っていき、首と胴体が再開を果たす。
すげぇ……人造不老不死人間を作れてしまった……
しかし、これは人造人間だからであり、本当の人間に及ぼす副作用がわからない。人造人間の脳でさえ吐き気を及ぼすほどの膨大な情報量が普通の人間に流れ込んできたらどうなるのか……それが気になるのだ。
俺はそんな事を考えながらホムンクルスに自爆の命令を下す。
DNA構造変換の際に“自殺の場合は死が訪れる”とあらかじめ書き込んでおいたので自爆の場合は死ぬ。
操り人形の糸が切れたように動かなくなったホムンクルスの身体を細切れにしてフェルの餌置き場に置いておく。
ふと、時間が気になったので時計を見上げてみると短い針が7を指し、長い針が11を指している。
はっ!?7時55分!?そんなに時間が経ってたのか……感覚って信じられない。
俺はリビングにいたリュカに夕食を頼んでからソファに身を預ける。
するとシルが人型の状態で横から声をかけて来た。
「何を研究してたの?寝てたからわかんなくてさ」
「お、その姿だと久しぶりだな。1ヶ月ちょっとぶりか?」
「多分そのくらい。それより、何研究してたの?」
「不老不死をちょっとね」
「ふーん。出来たの?」
「薬の方はまだ出来てないけど、人工的に無理矢理ならできるよ。けど、強制的にするから副作用とかそこらへんはまだわからないんだ」
そんなたわいのない話をしていき、リュカが夕食ができた事を知らせにきた。
夕食を食べ終えてから風呂に入り、リルルと交わってから寝る。
翌日2通の手紙が届き、1通は来週には授業を再開するとのことだった。
「やっと学校が始まるんですね。楽しみです」
「やばい……俺死ぬかもしれない……」
2通目の手紙の内容は脅迫状に近いものだった。
差出人は先生。多分、男の件だろう。
中身は約束から1週間経ってしまったので、白鳥さんを連れて王都の噴水広場に来い。というものだった。
実際にはもっと穏やかに書いてあったのだが、俺にはそうとしか捉えられなかった。
指定日は明日。
俺は死にたくないので、白鳥さんに事情を話し、来てもらう約束を取り付ける。
「その龍人達の先生ってのは美人なのか?」
「見てくれだけは。もしかしたら持ち帰りも可能かもね」
「おお!それはいいな!よし!その話受けた!!」
「あざーっす!」
土下座する勢いで頭を下げる。
ふぅ、これで俺の死は回避された。一安心だぜっ!




