第42話
よろしくです!!!
俺は風の上級魔術『飛翔』を使って霊鬼の胸に突撃し、大穴を開けて、霊鬼の意識を俺に向けさせる。
「おお!黒様だ!」
「助けてくれてありがとうございます!」
「やった!これで助かる!」
「黒様ってピンチの時に颯爽と現れる。素敵!」
「………自慢できる」
そんな探索者達の声が聞こえるが今は霊鬼に意識を集中させ、シルに命ずる。
《シル、クレイモア》
《了解!》
俺はシルに思念でクレイモアになるように命じてから霊鬼の両目を切り裂く。
よし!
喜べたのも束の間、見えていないはずなのに俺に向かって正確な攻撃を放つ。
なにっ!?
見えているバスがない!
気づかなかった。いや、気づこうとしなかった。
怖かったのだ。それが本当にそうであると…
俺は本能でわかっていても気付こうとせずに攻撃を躱し、カウンターを入れる。
俺の攻撃は霊鬼の身体を薄く切り裂くだけで終わるので、強制的に理解させられた。
こいつには目が見えなくとも辺りが手に取るようにわかり、さらには未来予測の異能を持っていると…
俺はクレイモアでも日本刀でも変わらないと判断したのでシルに思念で日本刀に戻るように伝えて、技を放つ。
「神崎一刀流『千手ーーがはっ!」
吹き飛ばされ、岩に身体がめり込む。
油断した……普通の人間では技を放つ際に出来る隙に攻撃することは出来ないが、相手は亜神だ……
俺は亜神と戦っていることを完全に忘れていたのだ…
バカだな……
俺は心の中でそう呟き…………奥の手を発動する。
「おい!!!霊鬼!!ここからが本番だ!…『神格化』!!!!!」
俺は神格化を使う。
神格化とはその名の通りで、亜神が純粋な神に一時的に昇格するものだ。
制限時間は精気を代償としているため個人個人で異なるが一般的にもって2分だが、俺はいつものようにリルルから色々受けているので、精気の量は半端じゃなく多くなっており、もって20分が限界だ。
俺の髪と肌が真っ白になって…
目は金色に…
神格化が完了したのを確認してから毒の最上級魔術の禁術を使う。
『エンチャント・ゴット』
『エンチャント・ゴット』とはその名の通り、神の力を武器に付与するものだが、それだけでは禁術指定になんかならない。
この魔術が禁術指定にされた理由は、人間にも付与が可能だからだ。
もっと簡単に言うと、普通の人間でも神格化が可能だということだ。
しかし、生きている動物にかけてしまうと数十秒で死に至るため、動物にはあまり意味のない魔術だ。
だが、俺はどうだ?
俺は亜神だ。死という概念が存在しない生物である。
試してみる価値は十分にあると言える。
俺は自分に対して『エンチャント・ゴット』を発動すると、俺の背中から黒色の魔法陣が浮き上がる。
「ぐっ……!」
背中の魔法陣から異物が流され、亜神の……いや、神の身体がその異物を排除しようと抵抗することでとてつもない痛みが俺の身体を襲う。
俺は痛みに耐え続け、ついに痛みが治まる。
感覚では何時間も痛みに耐えていたように感じられたが、実際には10秒もないだろう。
異物を流され唯一変わった点は瞳の色が金に、白目の部分が真っ黒になっているくらいだ。
俺は仮面を握りつぶし、シルを片手に霊鬼に突っ込む。
「うおおぉぉお!死ねぇぇぇええ!」
剣の攻撃範囲内ではないが無造作に、しかし、本気で刀を振るう。
バァゴオオォォォン!!!
絶対に剣から出ない音がしたと思ったら、次の瞬間には霊鬼の上半身が吹き飛んでいた。
見た目的には60%ほど破壊できたと思ったのだが再生し始めた。
「再生する前に消し飛ばしてやる!!!!!」
そう言って俺は雷魔術『ライトニング』を放ち片足を消し炭にする。
日本残っている内の片方が消え去ったことで体制を崩し、地面に倒れたと思ったら、再生し始める。
は!?
身体の60%以上消されたら回復できないんじゃねぇのかよ!
俺の動揺が見えたのだろう。
探索者の間にも動揺が走る。
《そいつは全てを消さない限り復活する。手伝うことは出来んが、頑張るのじゃぞ》
誰だ!?
俺は辺りを見渡す。
しかし、俺に話しかけたと思われる人物はいなかった。
信じていいのか迷ったが他にいい手は無いので騙されたと思って実行する。
俺が考えている内に霊鬼は完全に回復していたが、そんなことはどうでもいい。
俺は今まで使ったことのない程の大量の魔力を自分の手に身体中から集め、それでも足りなかったのでリュカの魔力も貰う。
普通は視認できない魔力も、今は視認できるほどにまで集め、イメージする。
今、作っているものは青白い光を放つ白いビー玉サイズの光球。
約5分間集中して作り上げる。
その間、霊鬼は俺が準備するのを律儀に守っていたようで俺が構えの(指鉄砲の形を作り霊鬼に向けているだけ)体制を整えると霊鬼も腕を後ろに引き絞りいつでも殴れる体制になる。
そのまま時間だけが過ぎていき、探索者の1人がくしゃみをしたのが合図となり、同時に攻撃を放つ。
霊鬼は魔力を腕に纏わせた必殺の一撃。
俺は指鉄砲の先を霊鬼に向けて…
「バァン!」
と言って青白い光球を放ち近くにいた探索者とリュカを対象にして40層の端まで転移する。
霊鬼は小さな青白い光球を脅威とはみなさずそのままつこっんでいき……
半径25メートル、直径50メートルの丸い光が霊鬼を包み込み俺たちが吸い込まれそうになったので地魔術の『バインド』でみんなの足を地面に縛り付ける。
「こ、これは何ですか!?」
トップパーティーのリーダーが俺に聞いて来たので、隠す理由もないため、正直に話す。
でも、理解できないと思うけどね…
「対消滅ですよ。簡単に説明すると…そうですね……物質と反物質をぶつける事によってできる爆発ですかね…」
「ぶっしつ?はんぶっしつ?」
そこからか……
「とにかく、超強力な爆発ですよ」
「………そうか」
少し考えたような顔を見せ、頷いた。
光が収まったのを視認してから俺は霊鬼の姿を確認する為に『飛翔』の魔術を自分にかけて飛び立つ。
入念に残骸1つ残っていないかを確認してからみんながいる方に向かって飛んでいき、挨拶をする。(神格化状態のままだ)
「皆さん、初めまして。リュウト・トナティウと申します。あと、黒とも呼ばれています。今はこの様な皆さんを見下ろす状態で申し訳ありませんが、広めて欲しいことがあります」
「それは何ですか?」
探索者の1人が問うて来る。
「トナティウ公爵領が出来たのはご存知ですね?その開拓民を募集することですよ」
そう言って俺は1枚の紙を渡す。
「その紙に書いてあることを広めて欲しいのです。信じない人もいるかもしれないですが、本当ですからね」
返事を聞かずにリュカを伴い先の戦いで見つけた洞窟に転移する。
「あの紙には何て書いてあるんですか?」
「あれか?そんな大したことは書いてないよ」
先程と同じ紙をリュカにも渡す。
「………これ、誰も信じて貰えないんじゃないんですか?」
「やってみないと分からんだろ」
そう言いながら俺は『精神干渉』の魔術を使い、俺が亜神だったことを探索者達の記憶から消し、神格化が限界に達している事に気が付いたのでリュカに声をかける。
「リュカ……見張り頼むわ…」
神格化を解除してその場にぶっ倒れた。
目を開けるとリュカが顔を覗き込んでいた。
「おはようございます」
「おはよう。何時間寝てた?」
「わかりませんが、今は午後5時ですよ」
「膝貸してくれてありがとな」
膝枕していてくれていたので痛みを消すためにも治癒魔術をかけてから地上に戻る準備をする。
準備と言っても服を整えてシルを腕輪形状に戻すだけだ。
近くにあった台に転移棒を差し込み地上に戻り、迷宮から出る。
迷宮から出ると大量の探索者や野次馬、騎士から拍手や感謝の声をかけられた。
!?!?!?
俺は最初なんのことか分からなかったが、40層で助けた探索者達がいたので納得した。
勿論?クライクや、先生、その他迷宮・ダンジョンクラブの人達もいた。
「ここに集まっているということは私がリュウト・トナティウだということは知っているな?そして私が開拓民を募集していることも知っているな?開拓民申請は近くの役所で出来る。より沢山の人が来ることを望んでいる」
俺は換金してから宿の部屋にリュカと一緒に転移してから、認識阻害を自分とリュカにかける。
「お帰りなさい」
「お帰りなさいませ。ご主人様」
「ああ、ただいま」
俺はリルルとクラリスに応えて、リュカは一礼する。
「今日は大活躍だったそうですね」
「ただ既に死んだ亜神を再度殺してやっただけだぞ?そこまで活躍したつもりはないんだが……」
「亜神を殺した時点で大活躍?だったと思いますけどね…」
部屋の中で雑談をした後、俺達4人は金を冒険者ギルドに預けてから食堂に向かい、夜ご飯を済ませる。
そんなこんなで2週間が過ぎた頃……
俺とリュカは迷宮の80層に来ており、昨日まではトップパーティーが79層へ到達したのが最後だったが、今日でトップパーティーの独走は終了を告げた。
80層からの詳細を伝えると、辺り一面が砂漠で、たまにサボテンが生えているくらいだ。
ちなみに79層の(80層への階段を守っている)ボスは下級竜で、リュカや俺を見た瞬間にショック死した。
「ははははははっ!!!!!死ね死ね死ね死ね!!!!!」
「さあ!お迎えですよ!!」
そして今は砂漠の中に潜んで俺達を襲って来た魔物の大群を駆逐しているところだった。
もう完全に襲っている側と襲われている側が反転していた。
約15分が経過した頃に戦闘の音がやむ。
「もっと楽しませてくれよ…」
「情けないですわ」
俺とリュカは他人が見たら悲鳴をあげて逃げ出しそうな感じになっている。
襲って来た魔物の大群が全て人型だったこともあり、ハタから見れば、ぱっと見で三百を越す人間の死体の上に返り血をたくさん浴びた片手に刀を持っている殺人鬼と、血を浴びながら妖艶な笑みを浮かべる美女が見えたことだろう。
魔物の死体は10秒ほどで全てが一斉に魔石だけを残して灰となり消えた。
俺は亜空間の扉を開き、魔石を全て亜空間の中に放り込む。
「大量だな!」
「はい!」
そう言って階段を探すのではなく地魔術で魔物の潜っている場所を把握して、刈り尽くす。
3時間かけて広大な80層の魔物を全て刈り尽くし、途中で見つけたボス部屋に入り瞬殺してから階段を降りる。
結局、迷宮都市から公都に帰る日には、99層のボス部屋にまで到着していた。
俺は次の層が最後の層だと根拠の無い確信していたので先生に出発を遅らせるように頼み込んで迷宮に来ている。
「ふふふふふ…フハハハハ…!!楽しみだ!!行くぞリュカ!!!」
リュカを伴いボス部屋へと続く扉を蹴破る。
バゴォォォォン!!!
とても良い感じの音が響き渡り、中に入ると既にボスは死んでいた。
………?なぜ?
俺は死んでいる原因がわからなかったので適当に調べて行くと、死因がわかった。
頭を扉にぶつけて死んでいたのだ…
多分俺がさっき蹴破った扉が運悪く頭の急所に当たってしまったのだ。
御愁傷様に………
数十秒すると宝箱と魔石だけを残して消えた。
俺は宝箱を開け中を確かめると、中には鞘に入れられた一振りの刀が入っており、鞘には龍?蛇?みたいなのが巻きついた彫刻が彫られている。ステータスを確認してみると名前は倶利伽羅剣。
………………
思考が停止した。
「どうしたんですか?」
「……神器じゃねぇか!!!!!」
そう、これは神器だった…
不動明王が持っていた剣だ……
効果はこの刀に魔力か呪力を流すことによって炎によって刀身が包まれ、包まれた状態だと『魔』を切る破魔の剣となるというものだ。
かなり強い。
この剣には『魔』が付くものが全く行かないのだ。
例えば、魔法も魔術も魔物の攻撃も魔族も……
めっちゃ強いが、俺にはシルという相棒がいるのでこれはリュカに渡すことにする。
鞘に彫られてる龍?もリュカに似てるしね
「良いんですか?」
「シルが泣くからな…受け取れ」
「ありがたき幸せ」
そうして俺達2人は100層へと続く階段を降りるのだった。




