第35話
よろしくです!!!
俺は男性用トイレに走り込み変装準備に取り掛かる。
必要なものはまずこれ!
黒と白のロープ!!
その次に……黒と白の穴1つ空いてない仮面!
もう、お分かりだろう……【黒白】に変装するのだ!!!
この格好なら誰にもからかわれることなく登録できると思うし、何よりいくら目立っても困らないからだ!
俺の変装が終わるとシルを呼び出し人形態にする。
「シル、この街では【黒白】で通すぞ」
「わかった!」
シルの元気のいい返事を聞いて大きく頷くとトイレから【黒白】の姿で『認識阻害』の効果を外して出ると大通りとまでは行かないまでも人通りはかなり多いい道なのでいきなり【黒白】が現れるとすぐに人が集まり始める。
俺とシルはリルルとリュカ、シャル先輩がいる方に歩き出し目の前まで来て立ち止まる。
「シャル先輩、準備ができましたので、案内してください」
「は、はい!」
「シャル先輩?僕ですよ。リュウトです」
そう言って仮面をちょっとずらして顔を見せる。
「なんだ……リュウト君か…本物の黒様かと思ったのに………」
「まだわからないんですか?僕が本物の黒だと言っているんですよ。これで辻褄があうでしょ?僕があんなに強いわけが」
「嘘言わないの…リュウト君ったら…………!?」
「やっとわかったみたいですね。一回俺の短剣術を見せているのですぐ気付くと思ったんですが…」
「確かに…大会で見た黒様の短剣術とリュウト君が見せた短剣術は全く同じだ……サイン下さい!」
「唐突ですね…まあ、いいですけど、条件が2つあるんですが飲んでいただけますか?」
「も、もちろん!いえ、もちろんです!!」
「まず1つ目は、俺への接し方は今まで通りでお願いします。2つ目はリルルとリュカ以外はこのことを知らないので誰にも言わないで下さいね」
このことを知っているのはリルルとリュカだけではないのだが別にいいだろう。
「わかりました!あ、わ、わかった」
「じゃあ、明日渡すので」
そう言ってから探索者ギルドに入り受付カウンターに向かう。
受付カウンターには誰もおらず適当な窓口に座ると奥で揉め事のような声がする。
「【黒白】様達の受付は私がやるわ!」
「ダメよ!私がやるの!」
「いいえ!わたくしがいたします!」
数分経った頃に勝負が決したのか1人の受付嬢がこちらに歩いてくる。
「こんにちは、担当させて頂くメネアと申します。今回のご用件は探索者登録でよろしいでしょうか」
「はい。この3人お願いします」
メネアさんは3枚の登録用紙を出して来た。
「では、こちらにお名前を書いて下さい。注意事項が全て本当のことを書いて下さいね出ないと登録できませんので」
まじか…!?リュカはいいとして俺とシルはどうするかな……
あっ!あれなら転生者以外読めないし本当の名前だからあの文字にしよう。
俺は名前のところに『神崎 龍人』と漢字で書き、シルはカタカナで書いた。
これならわかるまい!
俺とシル以外は不思議そうに漢字を見て、探索者登録がちゃんと出来たことに驚く。
「リュウトさん…私に嘘の名前を!?」
「いや、違うぞリルル。これは俺とシルだけ?がわかる文字なんだ」
「そうなんですか?」
「ああ、一度でも俺がリルルに嘘をついたことがあるか?」
「無いです…」
そんな感じで問題は何個かあったが無事に3人の探索者登録が終わり出て行こうとするとメネアさんに呼び止められた。
「説明がまだなんですが聞かなくてよろしいですか?」
「ああ、ごめんごめん…頼むよ」
説明の内容は
1、探索者には1人につき担当ギルド員がつくことになっており俺達の場合はメネアさんだ。ちなみにシャルはキィートという男性職員らしい。
2、迷宮やダンジョンの入り口には転移の間というのがあり、そこから行ったことのある階層まで転移することが可能だそうだ。しかし、5階層ごとにしかセーブ出来ないので最初転移できる階層は1層と5の倍数の層しか転移できない。
3、迷宮とダンジョンの違いは上にあるか下にあるかの違いだけで迷宮は下に、ダンジョンは上に続いている。
4、迷宮やダンジョン内では魔物を殺すと魔石と極たまにドロップアイテムだけが落ちるのでメリットは魔石の取り出しに時間がかからない。デメリットは魔石とドロップアイテム以外は持ち帰れないということだ。
5、魔石やドロップアイテムの換金は迷宮やダンジョンの前にある換金所で換金できる。
6、迷宮やダンジョンには1階層ごとに階層主というのがいるのでそれを倒すことで次の階層に続く階段が現れるらしい。
何度でも復活するが復活するには1時間かかる…
こんな感じだ。
ちなみに今現在までに発見されている階層は迷宮が62階層まで、ダンジョンが75階層までで完全攻略がなされているのは1階層下までだ。
俺はメネアさんに感謝の言葉を述べてから迷宮に向かう前にリルルを宿に連れていく。
この街で3番目くらいに高い高級宿の3人部屋をとって今度こそ迷宮に向かう。
ちょいと迷宮に入るには遅い時間帯だがまだ午前9時30なので十分楽しめるだろう。
街を見渡しながら迷宮に向かうと街中に張り紙があることに気付く。
「シャル先輩、あの張り紙って何ですか?街中にあるようですけど…」
「あれは武闘大会の案内だよ。半年後にやるらしいね」
「武闘大会?闘技大会とはどう違うんですか?」
「闘技大会は人同士が戦い合うものだが、武闘大会は人と魔物の戦いなんだよ」
へぇ〜、面白そうじゃん。出てみようかな…
「参加者受付はやってますかね」
「明後日から参加者を募集するらしいよ」
この街にいることだし折角だから参加しちゃおう!まあ、大会自体は半年後なんだけどね。
話し合いながら進んでいくと目視できる距離に壁を発見した。
ちなみに黒の姿のままなのでとても目立っている。
「シャル先輩、あの壁は何ですか?」
「あの壁はね、迷宮の中から魔物が溢れでて来たときに抑えられるように作られた壁なんだ」
確か地こんな街中に魔物がいきなり出て来たら危ないもんな…
壁の前までくると門番さんがこちらに歩み寄ってくる。
「ほら、リュウト君、探索者カードと銀貨1枚出して」
探索者カードの方はわかるが銀貨1枚はなんだ?税金か?
そんな疑問を持ちながらも探索者カードと全員分の銀貨4枚をポケットに手をっこんだように見せかけて亜空間を開きそこから取り出す。
門番が俺達の前までくると話しかけてくる。
「黒様、お目にかかれて光栄です。それで、今回はどのようなご用件で?」
「迷宮に向かうところだったんだが…通して貰えないだろうか」
「では、探索者カードと銀貨1枚をお願いします」
俺は全員分の探索者カードと銀貨を門番に渡す。そしたら棒状の何かを貰った。なんだろ、この棒。
「確認いたしました。お気を付けて行ってらっしゃいませ」
そんな声を背後に聞きながら俺達は迷宮に入る。
迷宮内は洞窟みたいな感じで壁や床が薄く光っていた。
しばらく歩いていくと1つの部屋にたどり着く。
「ここは?」
俺が声に出して言うとシャル先輩が答えてくれた
「ここはね、転移の間って呼ばれている場所だよ」
ここがそうなのか…
中央には大きな魔法陣が1つのあるだけで他には何もない。
俺達は魔法陣の上に立って手を繋ぎ、そのまま時間だけが流れていく。
「リュウト君、一層って思い浮かべてみて」
シャル先輩に言われた通りにやってみたが何も起こった気がしなかったが、目を開けるとそこはさっきまでいた場所でなく違う部屋に移っていた。
「ここが迷宮の第一層だよ!ちなみに私は13層までなら行ったことあるよ!」
「じゃあ、さっさと行っちゃいますか。あ、でも、戻る時って普通に戻ってくるんですか?」
「いいや、転移棒という物をさっき貰っただろう?それを指定の場所に刺すと地上に戻れるんだ」
ああ、さっき貰った棒のことか…
「じゃあ、今度こそ出発!今日の目標はとにかく下の階層に行くこと!」
そう言って罠の警戒も何もせずに歩き出す。
罠に引っかかりそうになったら回避すればいいだけだしね。
しばらく歩いていくと前からゴブリン5匹がやって来たが今日の目標はとにかく下に行くことで戦ってる暇などない。
なので殺気をゴブリン達に集中して飛ばす。
ドワァン
なんか敵キャラが消滅した時みたいな音を出してゴブリン達が一斉に灰になり散って行く。
ゴブリン達がいたところには5つの魔石が落ちていた。
なんで死んだんだ?もしかしてショック死?
そんなに殺気出てたか?
俺はシル、リュカ、シャルの順番で見ていき
シルはなんともないような表情で、リュカは自慢するような表情を、シャルは漏らしていた。
「『ドライ』」
火魔術と風魔術の複合魔術をかけて乾かしてやってから話しかける
「大丈夫でした?いや、大丈夫じゃなさそうだな……これからもこのスタイルでやっていくから慣れて下さいね」
「うっ……」
泣き出してしまった…
どうしよう…
「ま、まあ、今のは見なかったことにしますので進みましょう」
気を取り直してからしばらく進んだどころで、あることに気がついた。
「そういえば階段ってどこにあるんだろ……シル、どこかわかるか?」
「階段の場所?それはわからない…緯度と経度と深度しかわからないから…ごめんなさい」
「シルが謝ることじゃないよ。シャル先輩はわかりますか?」
「わからないよ……」
シャル先輩でもわからないか……リュカはわかるのかな…
「リュカはわかるか?」
「1つだけ方法がありますがとても魔力を使うんです。それでもいいですか?」
「それでもいいから教えて」
「では僭越ながら申し上げますと、魔力波を周囲に放ち超音波のようにしてはいかがと」
ああ!その手があったか!
俺はそれを実行し、もっとよくするために半透明な板を作り出して俺の魔力と連動させ、魔力波を周囲に放つ。
魔力波が周囲に広がっていくと同時に半透明な板にこの迷宮一層部分だけが地図として映しだされる。また、俺の魔力と連動しているため現在地も正確にわかる。もちろん階段の場所もわかる。
うん、とても便利だ。
「ありがとリュカ、助かったよ」
リュカに声を掛けてから階段のある道に向かって進む。
ーー30分後ーー
今は1層階層主の部屋の前に来ている。
1層ではゴブリンの襲撃が1回あっただけで全く襲われなかった。
なんだ……もっと楽しめるものかと思ってたんだけど…
「多分、ご主人様のオーラだと思いますよ。ゴブリンに襲われてからずっと殺気を放ち続けてましたから」
「え?マジで?」
「マジです」
やばくないか?病気か?自分で気付かずに放出しっぱなしって……これから気をつければいいか。
とりあえず気を取り直して階層主の部屋に繋がる扉に手を掛けて開く。
中は大広間のような何もない空間だった。もちろん何もないのだから明かりすらない。
1つだけわかるのは目の前に道があるということ。
ここを通らなくては何も始まらないので部屋に一歩踏み出し、全員が入ると扉が勢いよく閉まる。
「ここ、いつもの階層主の部屋じゃないよ……多分裏階層主だ。本当に存在したんだ…」
「シャル先輩、裏階層主ってなんですか?」
「裏階層主というのは言い伝えしか残っておらず、ここ数千年では誰も到達することができなかったと言われている伝説と化していたんだけど…実物を見てしまうと信じざる得ないね……ちなみに言い伝えによると、『真の階層主は1度も戦闘を行わなかった者が自然に来る場所である。また、一緒にいる者が一度でも戦闘行為を働くと誰1人として到達することはできない』って言われているんだよ」
ってことは殺気で殺すのは戦闘に入らないってことか……
俺達が扉の前で全く動かないと奥から何か巨大な者の足音がして来る。
ズウゥン……ズウゥン……
足音は俺達の10メートル先ぐらいで止まると大広間の周囲に紫色の炎が現れ完全に逃げられないようになった。
部屋の中心には左右6対の合計12枚の黒いコウモリのような翼を大きく広げ、頭には牛のような角を生やし、瞳は赤くギラついていて、とても禍々しい服を纏ったイケメンな見た目35歳くらいの男の人が30センチの高さを保って浮いていた。
「ルシファー・ルシフェル………」
そんな名前が頭に浮かんできた。
「おお!この姿で当てたのは君だけだよ!じゃあ、まずは自己紹介から始めようか。僕の名前はルシファー・ルシフェル。昔は大天使長なんてやってたけど今はサタンなんてのもやってる。地獄の支配者の1人だからね。それで、君達は何故ここに来たんだい?僕、結構君のこと好きだったのに…殺さなくちゃいけないなんて残念だ…」
「じゃあ、殺さなければいいんじゃないか?っていうか、この姿が本物の姿だったのか、魔王」
後者は誰にも聞こえない声量で言った。
「そうもいかないんだよね〜、でも、僕の手で殺すのはなんか嫌だから配下を呼び出す。その配下を倒せたら僕と戦うか地上に戻るかを選択してね!ちなみに物凄く強いから気を付けてね!」
ルシファーは一方的に告げると背後に真っ黒の術式を展開させる。
クソッ!さすがにこれはやばいぞ!
俺はリュカとシャルに下がるように言い、シルに命令する。
「フル装備で行く。久しぶりに本気出すぞ!!!」
「はい!またあの姿のマスターが見れる!!!」
俺は戦闘態勢を整えて相手を見据える。




