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オールゼロの英傑継承者〜魔導学園で「期待外れ」皇子は、すべてを亜空間で無効化(ミュート)する〜  作者: はる吉
第4章:アカデミー

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ヤッパリラッキーと夕暮れ涙

少し長めです

大賢ノエルが放った、国家崩壊レベルの複合天災魔道。その圧倒的な破壊の痕跡に、巨大な騎士団用第ニ闘技場は、まるで巨大な隕石が衝突したかのような惨状を呈していた。直径数十メートルに及ぶクレーターからは未だにパチパチと紫電の残滓が爆ぜ、熱気が陽炎となって空間を歪めている。

「……は、早く! 修復班、急ぎなさい!」

宮廷府の役人が震える声で指示を飛ばすと、待機していた闘技場の専門職員や宮廷魔導士たちが、一斉に闘技場へと駆け込んだ。

彼らが練り上げるのは、それぞれの特性に特化した「土」「木」「風」「機」「光」のギフトだ。

「地脈回生・強土構築!」

「魔鋼錬成・構造復元!」

液状化させた土をクレーターに流し込み、錬金術の機ギフトで魔鋼の基盤を一瞬で再構築していく。さらに風のギフトで充満した熱気と毒霧を完全に吹き飛ばし、光を中心にした各ギフトによる複合結界、わずか数分という驚異的な時間で、闘技場の舞台と周囲の結界障壁は、何事もなかったかのように完璧に修復されていった。

この慌ただしい小休憩の最中、闘技場の空間のいちぶが「ぐにゃり」と異様に歪んだ。

「――おっと。ノエルの嬢ちゃん、相変わらず凄まじい気を撒き散らしてくれたもんだな!」

何もない空間に、突如として次元の裂け目が現れた。そこから、大柄な二人の男が姿を現す。

三大英傑が二人。最強の戦士「剣聖」一ノ瀬瞬と、次元を操る規格外「鍛神」千手破岩である。千手破岩の無属性ギフトによる気を読む力と次元移動によって、大賢の放った大災害級の気の揺らぎを探知して、闘技場へと直接転移してきたのだ。

「あら、瞬に破岩。随分と派手な登場ね。引退した身の私を驚かせないで頂戴。」

学園長席から二人の元へと歩み寄ったのは、皇帝の妹であり学園長を務めるオリヴィア(織姫)だった。その後ろには、細めのスクエアメガネを位置づけた一回生担任エドガー・レオンハートと、黒髪ロングポニーテールを揺らす九条朧が、静かに控えている。

「学園長、お久しぶりです。いや、ノエルの気が急激に膨れ上がったのを感じたのでな。アカデミーのガキ辺りが愛弟子(焔光)を侮辱したって所だろうが、ノエルがブチギレた感じなんで、一応、破岩とすっ飛んできたわけだ」

剣聖・一ノ瀬瞬が、快活に笑いながら愛刀の柄を叩く。

「全く、あの小娘の激愛っぷりには英傑の俺たちですら肝を冷やす。だが……」

鍛神・千手破岩が、頑強な腕を組みながら、観客席で大人しく座っている焔光へと視線を向けた。

「今回は隠蔽の為にエドガー、お前の手柄にまだ、なってないんだろ?」

破岩の意地悪な問いかけに、エドガーは口元に火のついていないクシャクシャの煙草をくわえたまま、深々とため息をついた。

「勘弁してくださいよ、破岩さん。あの規格外の殿下(焔光)がシレッと仕組む、お芝居のせいで、僕の実家(北辺境伯家)の脳筋兄貴から当主になれって手紙が毎日山のように届くんです。朧さんからも毎日からかわれるし、今回も隠蔽押し付けられたら、本当に割に合わないですよ」

「ふふ、良いではないかエドガー。お前のおかげで、焔光の本質は未だに「座学だけが完璧なラッキー皇子」の枠に収まっている。これ以上の隠蔽はあるまい。」

朧が切れ長の鋭い瞳を細めて笑う。オリヴィアもまた、厳格な面持ちの裏で、恩人の遺児であり、最愛の甥の実子である焔光が謀略に巻き込まれぬよう立ち回る彼らに、深く感謝の視線を送っていた。

「よし、そろそろ時間だ。6回生の戦いが始まるぞ。瞬、学園側は剣使いの戦いだ、しっかり見ておいてやれよ!」

破岩の言葉と共に、闘技場の掲示板が再び眩い光を放った。

「お待たせいたしました。第6試合(6回生対決):レイハルト・バルツ(皇立学園) VS シンイー・ルオ(デカマギア・アカデミー)』

皇立学園の代表として舞台に上がったのは、アルベール失脚後の最上級生を統率する熱血漢、レイハルト・バルツ。彼のギフトは「火」。騎士剣に赤蓮の炎を纏わせ、その揺らめきによって相手に間合いを測らせない、高潔な騎士だ。

対するアカデミー代表は、黒い長髪を流した冷徹な青年、シンイー・ルオ。その手には、禍々しい漆黒の巨大な鎌が握られていた。

「皇国の騎士よ。その炎ごと、すべてを侵食し断絶してあげよう」

シンイーが冷酷に告げると同時に、審判の合図が響いた。

「始め!!」

「ハァァァッ!」

レイハルトが地を蹴り、騎士剣を猛烈に振るう。剣の軌道上に、彼の緻密な戦術である「遅延発動型の炎」が罠として幾重にも設置されていく。一見すると無謀な突撃に見えるが、相手が踏み込んだ瞬間に周囲の空間が爆発する、完璧な包囲陣。

しかし、シンイーの瞳は微塵も揺るがなかった。

「無駄だ。――「侵食の黒鎌(ブライトリーパー)」」

シンイーが巨大な黒鎌を大きく凪いだ。瞬間、鎌が通過した軌跡から、現実の空間そのものを黒く塗り潰すような「闇」が急速に拡大した。

ドガガガガッ!!!

レイハルトが仕掛けた遅延発動型の炎の罠が、爆発するよりも早く、その闇の侵食によって「概念ごと」消滅させられていく。

「な、何だと……!? 術式ごと、空間が侵食されているのか!?」

焦るレイハルト。シンイーの黒鎌は、レイハルトの放つ炎の障壁すらも容易く切り裂き、その喉元へと迫る。レイハルトが、騎士剣で黒鎌を薙ぎ祓い、かろうじて黒鎌を躱した。

「なら、コレならどうだ?」レイハルトは騎士剣を円を描くように動かした。「いざ。」声と共に先程剣を動かした軌道に沿って爆発が起き、その爆発が、レイハルトの身体に纏わりついてレイハルト自身が炎塊となり、シンイーに突撃した。黒鎌を風車の様に回して、闇の盾を形成して防ぐシンイー。闇の侵食と炎の再生がぶつかり合う。ドドドォン!シンイーの黒髪を焦がしはしたが、レイハルトの炎は消えた。

「終わりだ」

ザシュッ!! と、闇の刃がレイハルトの胸元を浅く切り裂いた。同時に、強力な闇の気が彼の体内に流れ込み、魔力の循環を強制的に侵食し遮断する。レイハルトは膝をつき、騎士剣を床に突き立てたまま、無念の表情で頭を垂れた。

「勝者、デカマギア・アカデミー、シンイー・ルオ!」

これにより、正規の交流戦は皇立学園の4勝2敗。だが、アカデミー側の最後の意地としての「勝利」に、アカデミー側からは地鳴りのような歓声が上がった。

「さあ……お膳立ては整いましたわね。次はいよいよ、先ほどの「反則負け」を巡る、因縁の決着戦ですわ」

貴賓席から、シェイラの娘、星羅(セレナ)が、勝ち誇った笑みを隠そうともせず言い放った。兄の海流(カイル)もまた、冷酷な瞳で焔光を睨みつける。

「あらあら、流石は皇立学園の皆様。我がアカデミーの負けですわね?」

星羅(セレナ)が、わざとらしい、しかし計算高い声で闘技場全体へ向けて言い放つ

続けて、兄の海流(カイル)が、これ見よがしに焔光の座る観客席を指差した

「ただ、1回生の試合はアカデミーの勝ちと言いながら、そちらの魔獣の介入による反則。これではアカデミーの生徒たちも納得がいかない。……どうでしょう? そこの「期待外れ」と噂される私の従兄弟殿である皇族、焔光殿下。不届きな魔獣は貴方が飼っているとか?責任を取り、その魔獣とペアを組み、我がアカデミーの勝ち組であるシンイーとセドの二人を相手に、特別戦で決着をつけるというのは?此方の二人は、試合が終わったばかり。丁度良いハンデかと?」

「そうだ! やれ! やれ!」「皇族の力を見せてみろ!」

アカデミーの生徒たちが、示し合わせたかのように大合唱を始める

風花が「お兄様を侮辱する不届き者ども、全員風の刃でバラバラにして……!」と、世界を滅ぼしかねない狂信的な気を練り上げたとき、ドオン!!ノエルの極大電撃が闘技場に落ちた。落雷で騒ぎが一瞬静まる。隣のシャーロットもエメラルドグリーンの瞳を怒らせるなか――

焔光は、「よっこらしょ」と気の抜けた声を上げて立ち上がった

「あーあ、やっぱりこうなるよね〜。責任は取らなきゃ、か」

亜空間から取り出した、鷹の翼が装飾された短槍を肩に担ぎながら、焔光は闘技場へとゆっくり歩を進める。その足元へ、真っ白なモフモフの体と3本の尻尾を揺らす聖獣・仙(せん)が、嬉しそうに「キュイン♪」と鳴いて座っている。

「ただ、僕の「聖」獣の仙は、ちょっと強いですよ?」

平凡な「期待外れ皇子」を演じる少年の瞳の奥で、かつて世界を救った勇帝と聖なる巫女の血脈が、シレッと不敵な輝きを放ち始めていた。」 


闘技場の中央に、その少年が立った。

対面には、先ほどレイハルトを破ったシンイー・ルオ。そして、「万象機甲(オムニ・ギア)」を再起動させ、顔を歪ませた1回生のセド・カドスが、二人係で焔光を包囲していた。

「おい、期待外れ皇子。その生意気な魔獣もろとも、一瞬で消し炭にしてやるからな!」

セドが万象機甲の砲門を最大出力でチャージし、シンイーもまた黒鎌を構えて闇の気を極限まで練り上げる。

「両者、構え――始め!!」

「死ねぇッ! 「万象機甲」最大出力・轟雷連撃!」

「すべてを呑み込め――「侵食の黒鎌」!」

セドから放たれた極太の青白い雷撃と、シンイーの放った空間ごと侵食する闇の斬撃が、同時に焔光へと殺到した。若き精鋭二人の、完全なる全力の同時挟撃。

だが――。

「キュイッ!!」

センが愛らしく短い羽をパタパタと羽ばたかせると、焔光の周囲に、透き通るような強固な「亜空間結界」が瞬時に展開された。

ドゴォォォォォォォォン!!!!!

凄まじい爆音と光の奔流が結界を叩いた。だが、二人の攻撃力では、焔光の無属性ギフト(本質)によって維持されているセンの結界を突破することなど、そもそも「攻撃力不足」なのだ。いくら闇を侵食させようが、雷撃を叩き込もうが、一定以上の攻撃エネルギーは亜空間へと静かに吸い込まれ、無へと還されていく。

「な、何だと……!? なぜ破れない!? シンイーの黒鎌の闇すらも吸い込まれているだと!?」

セドが顔面蒼白になって叫び、シンイーもまた、どれだけ鎌を振るっても傷一つつけられない目の前の結界に、初めて明確な「焦り」の表情を浮かべた。

「うーん、二人の攻撃、凄く派手だけど全然届いてないよ? ――じゃあ、僕からもお返しね」

焔光は短槍を構えたまま、結界の内側から、ポン、ポン、とごく小さな光の弾を指先から射出した。

自身の精密な制御能力により、威力は完全に「石礫程度」へと落とされた、いつものクッション光弾だ。

コツン。コツン。

「い、痛っ!? なんだこの石ころみたいな光弾は!」

セドの機甲の装甲に、そしてシンイーの額に、焔光の光弾がコミカルな音を立てて命中する。大したダメージはない。だが、アカデミー代表の精鋭である彼らにとって、これほどプライドをズタズタにされる屈辱はなかった。

さらに、センが調子に乗って、自身の放った小さな星形の光弾を、シンイーの鼻先にコツンと命中させる。「キュインッ♪」と、まるで小馬鹿にするような聖獣の鳴き声。

「ふ、ふざけるなぁ……! 舐めるなよ、期待外れがぁぁぁ!!」

「この俺たちが、そんな小細工の、運だけの男にぃぃ!!」

二人の怒りは完全に臨界点(マックス)へと達した。シンイーとセドは、自身の全生命力、全ギフトの「気」を限界を超えて絞り出し、体からどす黒いオーラと狂ったような電撃を噴き出させた。

「最大出力ッ!! 結界ごと、肉片に変えてやる!!」

二人は完全に理性を失い、最大出力を身に纏ったまま、自らの肉体ごとセンの結界へと突撃してきた。シンイーの黒鎌が、怨念のような闇を宿して結界へと肉薄する。

(――よし、ここだね)

焔光の「気流読み」が、二人の気の流れが完全に一点に集中し、後戻りできない軌道に入った瞬間を看破した。

シンイーの黒鎌が結界に触れる、まさにその刹那。

焔光は、シレッとセンの結界を「完全解除」した。

「え――」

シンイーが目を見開いた時には、すでに手遅れだった。目の前にあったはずの絶対の盾が唐突に消滅し、自身の放った全力の闇の斬撃の軌道が、完全に制御を失って前方へと突き抜ける。

同時に、焔光の掲げた短槍から、宗近の仕込んだギミック――背後に眩い魔法陣が浮かび上がり、自動で高速回転する「鷹炎光輪陣(ようえんこうりんじん)」が発動した。

周囲には、「魔導具か何かの作用による魔法陣」に見える、手品のような薄い防壁が展開される。

ガキィィィンッ!!!

シンイーの放った黒鎌の凶悪な一撃が、焔光の「鷹炎光輪陣」のベクトル反らし(軌道変更)の気に接触した。瞬間、鎌の攻撃のベクトルは強制的に「真横」へと反らされ、そのままの勢いで、すぐ隣を全力で突撃してきていたセド・カドスの「万象機甲」へと直撃した。

「ぶふぇっ!?」

セドの悲鳴が響く。シンイーの最大出力の闇の刃を側面からモロに喰らった万象機甲は、内部の魔石のバランスを完全に破壊され、過負荷によって一瞬で暴走。

チュドォォォォォォン!!!!!

「ぎゃああああああっ!?」

「うわああああああっ!?」

激しい魔力の自爆を引き起こし、傷ついたセドの機甲が派手に大爆発。その爆風に巻き込まれる形で、シンイーもまた、自身の放った気の反動と爆発によって、二人一緒に闘技場の壁へと吹っ飛ばされ、煙を上げながら無様に撃沈、完全失着(ノックアウト)した。

静まり返る闘技場。焔光は、煤のついた短槍をパタパタと手で仰ぎながら、実に見事な、わざとらしい「困った顔」を作ってみせた。

「ありゃあ……。二人の最大出力の攻撃に耐えられなくて、僕の結界が破られちゃったみたいですね。それで、たまたま短槍に仕込んでおいたスクロールの防御術式に当たって、跳ね返った攻撃が……二人の自爆になっちゃうなんて。タイミングって、本当に怖いですねぇ」

「……は、はい?」

審判が呆然と口を開ける。客席の誰もが、今の「あまりにも都合の良すぎる幸運の連続」に、言葉を失っていた。結界が破られた絶体絶命の瞬間に、たまたまスクロールの防御が発動し、シンイーとセドの二人が自滅に近い形で撃沈したあの瞬間を、観客席の多くは「奇跡的な偶然」あるいは「手品のような幸運」と受け止めていた。

「おおお……! さすがは、ラッキーぷりんす……! 敵の最大出力を、たまたまスクロールの防御だけで跳ね返すなんて、神懸かった強運をお持ちだ!」

「世界そのものが焔光殿下を勝たせようとしている! なんという圧倒的な強運!」

「拝め! 焔光殿下の幸運の御力を拝むんだ! 生存本能が告げている、あの御方の側にいれば絶対に死なないと!」

風花様親衛隊(非公認)の面々が、早くも涙を流しながら焔光に向かって手を合わせ、過剰な崇拝を開始していた。

シャーロットは「焔光様、ご無事で本当に良かった……!」と胸を撫で下ろして赤面している。風花だけは「お兄様に触れようとした罰ですわ」と、冷ややかな目で撃沈した二人を見下ろしていた。


「いやあ、本当に怖かったよ。たまたま仕込んでおいた防御が上手く働いてくれて良かった〜」

当の焔光は、懐から「使い古した(ように見せかけた)魔導スクロールの残骸」をシレッと取り出し、エドガーや朧に向けて苦笑いを見せていた。その本質が、自身の亜空間ギフトを応用した「絶対防御障壁」であり、敵の攻撃のベクトルを強制的に反らした結果であることなど、そして恐るべきは、ベクトルの反らした先の位置を正確に計算した事であるが、この場にいるごく僅かな核心を把握する人物以外に知る由もない。


最高責任者である紗夜が、くすくすと上品に笑いながら、立ち上がった。

「見事な結末です。これにて、すべての試合が終了いたしました。――勝者、皇立学園、焔光・フォン・アウグスト!」

割れんばかりの歓声(と、アカデミー側の絶望の沈黙)のなか、交流武術大会は、皇国の圧倒的な勝利という形で幕を閉じた。


海流(カイル)も星羅(セレナ)もはじめて目の当たりにしたラッキー(と見せかけた演技)に言葉を失う中、閉会式では、特別視察官の紗夜から、皇立学園の勝利を称える言葉が送られた。


大会が完全に閉幕し、夕暮れ時の学園。

一回生クラスの訓練場には、未だに悔しさに唇を噛み締め、涙をボロボロとこぼしているノア・メイリンの姿があった。

「うぅ……私、何も出来なかったです……。せっかくの交流戦だったのに、罠に嵌められて、焔光の兄様やセンに助けられて、反則負けなんて……!」

お団子頭をぎゅっと握りしめ、自分の無力さに涙を流すノア。

「――だったら、強くなるしかねぇなぁ、ノア」

背後から、地響きのような低い声が響いた。

振り返ると、そこには腕を組んだまま、不敵な笑みを浮かべて立つノアの師匠――「鍛神」千手破岩の姿があった。その後ろには、焔光とセンも静かに佇んでいる。

「師匠……」

「お前の「次元工廠」は規格外だ。だが、術式を妨害され、呪術魔石ごときで力を吸い尽くされるのは、お前の「気」に対する解像度が甘いからだ。焔光のガキを見ろ。こいつは相手が技を出す前に、その根源の流れを完璧に看破してやがる」

破岩の言葉に、ノアは涙を拭い、驚愕の目で焔光を見た。

「焔光の兄様が……気の流れを?」

「そうだ。あいつのチートっぷりをお前も知ってるだろ? ――ノア、今日からお前には、俺と、そして裏で焔光のガキが教育を担当する「鍛神」直伝の、過酷な「気流看破」の修行を言い渡す」

破岩の目が、獰猛な戦士のそれへと変わる。

「言い訳は聞かねぇ。明日から毎日、俺の放つ次元の歪みの「気」を、一瞬でも見失ったら肉体がバラバラになる過酷なシゴキだ。死ぬ気でついてきな、俺の可愛い弟子」

「……っ、はい! 望むところです! 私は、もっと強くなって、絶対に焔光の兄様の盾になります!」

ノアは力強く拳を握り締め、その栗色の瞳に、不屈の炎を宿した。

夕日に照らされる訓練場で、新たな強さを求める少女の、地獄のような過酷な修行の日々が、今ここに幕を開けようとしていた。

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