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オールゼロの英傑継承者〜魔導学園で「期待外れ」皇子は、すべてを亜空間で無効化(ミュート)する〜  作者: はる吉
第4章:アカデミー

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学園とアカデミー

少し長めです

第1試合、ノアの敗北。「気」を大量に吸収された状態では大怪我するとの判断で、手を出した焔光であった。敗北で悔しさ最大のノアが席に戻ると焔光がノアに原因を告げた。「タイタンの内部に気を吸収する魔石らしき物が埋め込まれていて、そのせいで力がでなかったろ?」「…えっ…これ罠だったの?」「そうらしいね。タイタン貸して。」焔光はノアからタイタンを受け取ると小さく亜空間を使い、シレッと魔石を取り出しタイタンを返した。「コレが原因だね。…うん…気流は読めたから、今度から相手へのデバフに使えるね。ノア妹弟子(ちゃん)、この魔石で今度は相手の気を吸収してデバフかける魔石小銃を作ってあげるね」と優しく微笑むのだった。


そう会話してる間に、

中央の魔導電光掲示板が、不穏な音を立てて次の試合の組み合わせを書き換えた。

「第2試合(2回生対決):カレ・ミディム(皇立学園) VS ゴウラン・バザル(デカマギア・アカデミー)」

「よし、私の番ね。フォックス、あんたのチャラついた応援はいらないからね」

勝気なポニーテールを揺らしながら立ち上がったのは、2回生代表のカレ・ミディムだった。彼女は、17才にて転入しながら、自ら1回生から学ぶ事を希望したと言う、フォックスに興味を持ち行動を観察してるうちに、彼の隠密としての実力を知り、高く評価している。故に彼のチャラ男の演技を見抜き、いつも呆れているのだった。

「ひどいなぁカレちゃん! 俺は純粋に友達を応援しようと思ってさぁ。ほらほら、頑張って!」

飄々とした笑みを浮かべて手を振るフォックス・シルフィード。だが、その琥珀色の瞳の奥、西辺境伯家が誇る最年少の精鋭隠密としての冷徹な戦術眼は、対面から入場してくる鉄仮面の男――ゴウラン・バザルを冷たく見据えていた。

「カレちゃん、あの鉄仮面、気の練り方が尋常じゃねぇよ。風の中に、砂を混ぜてやがる。ただの面制圧じゃねぇ、肉を削ぎ落とす気だ」

「……分かってるわよ。チャラ男のくせに見抜くことだけは一人前ね」

カレはフッと不敵に笑うと、闘技場の土舞台へと足を踏み入れた。

「両者、構え――始め!」

審判の鋭い合図と同時に、鉄仮面のゴウランが動いた。その両手から放たれたのは、「真空の土弾(サンド・ストーム)」。

「ルァッ!」

短い呼気とともに、目に見えない風の刃が闘技場を縦横無尽に駆け巡る。ただの風ではない。内部に極限まで微細化された魔鋼の砂礫が混ざり合っていた。触れるものすべてをやすりで削り取るように、物理的な障壁ごと消滅させる、凶悪な暗殺武技。

キィィィィン!! と、空気が悲鳴を上げるような音が闘技場に響き渡る。

「地味な攻撃だけど、喰らったら骨まで残らないわね――だけど、私の土を舐めないで!」

カレが地を強く踏み締める。その瞬間、彼女の「土」属性のギフトが発動した。

無音のままゴウランの足元の地面が、一瞬にして液状化現象を起こしたのだ。

「……!?」

無口な鉄仮面が、初めて僅かに動揺の気配を見せた。足元が完全に沈み込み、自慢の「真空の土弾」の射線が大きくブレる。

「私の土は、変幻自在の底なし沼よ! はい、消えます!」

カレはその場から忽然と姿を消した。自身が液状化させた土の穴の中へと、文字通り「潜り込んだ」のだ。地中を縦横無尽に移動するトリッキーなヒット&アウェイ戦法。

次の瞬間、ゴウランの背後の地面が弾け、カレが神出鬼没に出現した。

「そこっ!」

土を硬化させ、強烈な回し蹴りを放ち、ゴウランの鉄仮面を捉える。

ゴウランもさるもの、即座に風の障壁を背後に展開したが、カレは深追いせず、再び土の中へと滑り込むようにして姿を消した。

「姑息な戦術を……!」

客席のアカデミー側から焦りの声が漏れる。ゴウランは「真空の土弾」を全方位に撒き散らし、地中のカレを炙り出そうとするが、カレの液状化の範囲はすでに闘技場全体の半分をカバーしていた。どこから飛び出してくるか完全に予測不能な底なし沼の檻。

「これで、おしまい!」

ゴウランの足元から、今度は巨大な土の腕が隆起し、彼の両足を完全に捕らえて固定した。身動きの取れなくなった鉄仮面に向けて、カレが空中から急降下し、魔力を込めた一撃を脳門へと叩き込む。

ドガッ!!

激しい衝撃とともに、ゴウランの身体が闘技場の床へと沈み込んだ。完全に意識を失った暗殺武人を見下ろし、カレはポニーテールを誇らしげに揺らした。

「勝者、皇立学園、カレ・ミディム!」

学園側の観客席から大きな歓声が上がる。

「いやぁ、カレちゃんお見事! さすが俺の目に狂いはなかったねぇ!」と相変わらずチャラチャラと騒ぐフォックスに、カレは呆れた視線を送りつつも、確実に手応えを感じていた。

しかし、アカデミー側の次の代表が立ち上がった瞬間、闘技場の気温が急激に低下した。

「第3試合(3回生対決):神楽 凍華(皇立学園) VS メイリン・ファン(デカマギア・アカデミー)」

「凍華、気をつけて。あの少女、ただの魔術師じゃないわ。精神を腐らせる呪いを使うらしい」

入場口へ向かう神楽凍華の肩に、同じ3回生の仲間が手を置いた。

「……問題ありません。我が神楽の氷結で凍らせぬ呪いなど存在しませんわ」

凍華は、聖域の三家老家代表たる神楽家に連なる令嬢としての気品を崩さず、静かに、しかし絶対的な冷気を全身から立ち上らせていた。学園3回生筆頭、剣聖の弟子であり、焔光と共に3年間も血のにじむような修行を重ねた姉弟子。彼女のギフトは「水」、そしてその発展系である「無(氷結)」の2属性持ちだ。

対面から現れたのは、不気味な黒い法衣を纏った若き呪術師の少女、メイリン・ファン。その瞳には、昏い悦楽の色が浮かんでいた。

「皇国の綺麗な お人形さん。その誇り高い心を、内側からグズグズに腐らせてあげる……!」

メイリン・ファンが両手を掲げると、彼女の「幻影の鎖(サイコ・チェイン)」が発動した。

闘技場全体に、目に見えない「精神の気流」が張り巡らされる。相手の視線、あるいは呼吸の乱れを通じて脳内に直接干渉し、最も恐れる幻覚を植え付ける最悪の呪術。観客席の生徒たちすら、その邪悪な気に当てられて、わずかに目眩を覚えるほどだった。

「――愚かですね。」

凍華の美しい瞳が、冷徹にメイリンを射抜いた。

「なっ……! わたしの「幻影の鎖」が、繋がらない……!?」

メイリンが驚愕に目を見開く。

当然だった。凍華は15年前、あの魔王の邪気を神楽家の幼女として、間近で体感し、それを抑え込んできた勇帝と聖なる巫女の凄絶な力、そしてその遺児である焔光の「規格外の気」を日常的に浴びて修行してきたのだ。アカデミーの小娘が放つ程度の、小細工の呪術など、彼女の強固な精神の足元にも及ばない。

「神楽流剣技――「氷結無刀(ひょうけつむとう)」」

凍華が、腰に帯びた名刀の柄に手をかけた。

瞬間、闘技場全体の「時間」が止まったかのような錯覚が場を支配。凍華の放つ絶対零度の冷気が、場そのものを、そしてメイリンが展開していた「幻影の鎖」の術式(気流)そのものを、力づくで物理的に凍らせていく。

バリバリバリバリッ!!!

「ひっ、あ、体、が……!? 術式が、凍って……!?」

メイリンが悲鳴を上げる間すらなかった。彼女の足元から太もも、そして胸元へと、一瞬にして美しい氷の結晶が這い上がり、その全身を完全に凝固させた。術式ごと凍らされた呪術師は、呪力を完全に遮断され、ただの美しい氷像と化してその場に立ち尽くす。

「勝者、皇立学園、神楽 凍華!」

一太刀すら交えることなく、術式ごとの完全凍結による圧勝。

「さすが凍華様! 聖域の至宝だ!」

学園側の歓声が響くなか、凍華は観客席の焔光に向けて、ほんの少しだけ、嬉しそうな、ウキウキとした微笑みを送った。焔光もまた、客席からパチパチと静かに拍手を送っている。

だが、第4試合の組み合わせが表示された瞬間、今度はアカデミー側から、一際激しい怒気と咆哮が上がった。

「第4試合(4回生対決):一ノ瀬 蓮(皇立学園) VS エンホウ・ガロウ(デカマギア・アカデミー)」

「おいおい、待ち兼ねたぜ! 皇国の「神速」とやらが、俺の炎の推進力にどこまでついてこられるか、試してやるよぉ!」

赤髪を逆立たせた好戦的な少年、エンホウ・ガロウが、闘技場の中心へと躍り出た。その全身から放たれるのは、爆発的な火と風の複合ギフト「烈火の暴風(バーニング・ブレイズ)」。彼の足元から激しい爆炎が噴き出し、その推進力によって、エンホウの身体が文字通り「空中」へと静止した。

対する一ノ瀬蓮は、剣聖・一ノ瀬瞬の遠縁であり、焔光の兄弟子にあたる4回生だ。

「……騒がしい男だ。神速の前では、音すら遅すぎるというのに。」

蓮は静かに愛刀を構えた。彼のギフトは「光」と「風」。その2つの属性を、純粋に「質量を持たない絶対的なスピード」へと変換する、神速の剣士。

「死ねや、温室育ちがぁ!!」

空中のエンホウが、爆炎の推進力を最大に爆発させた。

ドッ!!!

音速を超える速度で空中を縦横無尽に駆け巡り、死角から高火力の炎を叩きつける。闘技場全体が、エンホウの残した炎の軌跡によって真っ赤な網の目のように覆われていく。

「どこを見ている?いつ本気で移動するのだ?」

「――あ!?」

エンホウが気づいた時には、すでに遅かった。

蓮の姿が、客席の誰の目にも止まらぬ速度で、エンホウの「背後」へと既に移動していた。光と風を完全に同調させた移動攻撃術。

「神速流――瞬閃(しゅんせん)」

閃光が一筋、空間を裂いた。

エンホウが放っていた「烈火の暴風」の推進力の「核」を、蓮の刃が正確に、そして音もなく切り裂いた。

「がはっ……!?」

爆発的な推進力を完全に失い、空中からまるで羽をむしられた鳥のように叩き落とされるエンホウ。闘技場の床に激しく叩きつけられ、彼の炎は完全に鎮火した。

「勝者、皇立学園、一ノ瀬 蓮!」

あまりのスピード決着に、アカデミー側の観客席は完全に静まり返った。4回生対決までもが、皇立学園の完全なる圧倒。これでスコアは学園側の3勝1敗となり、交流会の主導権は完全に皇国へと傾いていた。

第5試合。この大会の「真の臨界点」が、ついに訪れる。

掲示板に刻まれたその名に、闘技場全体の空気が、物理的な重圧を伴って激変した。

「第5試合(5回生対決):エミール・ノエル(皇立学園) VS バイレン・シュウ(デカマギア・アカデミー)」

「――あら、ようやく私の番ね」

学園5回生であり、三大英傑の一角たる「大賢」エミール・ノエルが、静かに席から立ち上がった。

プロポーション抜群で、制服の胸元が豊満に波打つ。世界の真理に最も近いとされる彼女が動くだけで、闘技場に眠るすべての「一般属性の気」が、まるで主を迎えるかのように一斉に震え始めた。

対面から現れたのは、妖艶な雰囲気をまとうアカデミー5回生代表、バイレン・シュウ。彼女は狂信的にエイシン国最強の武人であり、かつて英傑候補だったランバルト・メディチスを崇拝している。

バイレンの全身から、不気味な紫色の液体と電撃が滴り落ちる。「紫電の毒沼(ボルト・ヴェノム)」。高熱の雷水を周囲に撒き散らし、触れた敵を確実に麻痺・衰弱させる凶悪な複合技術だ。

「ふん、大賢ノエル。たかが9歳の子供の頃に、秘術の「継承」だけで英傑の座に就いた偽物の小娘。我が崇拝するランバルト様こそが、その座に座るべきなのよ。力を譲られただけのお前のようなガキに、負けるわけがないわ」

バイレンが、これ見よがしにノエルを挑発する。だが、ノエルは冷ややかな、美しい微笑を浮かべたまま、全く動じない。

「譲られた「だけ」、ですか。世界の真理を知らない凡俗ほど、先代の遺した偉大な秘術の力の何たるかを理解出来ず、そのような理解をする者も居ますね。別に、私をどれだけ侮辱しても構いませんよ。私の力の半分も理解できない可哀想な方なのですから」

「ふん、強がりを! その力、私の毒沼で溶かしてあげるわ!」

バイレンがさらに言葉を重ねる。しかし、彼女が次に口にした一言が、この世界の均衡を完全に崩壊させる引き金となった。

「――そういえば、あの「期待外れ」の無能皇子、焔光殿下ですか?随分と溺愛しているようだけど。あんな石礫程度の威力しか出せない無能男を大事に囲っているなんて、大賢の眼も随分と曇ったものね。…あの男、皇太子にもなれず、皇族から放り出されたら、私の奴隷にでもして、じわじわと嬲り殺してあげ――」

「――今、何て仰いました?」

ノエルの声から、すべての「感情」が完全に消失した。

ドクン、と、闘技場全体の「気」が、物理的に反転した。

焔光が少し困った顔で「やばい、ノエル様がキレた!エドガー先生辺りが結界補強するだろうけど、一応、亜空間で闘技場の結界を覆って、相手の子も結界ごと、消滅しない様にしとくか!」

ノエルの背後から立ち上ったのは、世界を滅ぼしかねない、完全なる大自然の脅威そのものの「気」だった。それはあまりにも膨大で、あまりにも濃密な、大天災規模の魔道の暴走。「大英傑を挑発するたぁ、めんどくさい事しやがって」と火のついてない折れてクシャクシャになった煙草を口から投げ捨て、闘技場の結界を強化する。既に彼女の放つプレッシャーだけでも闘技場の周囲に張られていた防御結界が、「ミシミシ」と悲鳴を上げはじめ、亀裂が走り始める。

「ひっ……!? な、なんなの、この気の総量は……!?」

バイレンの顔から、妖艶な笑みが完全に消え失せた。彼女の誇る「紫電の毒沼」の雷水が、ノエルの放つ圧倒的な威圧(オーラ)だけで、蒸発すらできずに「恐怖」で霧散していく。

観客席の全生徒、宮廷府の役人たちまでもが、呼吸を忘れてその場に倒れこみそうになっていた。ノエルの怒りの総量は、文字通り「国家崩壊レベル」に達していた。彼女にとって、最愛の、そして英傑の重圧から救ってくれた無垢な存在である焔光を侮辱されることだけは、世界の何よりも許しがたい絶対の禁忌(タブー)だった。

「私のことは、どれだけ侮辱しても構わないと言いました。ですが……」

ノエルが、静かに右手を掲げる。

その周囲に、火、水、土、木、風、雷――「機」を除くすべての一般属性のギフト、そして彼女自身の本来のギフトである「光」の力が、同時に、かつ完璧な制御で出現した。

「焔光(こうえん)くんを無能と、嬲り殺すと言いましたね? ――我が身に眠る、大賢すべての「気」をもって、継承した「だけ」の力を持って、その傲慢な口を永遠に閉じさせてあげますわ」

「ま、待っ――」

バイレンが恐怖に涙を流し、制止の声を上げようとしたが、すべては遅すぎた。

ノエルが指先を軽く、ただ軽く振り下ろす。

次の瞬間、闘技場の上空に、巨大な魔法陣が幾重にも重なり合って展開された。

ドゴォォォォォォォォン!!!!!!

火炎の嵐、轟雷の槌、暴風の刃、巨大な岩塊(メテオ)、津波の激流、全てを強化する木々の生命力、そしてすべてを消滅させる光の奔流が、同時に、完璧な複合魔道となってバイレン・シュウの頭上へと降り注いだ。それはまさに、大天災そのものの顕現。神の天罰とも見粉う力。バイレンは防御の姿勢を取ることすらできず、その圧倒的な暴力の前に、一瞬にして全ギフト能力を粉砕され、闘技場の床ごと消し飛ばされるようにして気絶、崩壊した。

闘技場の床には、直径数十メートルに及ぶ巨大なクレーターが穿たれ、結界は粉砕され、(焔光の亜空間により)かろうじて観客席手前で被害は収まったが、周囲の空気は熱気と電撃でパチパチと爆ぜている。

静寂。誰も、一言も発することができない。これが、世界の頂点に立つ「三大英傑」の実力。継承された力などという生ぬるい言葉では到底片付けられない、絶対的な神の領域の力だった。

「ひえっ……!」

観客席のシャーロットが、そのガチな威圧の余波に、思わず焔光の背中に隠れて震えていた。風花だけは「さすが私の師匠、お兄様を侮辱する虫ケラへの処刑としては満点ですわ!」と、一人でフンスフンスと満足げに頷いている。

ノエルは、一瞬にして元のプロポーション抜群の、可憐で美しい少女の微笑へと戻ると、客席の焔光に向けて、熱烈な、恋心の成長しきった視線を送りながら、上品にお辞儀をした。

「勝者、皇立学園、エミール・ノエル!」

審判の、完全に声の震えた宣言が、壊れかけた闘技場に響き渡る。皇立学園の圧倒的な強さを見せつけ、交流武術大会は、いよいよ最上級生である6回生の最終決戦へと引き継がれていく。

まあ…その前に、諸々の修復作業により休憩となるのだが……。

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