聖アウグスト皇立魔導武官学園の春、そして
聖アウグスト皇立魔導武官学園。
皇族(分家)、辺境伯、果ては大商人や宮廷府の要職の子息たちが集う、最高峰の6年制学園である。
その壮麗な白亜の校舎を、今日から1回生となる15歳の少年、焔光・フォン・アウグストは、複雑な思いで見上げていた。
二大英傑――剣聖と鍛神による5年間の地獄の修行。それは「世界の頂点の技術」を叩き込まれると同時に、「徹底的な隠蔽」を身につける日々でもあった。
さらに、光焔を取り巻く環境を説明すると、
四大英傑の規格外ギフト能力者達は別格とし、
皇帝(皇室)、その下に皇室三大分家(分家は皇室補助と血統維持の為で有り三分家迄となっている)、東西南北を皇帝代理として統治する四辺境伯がある。宮廷府と言う、摂政を筆頭とした政務機関あり。皇室、皇室分家、四辺境伯には、外敵(他国、魔人、魔獣)に対抗する為の騎士団(軍隊)がおり、宮廷府は皇国内の治安維持目的の警察機構を持つ。摂政は、皇帝とは旧知の仲であり、皇帝が信用する人物。宮廷府は基本的に皇帝の味方であるが、摂政の目を掻い潜り暴走、裏切りが起きる可能がある状態。
現皇帝の妻は、皇后と妃の計2人、4人の子供(男3人女1人)がおり、皇帝の三男である蒼真の子供(風花と双子)として育つ(焔光から見て皇帝は祖父)
現皇帝の4人の子は長男(皇后の子)黎真は四大英傑であるが死亡(焔光の実父)、次男(妃の子)烈真、三男(皇后の子)蒼真、一番下が長女(皇后の子)咲夜。現皇帝には妹、オリヴィア(皇室名は、織姫)が居て、西の辺境伯家に嫁いで居たが、夫が死亡してから隠居し、焔光の通う学園の学園長をしている。現在、次男(烈真)と三男(蒼真)で皇太子候補として競り合っている。蒼真は、風花のギフトの力も強く、(三英傑に近づく能力持ちで有り蒼真家としての次世代の評価を背負っている。)烈真派閥と対抗出来ている状態。
ギフトは、火、水、土、木、風、雷、機(錬金術、機械)の一般属性ギフト7つと 光、闇、無(その他) の特殊属性ギフト3つに分類され、大概は1人で1属性ギフトを持つが、たまに複数ギフトを持つ者もいる。ギフトによる力は、皇室や皇室三大分家、四辺境伯には、特に期待される傾向がある。
「あいつが、現皇帝の三男の……」
「ああ、皇后様が、孫可愛さのあまり英傑を呼んで教育したにも関わらず、5年も教育されて、ギフトの出力は石礫程度って本当か?」
「ああ。2属性持ち(光・風)らしいが、風も突風で相手を押す程度だとか。座学や作法は完璧らしいが、ギフトの出力がアレではな……『期待外れ皇子』とはよく言ったものだ。学園に入っても英傑の教育でダメなら力伸びないんじゃ無いか。」
「だが、妹の風花様は、既に英傑に近づく力らしい。噂じゃ、途中で才能見限った英傑が風花様だけに教育を集中したんじゃ無いかとか!!」
周囲の上級生や同級生から向けられる、冷ややかな視線と囁き声。
しかし、焔光の背後に控える若き執事、孔明と、若き侍女、ミーナの視線は氷のように冷たかった。彼らは知っているのだ。我が主が、その気流の制御によって、周囲に悟らせぬよう全力を尽くして「出力を落としている」だけの怪物であることを。
「お兄ちゃん、また変な噂をされてる。……私が全員、風で吹き飛ばしてあげようか?」
不機嫌そうに小さな唇を尖らせたのは、焔光の双子の妹、風花だった。
ウェーブがかった美しい髪を揺らし、兄の袖をぎゅっと握る。彼女は『無(空中遊泳)』と『風』の2属性持ちで、母シルフと大賢を師に持つ、蒼真家の次世代を背負う天才美少女(本人は、自分の容姿に無自覚)だ。
「いいんだよ、風花。お師匠様たちとの約束だからね。それに、目立たない方が静かに過ごせる」
焔光が苦笑しながら風花の頭を優しく撫でると、風花は「むぅ……」と頬を膨らませつつも、嬉しそうに目を細めた。
しかし、その平穏(?)な時間は、突如として破られる。
「――あら? その、優しい光を内包した気配……。まさか、焔光くんなの!?」
回廊の向こうから、鈴を転がすような、しかし凛とした美しい声が響いた。
全生徒の視線がそちらに集まり、一瞬で道が開く。
現れたのは、学園5回生。19歳となっている、世界の魔道の頂点に君臨する【大賢】――エミール・ノエルだった。
天災規模の魔道を操る世界最強の一角でありながら、至高の治癒術士でもある彼女は、まさに女神のような美貌を誇っていた。何より目を引くのは、5年前の修行場での出会いからさらに、文字通り「豊満」の一言に尽きるほど劇的に成長した抜群のプロポーション。制服の生地がはち切れんばかりに主張するその豊かな胸元は、歩くたびに柔らかく揺れていた。
「ノエル様……!?」
周囲が息を呑む中、ノエルは周囲の目など1ミリも気にする様子もなく、大輪の薔薇が咲いたような笑顔で焔光へと突撃してきた。
「焔光くん!! 会いたかった、会いたかったわぁ……!」
「わ、わ、ノエル様!? 1週間前に会ってますよ!!ちょ、ちょっと、近いです――」
ぎゅぅううううっ!!
制服の限界に挑むかのような、圧倒的な柔らかさと弾力が、焔光の顔面と胸へ容赦なく押し付けられた。5年前の修行場での出会いから、彼女の焔光への愛は留まることを知らない。胸の成長と共に、その恋心も完全に限界突破していた。
「んふふ、本当に焔光くんだわ……! あぁ、1週間ぶりの焔光くんの温もり、やっぱり最高に落ち着く……。もう絶対に離さないんだから」
「の、ノエル様、みんな見てます! ここ、学園の正面回廊ですから!」
真っ赤になる焔光の抵抗など、世界最強クラスの『気』を纏った抱擁の前には無意味だった。ノエルは極上の笑みを浮かべ、さらに深く焔光を自身の胸へと埋もれさせていく。
その光景を目の当たりにし、一瞬で周囲の温度を氷点下まで下げた者がいた。
「……ちょっと、そこの泥棒猫(※世界最強クラス)師匠〜」
ゴゴゴゴゴ、と風花の周囲に物理的な突風が吹き荒れる。
風花は、自分の大好きな、そして誰よりも尊敬する師匠であるノエルを睨みつけた。
「私の、私のお兄ちゃんに、何っ、何っ、何を恥ずかしげもなくベタベタくっついているんですかーっ!!」
「あら、風花ちゃんじゃない。相変わらずおチビちゃんね。大賢の弟子として、少しは私の胸の成長を見習ったらどうかしら?」
ノエルは焔光を抱きしめたまま、豊満な胸を強調するようにさらに焔光を強く抱きすくめる。
「なっ……!! 私だって、私だって最近は、その、少しは……っ!」
風花は自身のささやかな胸元を隠すようにしながら、もやもや(フンスフンス)と鼻息を荒くして限界寸前の嫉妬の炎を燃やす。
「お兄ちゃん! その泥棒猫から今すぐ離れて! 風花が、風花がハグしてあげるから!!」
「えっ、いや、風花、そんなに引っ張ったら制服が――」
「だーめ。焔光くんは私の『癒やし』なんだから。学園にいる間は、毎日こうやってチャージさせてもらうわ。ね、焔光くん?」
耳元で囁かれる甘い声と、顔面を包み込む圧倒的な質量。そして、片腕を必死に引っ張ってくる妹のガチの威圧。
(お師匠様たち……『平凡に隠れて過ごせ』って言われましたけど、入学初日から、僕の平穏は完全に崩壊しています……!)
周囲の生徒たちが「あの期待外れ皇子が、なぜ英傑を師匠に持つとは言え、大賢様にあそこまで……!?」と驚愕と嫉妬の眼差しを向ける中、焔光は天を仰ぎ、これからの波乱に満ちた学園生活を予感して遠い目をするのだった。
「ふ、不届き者が……! ノエル様を惑わす、皇族の面汚しめ……っ!」
その喧騒を遠くから見つめ、手出しができずに歯噛みする現・女生徒会長のクラリスと、その後ろで冷酷な視線を送る烈真派閥のアルベールの姿があったが――少年がその真の力で彼らを圧倒する日は、そう遠くない。




