封印解除と、規格外の胎動
「――まさか、勇帝と聖なる巫女の気を感じると思えば。間違いなく、(勇帝)黎真のガキだな」
「ああ。俺たちの力が、どこかの子供に流れ着いたかと思ったが……因果なもんだ」
十の歳を迎えた焔光の前に現れたのは、世界の頂点に君臨する二大英傑――【剣聖】一ノ瀬瞬と、【鍛神】千手破岩だった。
十年前の魔王討伐の最終局面。父・黎真が亜空間へ超圧縮して封じ込めた「四大英傑と魔王の爆発的な気」。それが血脈を伝って赤ん坊の焔光の亜空間へ流れ込み、母・咲夜の命を賭した結界によって十年間眠らされていた。
その結界が、今日、十の歳を迎えたことで完全に解けたのだ。
大気がビリビリと鳴動し、焔光の小さな身体から、常人ならば消し飛びかねないほどの「気」の奔流が噴き出す。その次元の歪みを感知して駆けつけた二人は、目の前の少年がかつての盟友の遺児であることを即座に悟った。(この時、四大英傑のうち、勇帝は魔王討伐で死亡。大賢は、ある事情により同行してない為、剣聖、鍛神の二大英傑の事)
「英傑の我らから同じ弟子を同時に取るとなれば、注目が集まり過ぎる。表向きは、皇后からの要請として処理しよう。勇帝の母親でもあり、皇室の皇后の要請ならば、誤魔化し易いだろう。 おい、ガキ。今日から俺たちが、お前の師匠だ」
前代未聞。二大英傑が同時に一人の子供を弟子にするなど、世間が知れば大騒乱になる。だが、彼らの瞳にあるのは、憐れみなどではなく、純然たる「怪物」を見る目だった。
「いいか、焔光。お前が引き継いだ力は、この世界を何度でも滅ぼせる規格外中の規格外だ」
鍛神・破岩が、厳格な声で焔光を見下ろす。
「世間がお前の力に気づけば、国が割れる。陰謀で殺されるか、あるいは都合のいい兵器として祭り上げようとするだろう。だから――徹底的に隠蔽しろ」
「隠蔽、ですか……?」
まだ幼い焔光が首を傾げると、剣聖・瞬が不敵に笑ってその肩を叩いた。
「そうだ。世間には、光弾を数発出せる程度の『平凡な力』に見せかけろ。二属性持ちのフリをするために、風属性を偽装する術も叩き込んでやる。座学や礼儀作法も完璧にしろ。……世間からギフトの力は、『期待外れの皇子』と噂されるくらいが、お前が静かに暮らすには丁度いい」
「そのためには、お前のそのバカげた出力の蛇口を、完璧にコントロールせねばならん。――死ぬ気でついてこい。いや、死なせんはせんがな」
それが、五年に及ぶ地獄の修行の幕開けだった。
皇宮の裏手に存在する、一般の立ち入りを厳重に禁じられた広大な特別修行場。
そこは、二大英傑が本気で暴れても崩壊しないよう、幾重もの古代結界が張られた隔離空間だった。
「ほら、どうした焔光! 風に纏わせる一撃が強い! それは『突風で相手を押す程度』の出力に見えるか!? 威力を落とせ、もっと落とせ! 蚊が羽ばたくほどの微風にまで、完璧に気を制御しろ!」
「くっ……、はあぁっ!」
木々の間を疾風のごとく駆け抜けるのは、まだ十歳の焔光。その手には、彼の身体には少し大きい、鷹の翼の装飾が施された短槍が握られている。
剣聖・瞬の繰り出す、山をも両断するような剣気が、容赦なく焔光を襲う。
「『絶技』で俺の剣技を模倣するのはいい! だが、お前が使うと威力が勝手に跳ね上がる! 当たる直前で威力を『柔らかいクッション程度』まで落とせ! それが出来なければ、お前が手加減したつもりの一撃で、同級生の首が消し飛ぶぞ!」「お前は、剣(太刀)より、短槍の方が力をコントロールし易いはず。上手く力を短槍に乗せろ」
「反転、出力制御……っ! うあぁぁっ!」
瞬の鋭い突きを短槍で受け流すが、その衝撃だけで焔光の小さな足元の大地が放射状に爆裂する。
間髪入れず、背後から鍛神・破岩の、空間そのものを固定するような圧力が押し寄せた。
「次は俺だ、焔光。お前の『無』のギフト――亜空間の出し入れの気流を読んだ。今からお前のギフトを無効化する。……ほら、亜空間を発動出来ない状態で、どうやって俺の間合いから逃れる?」
「しまっ――」
破岩の放つ「気の干渉」により、焔光の周囲の空間がガチリと凍りつく。ギフトが強制的に不発に終わる。
「ギフトが使えんからと諦めるな! 『気』そのものの流れを身体強化へ一瞬で転換しろ! 筋肉の繊維一本一本に気を均等に行き渡らせるんだ。一箇所でも滞れば、筋肉が弾け飛ぶぞ!」
「がはっ……!」
強烈な衝撃波が焔光の身体を突き抜ける。泥にまみれ、全身の骨がきしむような激痛。呼吸をすることすらままならない。
普通なら立ち上がることすら不可能なダメージ。しかし、
(あ、の、二人に……追いつかなきゃ……。父様たちが、守ってくれた、命だから……!)
焔光の瞳の奥で、気高い「光」が爆発的に弾けた。
彼の中に眠る大賢の気の共鳴による力と、自身の光ギフトの真髄――至高の治療術。
溢れ出た聖なる光が焔光の全身を包み込んだ瞬間、骨折も、筋肉の断裂も、内臓のダメージも、一瞬にして完璧に「清め癒やされ」修復していく。
「ほう。大賢の野郎の癒やしを、自身の光と完全に同調させてやがるな。……だが、回復したなら終わりじゃないぞ! 次だ!」
「はい、お師匠様……っ!」
立ち上がる焔光の顔に、弱音は一切なかった。
血の滲むような、いや、肉体が崩壊しては再生するのを繰り返す、文字通りの地獄。
しかし、二大英傑の容赦ない超一流の教育は、焔光の肉体と精神を、急速に「本物の怪物」へと変わり果てさせていく。
「(……凄まじいな。黎真の才能と、聖なる巫女の生命力。それを差し引いても、このガキの根性は異常だ)」
瞬は内心で舌を巻いていた。
「(ああ。大賢の小娘が、こいつの無垢な優しさに救われたとか言って、激愛しちまうのも、今ならよく分かる。こいつは、強すぎる力を持ちながら、どこまでも歪まない強い心を持ってやがる。)」
〜少し時は遡る〜
10才で英傑達の修行を受ける事になった焔光だが、その時、14才の現・大賢であるエミール・ノエルも一緒に修行していた。魔王討伐時の大賢は、討伐から5年後に力の衰えを悟り、弟子であった神童(9才)のエミールに大賢独自の秘術による力の継承が行われ、本人のギフト光属性による部位欠損や致死の呪いすら清め癒やす至高の治癒術士の力も保持したまま、奇跡的複数ギフト所持者として、即英傑の名を継いでいる。そもそも大賢とは、『魔道(魔法)』の頂点に立つ者で有り「機」以外の一般属性6ギフト(火、水、土、木、風、雷)使う、天災規模の魔道を操る世界の真理に最も近いとされる存在であった。焔光の修行開始時に、四英傑の気が流れこんだ焔光の大賢のギフト(気)と英傑の重圧に9才から苦しんできた、14才のエミールの大賢のギフト(気)が共鳴し焔光と同調する事で、焔光の無垢な優しくも強い心に触れ重なる事で、心が強くなり癒され救われた。15才で学園入学後も、ちょくちょく修行場に現れた。建前は、焔光の妹で有る、風花への力の指導。(風花の師匠になる)学園入学頃から、プロポーション抜群になり、胸も豊満に成長中。胸の成長と共に焔光への恋心も成長しているようだ。
破岩もまた、静かに焔光の背中を見つめていた。
五年に及ぶこの地獄の果てに。
座学、作法、そして「世界の頂点を模倣し、かつ、それを完璧に平凡な出力へと偽装する隠蔽技術」を完璧に身につけた、史上最強の(ギフトの力は)「期待外れ皇子」が完成することとなる。
因みに、四大英傑を紹介すると、
四大英傑は【勇帝】:『無』ブラックホール(亜空間)を操り全てを飲み込み消し去る【剣聖】:『火』や『雷』、『風』などのギフトを剣技に乗せ、一太刀で魔獣の大軍を屠る前線最強の戦士。【大賢】:『魔道(魔法)』の頂点に立つ者。機以外の一般属性ギフトと光属性を使う、天災規模の魔道を操り、世界の真理に最も近いとされる。【鍛神】ギフトの気流を読み、相手のギフトを無効化する。また、魔鋼と言う鋼を使い次元を操る。規格外中の規格外




