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アイリスの事件簿  作者: 白雪刀花
探偵が進む道
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7/11

この親睦会は妙ですね

リムジンは長い道のりを走り、やがて一つの巨大な屋敷の前で静かに停車した。

「到着いたしました」

「ここが……王子家」

アイリスは車窓から屋敷を見上げる。

そこにあったのは、一般的な『家』という言葉では到底表現できないほどの大邸宅だった。

広大な敷地。

綺麗に整えられた庭園。

その中央へ続く長い石畳の道。

そして、その先には巨大な屋敷が堂々と佇んでいる。

「すごいねぇ……」

リリアも窓の外を眺めながら呟いた。

「まるでお城みたい」

「王子家が大企業の一族だという話は聞いていましたが……想像以上ですね」

二人がリムジンから降りる。

すると、屋敷の前には何人もの使用人が並んでいた。

「アイリス様、リリア様、お待ちしておりました」

「本日は王子家新入生親睦会へお越しいただき、誠にありがとうございます」

「こちらへどうぞ」

「えぇ、ありがとうございます」

アイリスは軽く頭を下げる。

その隣ではリリアが周囲を見渡していた。

「ねぇ、アイリス」

「なんでしょう?」

「私たち……完全に場違いじゃない?」

「何を言っているのですか」

アイリスは平然と答える。

「招待された以上、私たちは客人です。堂々としていれば問題ありません」

「そういうところ、ほんとアイリスらしいよね……」

二人が屋敷の中へ入る。

そこには、すでに多くの新入生が集まっていた。

男子も女子も、誰もが華やかな服装をしている。

その中には、見るからに名家の子息や令嬢と分かる者も少なくない。

「おい、あれ……」

「誰?」

「アイリス・ホームズじゃない?」

「本物?」

「この前、結城学園の美術室で起きた事件を解決したっていう……」

「それに隣にいるのって、ノートン探偵事務所の……」

ざわざわと周囲が騒がしくなる。

アイリスはそんな視線を気にする様子もなく、会場を見回した。

「……随分と人が多いですね」

「アイリス、もうちょっと緊張しない?」

「なぜです?」

「いや、普通はこういうところ初めて来たら緊張するでしょ」

「事件現場の方が緊張しますよ」

「比較対象がおかしいんだよ……」

リリアが呆れたようにため息をついた。

すると――。

「お二人とも、来てくれたんだね」

聞き覚えのある声。

振り返ると、そこには王子正樹が立っていた。

先ほどとは違い、彼もまたパーティ用の正装に身を包んでいる。

「王子さん」

「本日はお招きいただきありがとうございます」

「こちらこそ。来てくれて嬉しいよ」

正樹は二人の姿を見ると、微笑んだ。

「それにしても……」

「?」

「お二人とも、普段とはかなり雰囲気が違うね」

「そうですか?」

アイリスが首を傾げる。

「アイリスはいつも髪を下ろしてるからね。今日はかなり印象が違うと思うよ」

「リリアもいつものツインテールではありませんしね」

「二人とも、とても似合っているよ」

「ありがとうございます」

アイリスは小さく微笑む。

その瞬間――。

「……!」

周囲から、再びざわめきが起こった。

「今、アイリス・ホームズ笑った?」

「すご……」

「普段はあんな感じじゃないのか?」

「なんか……綺麗だな」

アイリスは周囲の声を聞き流し、正樹へ尋ねる。

「王子さん」

「どうしたんだい?」

「親睦会ということですが、具体的には何をするのでしょう?」

「ああ、それなら――」

正樹が答えようとした、その時だった。

「皆様、お待たせいたしました!」

会場の奥から声が響く。

そして、一人の男性がステージへと上がった。

「本日は王子家新入生親睦会へお越しいただき、ありがとうございます!」

会場から拍手が起こる。

正樹もそちらへ視線を向ける。

「では、これより親睦会を始めさせていただきます!」

華やかな音楽が流れ始める。

会場にいる生徒たちが、それぞれ交流を始めていく。

そんな中――。

アイリスは一人、会場の奥を見つめていた。

「……」

「どうしたの? アイリス」

「いえ……」

アイリスは静かに目を細める。

「この屋敷……妙ですね」

「え?」

リリアが首を傾げる。

「何か気になることでもあるの?」

「まだ確証はありません」

アイリスは紅茶の入ったグラスを手に取りながら、静かに呟いた。

「ですが……どうやら、この親睦会」

ほんの少しだけ、口元を上げる。

「楽しいだけでは終わらなさそうですね」

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