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第34話 『隠れ家攻防戦』

 ドォン!!


 倉庫全体が揺れた。


「見つけました!」


 外から追跡部隊の声。


「包囲完了!」


⸻


「……早すぎるだろ」


 俺が顔をしかめる。


「完全に位置割れてるじゃねぇか」


「そりゃ街中で暴れたもの」


 看守長が呆れたように言う。


「むしろ遅い方よ」


「反論できねぇ……!」


⸻


「入口は三つ」


 カインが一瞬で表情を切り替えた。


 さっきまでの軽さが消えている。


「正面」


「裏口」


「地下搬入口」


「……詳しいな」


「俺の隠れ家だからな」


⸻


「数は?」


 騎士が聞く。


「ざっと十以上」


「増えてる!?」


「本気モードだな」


 カインが笑う。


 でも目は笑ってない。


⸻


「どうする」


 俺が聞く。


「逃げる?」


「半分正解」


「半分?」


「時間稼ぎする」


⸻


 カインは倉庫の棚を蹴った。


 ガコン、と音。


 隠されていた武器箱が現れる。


「……は?」


⸻


「なんでそんなもんあるんだよ」


「外の世界なめんな」


 箱を開ける。


 短剣。


 魔導具。


 小型の銃みたいなもの。


⸻


「研究側辞めた後、色々あったんだよ」


「情報屋ってレベルじゃねぇな」


「副業多いタイプなんだ」


「絶対危ないタイプだろ」


⸻


「はい」


 カインは騎士へ短剣を投げる。


「使える?」


「十分です」


 騎士が受け取る。


 構えが変わる。


 空気も変わる。


⸻


「おぉ……」


 思わず声が漏れた。


「本職っぽい」


「本職です」


 騎士が真顔で返す。


「そうだった」


⸻


「リゼ」


「う、うん」


「これ持って」


 渡されたのは小さな球体。


「煙幕」


「えんまく?」


「投げたらモクモクする」


「説明雑!」


⸻


「で、お前」


 カインが俺を見る。


「怪我人」


「扱い雑だな」


「動ける?」


「動ける」


「じゃあ前出ろ」


「なんで!?」


「適応個体は頑丈だから」


「理屈がひどい!」


⸻


 その時。


 ドンッ!!


 入口が揺れる。


「開けろ!」


「抵抗するな!」


⸻


「……来るぞ」


 騎士が低く言う。


 剣を握る。


 完全に戦闘態勢。


⸻


「ねぇ」


 リゼが袖を掴んだ。


「大丈夫かな」


「……大丈夫じゃないな」


「正直」


「正直だね……」


「でも」


 頭を軽く撫でる。


「なんとかする」


「……うん」


⸻


「作戦変更」


 カインが言う。


「ここで迎撃しつつ地下から抜ける」


「地下?」


「水路に繋がってる」


「また水路かよ!!」


「好きだろ?」


「もう見たくねぇ!」


⸻


 ドォン!!


 今度は扉の一部が吹き飛んだ。


「侵入します!」


⸻


「来たわね」


 看守長が笑う。


 指先に光。


「久々に暴れる?」


「楽しそうだなお前!」


「楽しいもの」


⸻


「行きます」


 騎士が前へ。


「下がっていてください」


「無茶すんな!」


「無茶は慣れてます」


⸻


 侵入してきた追跡部隊。


 黒装束。


 武装済み。


「対象確認!」


「確保——」


⸻


 ガキィン!!


⸻


「っ!?」


 騎士が一瞬で斬り込んだ。


 速い。


 今までと別人みたいに。


⸻


「おぉ!?」


「強っ!?」


⸻


「元・監獄戦闘部隊ですから」


 振り向きもせず言う。


 かっけぇ。


⸻


「じゃ、私も」


 看守長が指を鳴らす。


 バチッ!!


⸻


 閃光。


「きゃっ!?」


「視界が——!」


⸻


「今よ!」


「走れ!」


⸻


 地下への扉へ向かう。


 その時。


⸻


「——逃がしません」


⸻


 低い声。


⸻


 天井。


 そこに、一人立っていた。


⸻


 黒い長髪。


 白い仮面。


 圧が違う。


⸻


「……おい」


 カインの顔色が変わる。


「最悪だ」


「知り合いか?」


⸻


「追跡部隊隊長」


⸻


 女は静かに告げた。


⸻


「“白鴉”」


⸻


 その瞬間。


 空気が凍った。

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